第200話 篠宮の錯乱


 鬼丸と抱き合うサクラの姿に錯乱した篠宮は、意味不明な台詞を吐きつつ、レーザーライフルを乱射する。


「!!」


 とっさに鬼丸はサクラをかばった。


「鬼丸ッ!」


 めちゃくちゃに放たれたレーザーは四方八方へ飛び、あたりに青い線が撒き散らされる。


「チッ、当たったな」


 サクラの目に、鬼丸のポインタの赤い光が入って来る。篠宮の適当に撃ちまくったレーザーが、彼の背中側のポインタに当たったのだ。


 鬼丸は包む様にして護ったサクラに向かって苦笑してみせた。悔しさなど無いその笑みに、サクラは困惑する。


「なぜだ? 私を護るより、逃げたら良かったのに」


「うるせえな。それよりあのバカに負けるんじゃねえぞ」


 ただの人間が亜人デミより強いなんて、俺達の沽券にかかわるだろう。


 彼はそう言うと、ビームの嵐が止んだのを見計みはからって、サクラを離した。


 それを見た篠宮も肩で息をしながら、銃口を下げる。鬼丸の影からサクラが叫んだ。


「『浮気者』とはなんだ、取り消せ!」


「あっ、サクラさん! えーと、俺以外の男と抱き合ってたらダメでしょう⁈」


「抱き合ってないッ! それにお前の許可なぞいらん!」


「でも〜」


 サクラと篠宮が騒いでいる間に鬼丸はレーザーライフルを拾い、それをさりげなくサクラに差し出した。


「でも、じゃないッ! 他人ひとが聞いたら誤解する様なことを言うな!」


 サクラも篠宮を叱りながら、さりげなくライフルを受け取り、篠宮に向ける。銃口を向けられた方は、動きを止めた。


「え? ちょっと待っ……」


「うるさい、ここで決着をつけるぞ」


「俺のキッスが欲しいんですか?」


「お前のくだらん企画を終わらせてやるんだ、感謝しろ!」


 サクラは篠宮に向けてレーザービームを撃った。





 つづく




◆『あっ、いつの間にか200話到達記念』


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。書き手として、誰かの目に自分の書いた物語が触れるということに、大変感謝しております。



記念企画人物紹介


◆篠宮司……巨大企業Shinomiyaの御曹司。母親が妾腹である為、親戚には評判が悪いが、父親には可愛がられている。その父の支配下から逃げようと教師の道へ進むが、その赴任先も父の掌の上。しかし彼の人生を変える出会いがそこには待ち受けていた。


◆須王サクラ……アオバヤマ町の亜人。姿形は常人と変わらないが、これまでの行動を見る限り、かなりの怪力と思われる。カエデという妹がいるが、妹の方が年上に見える。それは彼女のテロメア(老化に関わる遺伝子)が常人よりかなり長いためである。


◆鬼丸……鬼の様な姿をした亜人。パワー系の能力に長けているが、人型に形態を変える事も可能。人型の彼は篠宮曰く「ずるいイケメン」。幼い頃からサクラと共に過ごしているため、気心は知れている。バトルロワイヤル大会で、サクラに手をあげることが出来ず、自分の気持ちを知ることとなった。


◆レディ……全身を宝石の様な鱗で覆われたセクシー系亜人。顔や手のひらには鱗はなく、両耳の脇に鳥の羽根が生えていてその豊かな頭髪を飾っている。身体の柔らかさを生かした、関節技が得意。一度はサクラに膝をつかせた事もある。見た目で差別されて来たので、常人タイプのαクラスの亜人を憎んでいる。鬼丸を慕って、彼を支えているがその想いは実らないだろう。

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