第238話 島


「……空洞ですか?」


「それが……」


 サクラも歯切れ悪く答える。


 そのまま生体端末カリギュラから校長が見ている画面を操作して付け加える。


 画面ではドーナツ状に描かれた地図がくるりと回って、側面から見た画像に変わった。


「——島……でしょうかね? これの周りは……海ですか?」


 鴫原校長は首を捻る。


「それが……この島——仮に『島』と呼びますが、の周りは何も在りません」


「何も無い?」


 校長は顔を上げた。


「強いて言えば生存可能な大気はあります。……その空間にはそれ以外のものが無い、といいますか……」


 サクラも説明に苦労する。


「何もない空間に、その『島』だけ浮かんでいると思って下さい。『島』の外周は高い山で形成され、雲のようなものも見受けられます。恐らく水もふんだんにあるかと」


「水……それは朗報ですね」


「反対に『島』の中心に向かうほど『島』の厚みは薄くなり、中央に巨大な穴が空いています。水は山々から湧き出し、低いところに流れ、やがてこの穴に到達しますが——」


「なんです?」


「水はおよそ1キロメートルほど浅く溜まり、これもまた中心部に行くに従って浅くなります」


「縮尺で見たところ、この穴は直径10キロメートルくらいですね。水の溜まっているその先は?」


「水が在りません。中心はまさに穴が開いている、と言う事ですね」


 鴫原校長は「ふうーっ」とため息をついて、タブレットをサクラに返した。


「何なのでしょう、ここは?」


「条件は悪くありません。大気も水も有る」


「ただ、我々の常識とは異なる空間のようですね」


 希望的観測を述べるサクラに対して鴫原校長は慎重に答えた。



 つづく

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