第171話 こうなったら篠宮も敵となる


「なんだ一花いちか、篠宮と組みたかったのか?」


 レーザーライフルを肩に掛け直しながら、サクラは一花に聞いた。一花は頬を紅く染めながら、ぶんぶんと首を振って否定する。


「違います!えーと、その、味方は多い方が良いでしょう?そ、それだけです!」


「だが、篠宮も優勝を狙っているぞ」


「むむむ……」


 一花は腕組みして考え込む。


 一花が優勝すれば篠宮のキッスが手に入るが、篠宮が優勝したら——多分サクラのキッスを願うだろう。


 それだけは阻止したい。


 一花は腕組みを解くと、宣言した。


「篠宮先生も敵とみなします!全員、そのつもりで戦って!」






 一方、実況中継の本部では——。


「篠宮先生VSサクラ先生の戦いは、篠宮先生がひいて、一旦終了ですが?」


「そうですね。剣戟けんげきなら『一合交えて、距離を取る』というところでしょうか。楽しみが増えましたね」


 トキワと校長が中継を続けるところへ、ウォルフと黒羽リリが帰ってきた。リリは相変わらず日傘をさしていた。


 それを目ざとく見つけたカエデが走り寄り、二人を無理矢理モニターの前へ連れて行く。


 もともと好きではないカエデにぐいぐいと背中を押されて、二人は文句を言う。


「なんだってんだよ?」


「頼みがある!」


 カエデの真剣な眼差まなざしに、ウォルフは「うっ」と言葉に詰まった。


 それを横目で見ながら、リリはすっとカエデの手から逃れる。身体に触れられるのは慣れていない。


 それを、カエデはリリがいなくなると思ったのか、再び叫んだ。


「手伝って欲しいんだよ!」


 思わずウォルフとリリは顔を見合わせた。




 二人が連れてこられたのはドローンが撮影している画像が並ぶモニターブースであった。会議用の長机に沢山のモニターと制御用の端末が数台並んでいる。


「あ、兄貴」


 机の前には大きな身体を丸めてモニターと睨めっこしているシュトルムがいた。


 すごく、似合わない。


 カエデはシュトルムを椅子から立ち上がらせると、代わりにウォルフとリリを座らせた。


「頼むよ、校長とトキワが実況中継してるから、それに合わせて画面を切り替えて!」


 どうやらシュトルムでは上手く操作出来なかったようで、カエデは二人が来たことに、心底喜んでいた。


「何だこれは?何故なぜ切り替える必要がある?」


 不機嫌そうに問うリリの肩を、ウォルフがつついて知らせる。


「何だ?」


「アレ、アレ見ろよ」


 リリがウォルフの言う『アレ』を見つけ、ぽかんと口を開けた。


 そこには大きなスクリーンがあり、森の中の様子が映し出されている。今は六姉妹の拠点が映っていた。


「なんて悪趣味な!! 校長先生達は審判をしているとばかり思っていたのに!!」


 怒るリリの肩をぽんぽんと叩くと、カエデはニッコリ微笑んだ。


「バイト代は出すからね〜」





 つづく

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