第247話 人狼兄弟の攻撃

「ひょえー、鬼丸君、すごいね」


「でしょう? 鬼丸先生は僕らの誇りです」


 ユニは自慢げに顔を上げた。


 ——わかるなぁ。無敵だよね。


 少しやきもちを焼きながら、篠宮はボーリングの球くらいの雪玉を仕上げる。


 雪だるま一歩手前。


「これでいいのかい?」


 鬼丸は篠宮の作った雪玉を見ると、うなずいた。


「ついでにもう一つ頼みがある」


「なに?」


おとりになって、隣の防御壁まで走れ」


「やだよ!!」


 隣の雪の壁までは数メートル。走り抜ける間に、シュトルムにでも仕留められてしまいそうだ。


「さっきの見たろ? スコップを破壊したんだぞ!」


「……お前にはキツいか。ユニ、行けるか?」


 ユニは指名されて驚き、ぴょん、と跳ね上がると、


「はいっ!」


 と元気よく返事する。


「でも、鬼丸先生。一つ前の壁に移動した方が安全じゃないですか?」


 雪の防御壁は違い違いに設置されている。隣の防御壁へ行くよりは、前の防御壁の裏に走り込んだ方がロスは少ない。


「ふむ、よかろう。俺は反対側の一つ前の壁に進もう。篠宮はここで雪玉を作れ」


「へいへい」


 篠宮は前線に出るのを諦めて、後方支援に徹する。


 鬼丸は校庭に広がる静けさの中、やはり無言でユニにハンドサインを送る。合図とともに、ユニは小さな雪玉を投げつつ、飛び出した。


 それがいけなかった。


 シュトルムとウォルフは、誰かが動くのをじっと待っていたのだ。


 狙いすました雪玉が唸りを上げてユニに襲いかかる。シュトルムの投げた雪玉がユニの背を掠めて大地に落ちた。ユニはそのまま頭からスライディングして防御壁の影に隠れようとした。


 その脚に——。


 バシッ!


 ウォルフが投げた雪玉が当たった。


「うそぉ! 今の玉、カーブして来たよ⁈」


 篠宮が悲鳴を上げた。




 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る