第192話 レディVS一花
この大きなレーザー砲はそもそも電波塔と併用している為、無駄が多い。
「今度作るときは、絶対、軽く作るんだからッ!」
まさか既に移動している?
こういう時、特に能力の無いαは心細い。ましてや隠れる場所のない場面だ。向こうから見られていると思うと、なおさら気が焦る。
一花は焦る自分を
——大丈夫。惑わされてはダメ。レディ先生はあの樹に——。
「いると思ってるの?」
耳元で囁かれた、ねとつく声にゾワっと悪寒が走り、一花は動けなくなった。
「……」
いつの間にか、本当にいつの間にかレディは一花を後ろから抱きしめようとしていた。
ゆっくりと動く腕が青みがかった蛇のようで現実感が無い。
その腕が一花を捕らえる。
「怖がらなくてもいいじゃない」
怖い。
怖いに決まってる。
だって。
レディ先生は。
「なあに?」
声しか聞こえない。
一花の目にはゆっくりと自分の首に巻きつく、レディの腕しか見えない。
「レディ先生は、私たちの事、嫌いですよね?」
きゅっと巻きついた腕が締め上げてくる。
「ふふ、まだ子どもね。……大人はね、そう言うことを口にしないものよ」
一花は喉が苦しくなるのを感じた。
「待て!篠宮ーッ!」
「イヤですよ!」
篠宮を追いかけて森を走り回るサクラは、その返答を聞くやいなや、レーザービームを放った。
連射するものの、篠宮は華麗に
「チッ、逃げ足だけは速いやつだ」
そう言いながら、追跡の手を緩めないサクラである。
ところが——。
「あっ!」
いきなり篠宮が立ち止まる。勢い余って、サクラは彼にドカンとぶつかった。二人してゴロゴロと転がって行く。
「イタタタ……」
「ばっ、馬鹿者!何故急に……」
「シッ!サクラさん、静かに!今、いいところです!」
声をひそめてサクラの口を押さえる篠宮が指差すのは——。
一花を背後から押さえつけるレディの姿だった。
「いいなぁ、俺も後ろから抱きしめたいなぁ」
「あれは違うだろうが!!」
つづく
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