第199話 どよめく人々


「あの男なら、警備部からの報告を受けて、に来るだろう」


「……あの、アラート事件の奴か」


 おそらく、警備部の部員がアオバヤマ町の住人から聞いた校内大会の話を、隊長の日和田ひわだがご丁寧に浅木義久あさぎよしひさにご注進に及んだと見える。


 同型機のドローンを潜り込ませて、亜人デミ達の能力を観察しようというのだろう。


「——まずいな、皆の能力がほとんど見られたと言うことか」


 おおよそのデータは提出しているはずだが、実際の映像として町の外の者の目に触れたのは初めてだろう。


「我々もこれ以上能力を見せるのはやめた方が良いのだな?」


 サクラの問いに、鬼丸はうなずいた。






「あっ、え〜?」


「ちょっと、どういうこと?」


「お子様は見るな」


「見せよ!」


 モニターに映った、鬼丸とサクラの様子——一見抱き合うように見えるそれを見て、プールサイドと本部席は大騒ぎだ。


 一方で観客席の一般客は、大型スクリーンに映される二人の姿に、ぽかんと口を開けて眺めている。


 トキワが声をひそめて、隣の鴫原しぎはら校長を問いただす。


「いつの間にこんな事に?」


「いや……私の監督不行届で……」


 私も初耳です、と校長はズリ落ちた片眼鏡モノクルを直しながら呟いた。





「どうする?鬼丸」


「……ゲームのルールに従って、レーザーライフルの戦闘に切り替えよう。理由など後でどうにでもなる」


 合図のように、鬼丸はサクラを少し強く抱きしめた——その時。


「うわあああ!サクラさんの浮気者ーッ!」


 篠宮が森から飛び出して来た。



 つづく

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