第242話 篠宮の特技?


「よし、もう一つ作るか!」


「え?」


 驚く生徒を置き去りに、篠宮は再びささささっと雪を集めた。その見事な手捌きに、皆の口から「おお〜」とかんたんの声がもれる。


「じゃーん!」


 うつ伏せに寝そべるサクラ。

 何かにもたれかかるサクラ。

 膝を抱える憂いのあるサクラ……。


「うわー、変態」


 ウォルフが若干、引き気味に感想を言う。


「サクラ殿の像を作らせたら、世界一じゃな」


「ふふふ、俺がいかにサクラさんを大事に思っているか、わかるだろう?」


 自慢げな篠宮にウォルフは冷たく言い放つ。


「いや、観察しているのはよくわかった」


 観察というか凝視というか。


「篠宮! 我も作ってくれ!」


 カグラがはしゃいでそう言うと、篠宮はすぐに雪を集め始めた。集めてスコップで外側を固めると——。


「なんじゃこれは? ただの雪だるまではないか!」


 そこにはいびつな雪だるまが出来ていた。カグラは眉を寄せて、ガッカリした。


「いや、ごめん。本気で作ったんだけど」


 あはは、と篠宮は誤魔化すが、ウォルフにはピンと来た。


「お前、女子の像しか作れないとか言うんじゃないだろうな?」


「うっ、バレた⁈」


「変態め!」


 ウォルフは手近の雪を掴んで丸めると、篠宮目掛けて投げつけた。


「ぎゃっ!」


 見事命中。


 カグラも無言で雪玉を作ると、篠宮目掛けて放った。ウォルフの雪玉より小さいが、狙いは過たず篠宮の脇腹に当たる。


「ユニ君、助けて……」


 たまらず篠宮はユニに助けを求める。ユニはにっこりと微笑みながら、答えた。


「あとで六花ろっかちゃんの雪像を作ってくれるなら」


「作る、作るから!」


「了解!」


 すぐさまユニも雪玉を作る。


「あっ、お前そっちにつくのか!」


 ユニの投げた雪玉をよけながら、ウォルフが嬉しそうに叫んだ。




 つづく


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