第196話 なんでそうなるのか?


 やがてサクラは定点観測の如く、動かないドローンを発見する。おそらく、その真下に鬼丸がいるのだろう。


「……」


 今更になってサクラは鬼丸との共闘を検討し始めた。


 はじめは鬼丸が誰かと手を組むタイプでは無いから、考えもしなかったが、万が一篠宮がサクラと鬼丸に勝った場合、女子の唇が狙われるに違いない。


「そ、それだけは阻止せねば」


 サクラは走り出した。





「えー⁈ サクラ先生は鬼丸さんと戦うつもりか?」


 本部に戻ったウォルフが救急隊ヘルメットを外しながら、モニターを見た。


 そこにいたカグラも頷き返す。


「いよいよ、最強対最強の争いとなるのじゃな」


「最強……ねぇ」


 さて、そんな単純な話じゃないぞ。


 と、ウォルフはお子ちゃまなカグラを横目で眺めた。


 αの最強とβの最強のどちらが強いか、今まで曖昧だった所に決着がつくのだ。


 と、言う事は今まで同等だったサクラと鬼丸のパワーバランスにも影響が出るかもしれない。


「ま、流石に鬼丸さんの勝ちでしょ」


 ウォルフはヘルメットをカグラの頭に被せた。





 鬼丸は自分に近づく気配に、閉じていた目を開く。そこには息を切らせたサクラがいた。


 鬼丸は立ち上がると、軽く伸びをして強張った身体をほぐす。少しだけめんどくさそうに嘆息してサクラを見やる。


「やれやれ、まさかお前と当たるとはな」


「ちょっとまて、話を聞け」


 サクラが鬼丸を制すると、彼は首を傾げた。


「なんだ? 降参か?」


「誰がするか。それに、私はお前と取っ組み合いをするつもりはない」


「それもそうだな」


 意外にも鬼丸は顎に手を当てて頷いた。


「お前はシュトルムとは違うからな。その細腕が折れてはかなわん」


「おい、私の腕が簡単にへし折れると思うなよ」


 カチンと来たサクラが反論する。


「やる気か?」


「やらいでか!」





 つづく

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