第204話 バレないうちに片付けろ


「通信システムのエラーですと?」


 鴫原校長が知る限り、テラヘルツ光による通信システムはエラーを出したことがない。大容量を高速でする事が基本理念だから、どれほど大きなデータでも、遅くなる事すらないのだ。


 ——あの青年が、何かしでかしたのですね。


「アオバヤマ町のシステムはどうですか?」


「——システムは正常。通信だけがオフラインです」


 観客達も自分のスマホをいじって確かめている。プールにいた黒羽リリ達も顔をのぞかせる。


 ——アオバヤマ町のシステムの中枢は本校にある。学校に異常はない。という事は。


「通信アンテナの破壊か電源カット……でしょうかね」


 トキワも同じ考えに至ったらしく、校長の意見と同じ事を呟く。二人は顔を見合わせると、それぞれ指示を出し始めた。


「生徒の皆さんとカエデ君は機器の撤収を!」


「観客の皆は観客席とテントの片付けをしましょう! 宴会の跡も消して下さい!」





 一方、サクラ達は上空から十機のドローンが降りて来て、地上に着陸したのを見ていた。


 ちょうど三人を囲むように円形に着地している。


「……どうしたんでしょう?」


「わからん。今、本部に連絡を——」


 目の前で、篠宮には見えないディスプレイを操作するサクラ。しかしぐに指をめた。


「……システムエラーの表示が出ている」


 鬼丸に目をやると、鬼丸も同様に指を動かした後、首を振った。それから彼は自分のボディバッグから一台のスマホを取り出して篠宮に渡す。


 どうやら篠宮のスマホを預かっていたらしい。


「俺のもエラー出てます」


「そうすると——」


 降りて来たドローンは緊急時のセキュリティがかかって、地上に降りたようだ。


「本部が心配だ。見に行くぞ篠宮」


「えっ、待って」


 サクラと鬼丸が篠宮に声をかけると、意外にも篠宮はそれに反対する。


「どうした?」


「えっと……この勝負、どうなります?」


 驚いた事に、篠宮はまだゲームを続ける気であった。





 つづく

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