第170話 篠宮の奇襲


「サクラ先生がいてくれて、心強いです」


 戦闘スーツに身を包んだ五花いつかがネット銃を手に、そう言った。五花とサクラは陣地の西側を警戒している。


 一方のサクラはいつもの白衣姿だ。


 足元も普段と変わらぬハイヒール。


 長い髪をなびかせるその姿に、五花はうっとりとなる。


「気にするな。何より変態しのみやからお前達を護らねばならんからな」


 そう言ったサクラにゾワっと悪寒おかんが走る。とっさに振り向きレーザーライフルを構えたが、何もいない。


「?」


 しかし目には見えなくても、サクラの中の何かが危険を告げてくる。


「サクラ先生?」


「しっ!下がれ!」


 五花が慌てて少し下がると、サクラ目掛けてレーザービームが飛んで来た。


「!!」


 華麗なバックステップでそれを避けると、サクラはレーザーが飛んできた方へ撃ち返す。


「わあっ!」


 悲鳴と共に樹の上から落ち来たのは、我らが変態・篠宮である。


 あいにくレーザーはれたらしく、ポインタは緑のままであった。


「いきなり、何をする?」


 サクラに詰問された篠宮は「ふっふっふ」と低く笑いながらゆらりと立ち上がり、サクラにライフルの銃口を向けた。


「俺と組んでくれないなら、倒すまで、でしょー!」


「篠宮ァ⁈」


 驚くサクラにレーザーを乱射する。


 そして白衣の裾をひるがえしてけるサクラ。さすがに頭に来て応戦する。


「許さん!」


 目の前で飛び交うビームに目を白黒させる五花は、どちらの味方をしたものか迷ってウロウロする。


 もちろんサクラの味方であるのだが、一花いちかの心情を汲むと篠宮も味方にしたいところである。


「えっと、えっと……一花いちかー!どうしよう⁈」


 結果、大声で一花を呼ぶ。既に彼女も異変に気が付いていて、こちらへ駆けてくるところであった。


「篠宮先生ー!」


 一花が叫ぶと、サクラの援護に来たのかと勘違いした篠宮が撤退する。普段は見せない身体能力で、すささささと森へ姿を隠してしまった。


「ああん、もう!一緒に戦って欲しかったのに!」




 つづく

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