第195話 篠宮、復活!


 ——静かだ。


 森の中を一人歩きながら、サクラはその静けさに驚く。


 普段から喧騒の中にいるから、なおさらそう思うのだろう。


 ——ああ、この森には生き物がいないのか?


 自分達が分け入ったせいで隠れているのか、一羽の鳥すらも見かけない。


 代わりにサクラを空から追ってくるのは二台のドローンだ。むしろそのかすかなエンジンの唸りが耳につく。


 ——さすがに監視されているようで気分が悪いな。しかし……。


 しかし逆にドローンがある所に鬼丸か篠宮がいるということだ。


 サクラは空にも目を配りながら、歩くことにした。





「篠宮先生、起きて!」


「はっ⁈ ここは?」


「まだ、ゲーム中ですよぅ」


 飛び起きる篠宮の目に、ナースキャップを付けた白井ユキがいた。


「えへへ、似合いますか?」


「うん、似合ってるよ!……じゃなくて、俺どうしたんだっけ?」


「サクラ先生に投げられて、レディ先生にぶつかったんです。覚えてないですか?」


 そういえば、と篠宮は額をさする。見事なコブができていた。


「痛ッ……! あ、レディちゃんは? 大丈夫なのかい?」


 ユキは目線でレディの方を示した。篠宮がそちらを見ると、救急隊のヘルメットを被ったウォルフがレディを乗せた担架を誘導していた。空中に浮くタイプで一人でも患者を運べる。


 ジト目でウォルフが篠宮を見つめてくる。


「ななななんだよ、その目」


「まさかアンタが残るなんてな」


 どうやら羨ましいらしい。「残る」と聞いて、篠宮はサクラの姿を探した。が、ここには居ないようだ。


「残るはサクラ先生と鬼丸先生だぜ。死ぬなよー」


「げげっ、マジか」


 しかしレーザービームでの攻撃なら、非力な篠宮にもチャンスがあるというもの。


「あと、二人に勝てば、サクラさんのキッスか——」


 篠宮は「くふふ」と不気味に笑った。





 ゾワッとした悪寒に襲われてサクラは思わず振り返る。


「チッ、気味の悪い」


 そう言いながらも背後の空も注視する。


「ん?」


 かなり遠くに、数台のドローンが見えた。方角からして、篠宮とレディが倒れた場所らしい。


「篠宮が目覚めたな」


 しばらく様子を見ていると的確にサクラを追ってくるようだ。そう、我らが篠宮には女子を探知する能力が備わっているのだ。


「気持ち悪いな」


 サクラは逃げるようにその場を立ち去った。





 つづく

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