第191話 少しずつ、仲良くなるから


「ほう、六姉妹も頑張っておるではないか」


 カナエが相変わらず上から目線で物を言う。


 その声を聞きつけてか、さらに隣のテントから二花にかも出て来た。ぞろぞろと他の姉妹も出てくる。


 どうやら生徒達は生徒達で、ここで夜更よふかしをしていたと見える。


「えー、一花いちか残ってるの?」

「すごい、すごい」

六花ろっかと彼氏君は負けちゃったみたい」


「お主ら、朝食はどうするのだ?」


 きゃっきゃと騒ぐ二花達にカナエが聞く。


「あっ、食べる食べる。何が良い、双子ちゃん?」


「名前で呼べと言うのに!」


「じゃあ、私の名前は?」


 二花に聞かれて、カナエは「うっ」と詰まる。見分けが付くわけがない。


「えと……えーと」


「冗談よ、カナエちゃん」


 二花は笑った。カナエは今まで会話したこともなく、むしろ見下していた六姉妹に微笑みかけられて、真っ赤になる。


 でも、不快ではない。


 何か暖かさがある——そう、みんなで笑い合っているような、照れくさいような、そんな感覚である。


「よ、よし!朝食の支度をするぞ。手伝え——」


「二花」


「行くぞ、二花!」


「はいはい」





 ちょうどその頃、大きなレーザー砲を抱えた一花は、自分を落ち着けるように、ゆっくりと呼吸を整えていた。


 既に、六花とユニ、それから白井ユキは退場を言い渡されており、その場には彼女達二人しか居なかった。


 一花とレディ。


 一花にしてみれば、能力的に圧倒的強さを誇るβのまとめ役が相手である。いわばサクラを相手にするくらい、無茶な対戦だ。


 それでも、一人で戦うしかない。


 一花はレディが隠れている樹に向かって、レーザー砲を向けた。




 つづく

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