第181話 白馬の王子様


「馬鹿な!」


 一花いちかの放ったケタ違いに大きなレーザービームが三人を焼いた。


 正確には無害な光だが——。


 カナエとカグラのポインタが着弾を知らせる振動をして、二人の失格を知らせる。


「くっ!」


 二人は自分達の前にいるユキをかばう。せめて一人は生き残って、反撃せねば、レディ先生に合わせる顔がない。


 双子の影がユキを覆い、彼女のポインタを守る。


「このまま森に入るぞ!」


 三人は一花のレーザーが届かない森へと飛び込んだ。


 強烈な光が消えると、そこにカグラ達の姿は無く、中継ドローンからトキワの呑気そうな声が流れていた。


 重い変型レーザー砲に引きずられるように、一花はぺたりと地面にへたり込む。


『カグラ君、カナエさん失格ー!白井さんはまだ戦えます!』


 その放送を聞いて、一花は三人まとめて倒す事が出来なかったとほぞを噛む。この巨大なレーザー砲は、レーザーライフルと同じ波形の光線を発して、ポインタを攻撃するのだが、勿論一花達が内緒で改造したものだ。


 電波塔と併用できるところを秘密にしておきたかったのだが、仕方がない。


 本来は対鬼丸用であったのだ。


「バレちゃったかな」


「仕方ないよ」


 二花に慰められる。


 そこへ何故かひづめの音が響いて来た。


「な、何? 動物——⁈」


 森の中を突っ切って、疾走して来た何かが飛び出して来る。


 ——馬?


 いななきこそ無かったが、四本脚で飛び出して来た白馬は——。


「えええ⁈」




「ごめん、間に合わなかったかな?」


 白馬が喋る。


 と、言うか白馬の上半身は人の姿を残している。


 いわゆるケンタウロス。


 額には一本角があるその幻獣の姿を見て、一花達は腰を抜かす。


 しかもその背中に乗っていた六花がひらりと降りて、皆に駆け寄る。


「急いで来たんだけど……残っているのは一花だけ?」


「急いで来たって、あんた何に乗って来てんのよ⁈」





 つづく

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