第241話 雪まつり
「おい、なんか来たぞ」
ウォルフが旧校舎の自室から外を眺めながら、遊びに来ていたユニとカグラに話しかける。
二人が窓に張り付いて外を見ると、白い息を吐きながら、篠宮がラッセル車の如く雪をかき分けて校門から入って来るのが見えた。
「休みだってのに、何やってんだアイツ」
呆れるウォルフとは反対に、カグラとユニは雪遊び出来るとばかりに自室へと走って行く。
「おい! まさか外に出るのか?」
「篠宮なら楽しく遊んでくれそうではないか? 行くぞ、ユニ!」
「オッケー!」
二人は上着を羽織ると、手袋を手に飛び出して行く。
「なんだよ、しょうがねえなぁ」
置いてけぼりをくらったウォルフもしぶしぶ立ち上がる。
「みんな
「先生ー!」
「やあ、みんな」
「何やってんの?」
「え? 歩道の雪かきをしようと思って——外に出たらやめられなくなっちゃった」
「暇なのじゃな」
カグラは悪態をつきながらも、どこか嬉しそうだ。篠宮は新校舎の前に雪を集めている。
「これ何?」
「ふふふ、この校庭の雪があればなんでも出来ると思わないかい?」
篠宮はささささっと雪を集めてスコップで固めて行く。見る間に一つの——美しい乙女の像が出来上がった。
「これは——……」
「サクラ先生?」
それは重力を無視した繊細な雪像。モデルは紛れもなくサクラだ。すらりとした綺麗な脚、台座にもたれて頬杖をついて、こちらを優雅に眺めている。
「うわ、マジか。すっげー似てる」
遅れて来たウォルフも驚く出来栄えだ。
「……けど、薄着じゃね?」
彼のその呟きに、カグラとユニは顔を見合わせる。
「……まあ、身体のラインは出てる、かな?」
「服は着ているぞ」
雪像の出来栄えに、うっとりとする篠宮を横目に三人は顔を突き合わせる。
「本人が見たら、アレだな」
「怒るかのう?」
「僕は綺麗に作ってもらえたら嬉しいけど」
「バカ、そりゃ製作者によるだろ」
結論——、今日は土曜日なので「サクラは学校に来ないだろう」というもので、三人は黙っていることにした。
つづく
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