第169話 妹の彼氏を味方にしました


「えーと、どうも。悠仁です」


 額に一本角が生えた、ユニが一花いちか達の陣地へ六花に誘われておずおずとやって来た。恥ずかしそうに挨拶する。


 陣地——と呼ぶに相応ふさわしく、教室二つ分くらいの広さに、六姉妹とサクラが陣取っていた。


 サクラが六花ろっかの代わりに持ち込んだ十本ほどのポールを地面に刺し、細い電線で繋いで陣地を電磁柵で囲っている。


 全員がゲーム用のレーザーライフルをたずさえ、そのうち二人が網を射出するネット銃を抱えている。


 力やスピードではβにかなわない一花達の苦肉の策だ。ターゲットをネットで捕獲して、ポインタを狙うつもりである。


「あなたが六花の彼氏ね。六花から話は聞いているかしら?」


「あ、はい。優勝して篠宮先生のキッスが欲しいとか?」


 突然、一花が真っ赤になる。


「ろろろ、六花!あんた何を言ったのよ⁈」


「ごめん!そうなのかと思って……」


「違うわよ!」


 内心、それを目論もくろんでいた一花は真っ赤になって誤魔化した。篠宮が知ったら、さぞ喜ぶであろう。


「……ユニ君だったわね。私たちの味方してもらえるのかしら?」


 それはβクラスとの対立となる。レディなどからしたら、裏切り者扱いされそうだ。


「まあ、六花ちゃんの頼みなので」


 一花は腕組みをして、うなずいた。


 ——しかし、この優柔不断そうな、曖昧な返事が多い男子のどこが良かったんだろう?


 そう思ってもさすがに口には出さない。


「ユニ君は六花と組んでいいから、とにかく東側を警戒して。こちらに三人向かって来ているわ」


 一花は持ち込んだ端末の画面を見ながら指示する


「三人?」


 六花とユニが画面を覗き込むと、地図上に動く光の点と名前があった。






「まさかユキと合流出来るとは思わなかったぞ」


「カナエちゃん達に会えて良かったよー。一人だと怖かったもん」


 白井ユキとカナエ、それにカグラは森の中で合流し、共に南側にいるαクラスを倒そうと移動中であった。


「レディ先生に会ったか?」


 カグラが聞くとユキはこくんとうなずいた。


「こっちに来ればカナエちゃん達と会えるからって言われたの。それでαクラスに勝ちなさいって」


「レディ先生も熱感知で人の居場所がわかるからな。ついでに他の者の居場所も聞いておけばよかったか?」


 カグラが一人呟く。


「そうだねー。ウォルフ君負けちゃったし、まさかリリ先輩も負けるなんて思わなかったよ」


 ユキは、β同士の争いになった事をレディ先生が怒ってないといいけど、と付け足した。


「なに、我らが勝てばよかろう。先生は鬼丸殿を推しているのじゃ」


 からからとカナエは笑った。





 つづく

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