第175話 どちらが上か


 森の中を歩いていたレディはふと足を止めた。素早く手近な樹に登る。するすると樹上に上がると身を隠す。


 身をひそめながら、熱感知能力に集中すると、自分に向かって人が集まって来るのがわかった。


 ——あちらにも居場所を特定できる方法があるのね。


 おおかた得意の機械を持ち込んだのだろう。無粋な事だ。そんな物が無くたって、私達は戦える。


 レディは更に感覚を研ぎ澄ます。


 ——イチ、ニ、サン……四人か。


 その内の二人が全く同じ熱量だ。レディはそれを六姉妹の内の二人と見た。それから異なる二人——と言うことは六姉妹と組んだサクラとユニに違いない。


 更に言うなら、ユニがいるなら、残る二人のうちの一人は六花であるという事もレディには分かる。


「いきなり本命が出て来たわね」


 レディは舌舐めずりをした。





 ツツッ——。


 生体端末カリギュラが連絡を受信する。

 通話だ。

 受信した者にしかわからないシグナルに反応したのは、カグラ、カナエ、そして白井ユキの三人である。


「——承知した」

「——同じく」

「——はい」


 三人はレディからの指示を受けると、移動速度を速めた。


 彼女からの連絡によれば、一花いちか達のグループ八人のうち、四人が——それも厄介なサクラとβのユニを含む四人がレディに向かって来ていると言う。


 今なら六姉妹の内の四人しかいない。


「一度に半数を失うとはな」


 まるで勝利を確信しているかの如く、カナエは笑った。





 一方のサクラ達も同じく生体端末カリギュラでレディの居場所を一花から受信しながら移動している。


 やがて四人は——サクラと五花いつか六花ろっかとユニとの二人組に分かれて、一本の大木を囲む陣形を取った。


 どうやらこの樹のどこかにレディが潜んでいるらしい。


 それぞれ木立に紛れ、その大樹を観察した。どこに隠れているのか、見当もつかない。しかし迂闊うかつに近づけば、狙い撃ちされるのは間違いないだろう。


「五花、私が囮になる。その大砲ネット銃で彼女の動きを止めてくれ」


 サクラは隣の木立に隠れる五花にそう小声で指示すると、ゆっくりと前へ出た。




 つづく

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