第143話 仲良しでーす
「ちっちゃいころはよく一緒に遊んでましたぁ」
「あれは親に言われて仕方なく——」
「まあまあそんな事言わずに」
「話を聞けよ!」
どうにも篠宮のペースである。サクラはこの機を逃さぬよう、篠宮に要請する。
「なにそれ?よっくん、そんな事してんの?」
サイテーという目で
「……仕事なんだし!遊んでるつかっちゃんにはわかんないよ!」
つかっちゃん——?
うっかり昔の呼び名で篠宮の事を呼んでしまった義久を、皆が生暖か〜い目で眺める。
ちなみに篠宮司だから「つかっちゃん」であるらしい。
「遊んでないぞ。この学校で働いている」
「そんなの初めて聞いた!」
サクラは二人の会話にイライラし始めた。さっさと警報を切ってもらわないと、いつ電流を流されるかという不安がいつまでも皆を苦しめる。
「篠宮、早くしてくれ」
サクラがそう言うと、今度は義久が噛み付いて来た。
「つかっちゃんを呼び捨てにするな!
スパーンと篠宮が義久にツッコミを入れる。
「よっくん、そう言う発言はダメだよ」
「ええー?」
叩かれた後頭部を押さえながら、義久は恨めしそうに篠宮を見る。
「とにかく、みんなを自由にしてよ」
「うう……」
しぶしぶと義久は運転手からタブレットを受け取り、そこから警備部の日和田へ連絡を入れる。向こうは戸惑ったようだが、イライラしている義久の一喝で、
ふっと緊張を緩めた徳田姉妹が、篠宮とサクラ、それと鴫原校長に駆け寄る。
「大丈夫でしたか?」
「はい、校長先生!」
サクラはほっとして身体を伸ばすと、篠宮と義久に訊ねた。
「その、二人は仲が良いようだな?」
「はい!他の親戚は付き合いがないんですけど、よっくんとはよく遊んだ仲です」
「違うってば!」
妾腹の篠宮司はあまり篠宮家の親戚と会った記憶はない。たまたま父の妹が嫁いだ浅木家の方が、篠宮司との接点を保つ為に同じ歳の義久を引き合わせただけである。
しかしそこは何も知らない子どものこと。それなりに一緒にゲームをしたりたまに庭園を駆け回ったり、メイドのお姉さんの後をついてまわったり、同じ幼稚園の先生や女の子を追いかけまわしたり、と思い出は尽きない。
「僕はつかっちゃんの後を追いかけてただけで、決して女子をつけ回した訳ではなく……」
「一緒に楽しんだ仲じゃないか」
「誤解されるような事を言うな!!」
義久は頭をかきむしった。
つづく
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