第128話 それぞれの祭り2


「ユニ君!見て見て!」


 六花ろっかは、くじ引きで当てたピカピカ光るカチューシャをつけて見せた。ゆらゆらと揺れる二つの星型の飾りがピカピカ光っている。


「ぷぷっ、なにそれ。僕も欲しいな」


「あげよっか?」


「無理無理、角があるからつけられないって」


「そうかなー。じゃあコレは私の触覚ね」


「宇宙人?」


「そーそー」


 二人で笑いながら、六花は自分が自分である事を実感する。六人の中の一人ではなくて、一人の個人として思う事を言える喜びだ。姉妹の中ではどこかズレてて変に思われても、思うように自分の意見が言えなくても、ユニの前では違う。


 そしてそれはユニの方も同じ。大人しい彼はあまり自分の意見や考えを周りに言う事が少なかった。彼の夢見がちな考えは、武闘派が多いβの中ではあまり好まれない。六花と出会えたのは、ユニにとっては奇跡のような気すらする。


 二人ははしゃぎながら、人混みの中を歩いていった。





「今の、誰?四花ちゃん?それとも五花ちゃん?」


「六花です」


 クレープ屋の出店を手伝いながら、一花いちかは店長に聞かれて、しかし手を止めずに答えた。


 今日は暑いので、中にアイスクリームを入れたものがよく売れる。


 慣れた手付きで一花はクレープの生地を丸く伸ばし、サッと裏返す。


「六花ちゃん?あんな顔するのね。うちじゃ見たことないなぁ」


 六姉妹は同じ店でバイトをしている。くじ引きで祭りの間の2時間は一花、二花、三花が手伝う事になったのだった。


 別に六花が誰と歩こうが関係ない。


 関係ないのに——イライラする。


「私も、あんな六花見たことないです」


 少しだけ苛立ちを混ぜて、一花は店長にそう言った。





 つづく

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