第194話 残り三名、三巴

『篠宮先生は——え?あ?はい?ちょっと、カエデさんわかったから……ゴホン、失礼しました。篠宮先生はそのまま参加続行です!』


 トキワの妙な声に、サクラは不審げな顔をした。強いて言えば、途中、首を絞められたような声が聞こえたが……。


「気のせいか」


 サクラはまだ目を回している篠宮を上から眺めると、「ふんッ」と鼻を鳴らしてその場を立ち去った。


 救護隊レスキューがやって来て、奴が目覚めれば、その場で戦い始めることになるか、或いは鬼丸に対しての共闘を持ち掛けられるかどちらかだ。


 鬼丸に対して二人がかりで戦うなど、彼女の望むところではない。


 出たとこ勝負だ。


 先に鬼丸に会えば戦うし、再び篠宮に会えばこれもまた戦うのみ。


 ただ不思議なのは——。


一花いちかの端末では奴は鬼丸の所に居たはずだが……」


 何故急に襲撃する事が出来たのか?


 サクラは首を傾げつつ森の中に消えて行った。





「これはおそらく、篠宮先生の位置情報が彼のスマホによるものだからでしょう」


「あー、なるほど。生徒の皆さんは体内に生体端末カリギュラが埋め込まれていますからね。彼らにしたら位置情報がなんて事はあり得ないのですね?」


 校長の解説にトキワが喉をさすりながら頷いている。喉は先程篠宮の棄権を伝えるかどうか迷っている時に、カエデに「続行ですよ!」と締め上げられたのだ。


 もちろん、大穴の篠宮が退場になれば会場が盛り下がるからである。皆が画面スクリーンに見入っているうちは、まだまだ酒やツマミが売れるのだ。


 ——私情は入ってないよな?


 カエデは自分に聞いてみたが、篠宮を応援している気がして、ぶんぶんと頭を振っただけだった。






 つづく

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