第180話 一花、立ち上がる!

 カナエに狙われた二花にかは腰のハンドガンを抜いた。そのままカナエを狙いながら、一花いちか叱咤しったする。


「一花!アレを!」


「!!」


 その声に一花は冷静さを取り戻し、中央の電波塔に向かう。高さ三メートル、ひとかかえもあるそれに手を伸ばすと、塔のサイドから持ち手を引き出す。


 その間に二花は近づいて来るカナエに向かってレーザービームを放つ。


 しかし——。


「なんで当たらないの⁈」


 放つビームが全てれていく。狙いが思うように定まらない。カナエは笛を吹きつつ優然と歩いて来る。


「あ……?」


 二花はめまいを覚えた。


 あの笛……!


 気が付いた時には、二花は地に伏していた。その背中側のポインタに鈍い衝撃が走る。カグラがレーザーをポインタに当てたのだ。


「すまぬな」


「悪いなんて思ってないくせに……!」


 その言葉にカグラは眉を寄せる。


「では遠慮などせぬ。負け犬は下がっていよ」


 残るは一花だけだとばかりにカナエ、カグラ、そして白井ユキは彼女の方を見た。


「は⁈」


 三人揃って唖然あぜんとする。


 一花は陣地のバリア機能を捨てて、バリアを作っていた電波塔を横倒しにしていた。


 細い一花の身体のどこにそんな力があったのか、抱えるようにして電波塔をこちらに向けている。


 その先端のパラボラが変形して、真っ直ぐに向けられているのに気が付いて、カグラは我知らず下がろうとしていた。


 おかしい。


 アレはαの持ち込んだ端末の為の通信設備のはずだ——。


 彼がそう思った時、向けられたパラボラが青く輝き始めた。


「待て、その光は——?」


 この遊戯に使われているレーザービームと同じ色か?


 という事は——。


「逃げよ、カナエ!ユキ!」


 カグラが叫ぶ。三人が背を向けるより早く、一花の声が響き渡る。


「いっけぇーッ!」


 レーザーライフルなど足元にも及ばない巨大な光の帯が、一花の持つ電波塔から発射された。





 つづく

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