第182話 残り八名の戦い


「あはは、なかなかこの姿にならないからね」


 ケンタウロス姿のユニは照れ臭そうに笑う。


「あはは、じゃなくて!」


 一花いちかは驚きのあまり半分キレている。


「でも速かったよー」


 六花ろっかはうっとりとユニを眺めている。ユニと六花は相変わらず二人でモジモジする様な空気をかもし出していた。


 ——見ている方が恥ずかしい。


 と、思ったのは六花以外の姉妹達だ。


 遅れてやって来た五花いつかも同じ表情かおでユニと六花を眺めている。


 五花と共に戻って来たサクラは一花の倒した電波塔兼レーザー砲を立て直していた。再び立て直して持ち手を収納すると、パラボラが開き、薄い電磁バリアの膜が出来始める。


『さあ、ポインタを撃たれた人は退場ですよー!本部に戻って下さーい!』


 トキワの声がドローンから流れて来る。


 それにあわせて、二花、三花、四花、五花がバリアに空いた穴から出て行く。


「一花、頑張ってね〜」


「わ、わかってるわよ!」


 気持ちを見透かされている気がして、一花は紅くなる。四人を追い出しながら、凍りついたポールを地面に刺し直す。溶けた氷が水滴になって流れ落ちた。


 どうやらまだ使えそうだ。


 端末を持って来てポールを起動させると、無事に動き始め、電磁バリアの穴を塞いだ。


「と、いっても同じ手で来られたら防ぎようがないかしら?」


 リタイアのメッセージ通知には白井ユキの名は無かった。それからレディの名も。


「油断出来ないわね」


 一花は長いため息をつきながら、天を仰いだ。





「えーっ、何これ?」


 二花にか達が本部に着くと、観客席では酒盛りが始まっていた。しかも売り子はカエデだ。酒やツマミを売りながら、何かが書かれた紙切れを渡している。


 観客席のそばには、ホワイトボードが置かれていて、何やらオッズ表のようなものが書かれていた。


「あ、双子」


「……ちゃんと名前で呼べ」


 本部の中継席——ドローンの制御と大型スクリーンの制御を行う席に、カグラとカナエが座らされていた。


「何やってんの?」


 二花が聞くと、カナエが不満そうな顔をさらに膨らませてぷりぷりと怒る。


「黒羽殿と黒狼殿に仕事を押し付けられたのじゃ」


 話を聞くと、双子が戻るや否やウォルフと黒羽リリはドローン制御の仕事を二人に押しつけて、プールへと走って行ったらしい。


「プールには人魚姫がおる故……な」


「そう言う事?仕方ないわね、私たちが代わるわ」


 カグラとカナエが驚く。


「何故じゃ?お主らも疲れているだろう?」


「でも、あなた達はこういうの苦手でしょう?手つきもぎこちないし」


 確かにカグラ達は普段コンソールに触れる事は少ない。複雑な表情で二人は素直に席を譲った。


「……すまぬ」


「いいわよ、そんなの」


 二花は笑って交代する。ふと画面を見ると、陽が落ちてきた森の中はだいぶ暗くなっていた。




 つづく

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