第177話 レディ先生強し!

「うおぉぉぉ!」


 サクラの咆哮が響き、鈍い音がそれに重なる。


 レディが自重を武器に掴みかかって来たのを、サクラはその怪力で受け止めたのだ。


「……っ!この馬鹿力!」


 レディの悪態に、サクラもやり返す。


「お前もな」


「何ですって!」


 激昂したレディはサクラの左腕を絡め取ると、その背後にぐるりと回り込んだ。


「私は馬鹿力なんかじゃないわよ!私が得意なのは——」


 絡められた左腕が捩じ上げられ、その痛みにサクラは膝をついた。


関節技サブミッションよ!」


 がちりとレディの技が決まる。


「サクラ先生!」


 六花ろっかとユニが悲鳴に似た声を上げて驚く。


 しかしサクラは痛みを堪えながらも指示を出した。


五花いつか!やれッ!」


 木影から五花が飛び出す。彼女は獲物を捕らえるためのネット銃を構えていた。


 それを見たレディは目をく。


 ——私を捕まえる気⁈


 そんな屈辱はたまったものではない。


 レディはサクラの腰にあるハンドガンを抜いて五花に向けた。向き合った二人は同時に引き金を引く。


 五花のネット銃が蜘蛛の巣のように広がり、レディ目掛けて襲いかかる。しかし、その隙間を縫うように放たれたレーザービームが五花の額を射た。


 五花のヘッドセットのポインタがグリーンからレッドに変わる。


 そのまま五花は横に転がるが、放ったネットは——。


「外れた⁈」


 ネットが覆い被さる直前に、レディはハンドガンをそれに投げつけていた。


 その為、捕獲用ネットはレディから逸れ、彼女の脚を掠めてサクラのそばに落ちる。


 そこへユニと六花がレーザーライフルを放ちながら、飛び出して来た。


「レディ先生、ごめんなさい!」


 ユニはそう叫ぶと、レディに向けて銃口を向ける。


 しかし既に彼女は森の奥へと姿を消していた。


「ふう、良かった……」


 安心するユニに、膝をついたままのサクラが叫ぶ。


「六花、ユニ!一花を助けに行け!」




 つづく

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