第233話 ウォルフの気持ち
「……え?」
「とぼけるな。贈る相手が居ての話であろうが」
ウォルフは急に勢いを無くす。取りようにとっては照れているふうにすら見えた。
「……や、別に」
「別に、では無かろう。篠宮がサクラ殿に結婚を断られたとて諦めずに贈るのはわかる。——ああ、人魚姫か」
ニヤニヤしながらカグラもやり返した。知っててからかうのだから性格が悪い。
「……ちげーよ」
プイと横を向くウォルフに、カグラが追い討ちをかける。
「彼女は白狼殿に目を向けているようだが、お主は知っておるのか?」
「……別にエメたんってわけじゃねえし」
ウォルフのその言葉に篠宮とカグラは色めきたつ。
「え? 本当? 誰? 誰なの?」
「早う言え!」
「誰が言うか!」
ウォルフは半ば本気で怒って立ち去って行ってしまった。
残された二人は顔を見合わせる。
「篠宮とやら、心当たりはあるか?」
「無い。心当たりは無いけど、候補はそう多くはないだろう」
「まさかカナエという事はあるまいな⁈」
カグラが妹を心配して顔を青くする。
「いや、全く無いとは言い切れないぞ」
「なにっ! 許さぬ!」
「落ち着いてよ。それを確かめようってんじゃないか」
二人はニヤっと笑うと、がっしりと握手をした。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます