第197話 サクラ渾身の一撃


「うわー! 大変だ、サクラ先生が鬼丸さんとり合うぞ!」


 ウォルフは慌ててプールサイドに走って行く。プールサイドには敗退して来た皆が集まっている。彼が顔を出すと、既にモニターを、皆が食い入る様にして見ていた。


 レディだけが離れたところで浮遊型の担架に乗ったまま眠っている。


「ちぇっ、これじゃあ見れないな。本部で見るか」


 ウォルフはきびすを返すと歓声に湧く観客席のある本部へ戻って行った。





 戦うと決めたら判断は早い。


 サクラはレーザーライフルを捨て、鬼丸に向かって行く。秋風と共に黄色く色づいた枯れ葉を巻き上げながら、突進して行く。


「うおおおおーッ!」


 決して乙女とは思えぬ咆哮ほうこうを放ち、サクラは振りかぶった右の拳を鬼丸目掛けて繰り出した。


 白衣の裾がひらめく。


 数々の機械や篠宮を破壊して来た右の拳はあやまたず鬼丸の鳩尾みぞおちめがけて流星の如く——。


 どしっ!


 重く鈍い音と共に、その右手は鬼丸の大きな手に受け止められてしまった。


「むう……!」


 サクラはさすが鬼丸と思いつつも、得意の右ストレートを止められて眉を寄せる。


 攻撃を受け止めた方は、そのままサクラの手を押さえ、反撃に転じた。


 鬼丸の右拳が振り上げられ——。


 止まった。


「あ」


 鬼丸の口から小さな呟きが聞こえ、彼はサクラの手を離した。




 つづく

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