第189話 篠宮、突然の登場!


 隠れていた篠宮が撃ったレーザービームは、見事に六花ろっかの左胸に当たった。ポインタの色が赤に変わる。


「ええっ⁈なんで?」


 一花いちかの情報では、篠宮はここから北に離れた場所に、鬼丸と共にいたはずだ。一花も驚いている。


 それを尻目に、篠宮はユニにもレーザーを放つ。流石さすがにこれは当たらない。しかし、慌てて篠宮に向き直るユニは無防備な背中をレディ達に向けてしまった。


 その隙を、レディが逃すはずがない。


「ユキ!」


「はいっ!」


 ユキがレーザーを撃つ。青みを帯びた光の筋が、ユニの背中を斜めに横切った。


 鈍い衝撃と共に、ポインタの色が赤になる。


「うわっ、やられた……!」


 おろおろする六花とユニを盾にして、篠宮はレディを狙ってレーザーを放った。


 ただ無防備に立っているだけのレディは済ました顔で笑っている。


 左胸のポインタに当たる——と思ったレーザーは何故か飛び散った。


「あ! ズルい!」


 篠宮の声に、レディはぺろっと長い舌を出した。


 彼女は手鏡をポインタの前にかざしていたのである。ゲーム用のレーザービームなどは拡散してしまう。


「そうね、ポインタを物で隠すのは反則よね。もうしないわ」


 うふふと笑うとレディはそばの大木にするりと登って姿を隠した。残された白井ユキが慌てる。


「えっ⁈ レディ先生?」


 一人にしないでー!と言ったか言わないかのあたりで飛び込んで来た一花のレーザービームに撃たれる。


「ああん、負けちゃった!」


 ぺたりと座り込むユキに、頭上からレディの声が降って来る。


「ユキ! 武器を!」


 はっ、とユキは気を取り直すと、持っていたレーザーライフルを放り投げた。木の葉の間から長い腕だけ出してそれを受け取ると、レディも参戦する。


 まずは撹乱とばかりに連射して、一花と篠宮を引き離す。レディは自分の熱感知能力で篠宮の接近を知ったが、どうやらα達はそうではないようだ。


 一花も六花と同じに驚いて、篠宮に声をかける。


「篠宮先生、何故ここに⁈」


「ふっふっふ。何故でしょ〜か?」


 篠宮は得意げな顔だ。


 そこへ少し遅れてサクラが飛び込んで来た。


「あっ! 篠宮!」


「まずい、サクラさんだ!」


 戦う相手が増えたと判断した篠宮は、あっさり撤退に転ずる。サッと茂みの中に姿を消した。


「待て! 篠宮!」


 サクラはレーザー砲を一花に放り投げると、自分のレーザーライフルを構え直して追いかける。


 残された一花が悲鳴をあげた。重いレーザー砲を受け止めながら、サクラの背に向かって「信じられない」と言う表情かおをする。


「えええー!ちょ、重ぉい!」




 つづく

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