第125話 祭の始まり
夜——といってもまだまだ西の空には明るさが残る夕暮れ時。アオバヤマ町の学校、それも校舎と校舎の間という場所で、その祭りは始まった。
いつもは閑散としている校内に町中の人が集まる。今までにないざわめきに、生徒達は緊張した。
普段からアオバヤマ町の自宅から通学し、バイトもしているくらいだ。人馴れしていると言っても良い。
しかし——。
「……どうしよう、なんか恥ずかしいな」
「ユキ、お前は別にかまわんだろう?プールにいるエメロードに比べれば、堂々と出歩けるじゃないか」
「うう、なんでリリ先輩はそんなに
黒羽リリは「ふん」と鼻を鳴らすと、胸を張った。
「いいか、ここにいる人々は少なくとも我々を迫害する為に集められた者共ではない。つまり敵ではない。それらがただの町人を演じているのだ」
「それはそうですけど〜」
「落ち着け。まずは欲しい物がある店に行って、欲しい物を的確に伝えるのだ。そのあとは左耳にある
「む、難しいですね」
「ふん、なにが難しい?」
「じゃあ、リリさん、お手本見せて下さい」
「えっ?」
とたんに挙動不審になるリリ。
「待て待て、ここは後輩に先陣を譲るとしよう」
「何を慌ててるんですか。どうぞ先輩」
お互い譲り合う二人の後ろでウォルフとユニがやはり人前に出る事に
「やっぱ
「何言ってるんですか。ウォルフは人型の時は別に人間と変わらないでしょ。僕なんて角があるんですよ」
そう言うユニはパーカーのフードを深く被っている。それでも妙な出っ張りは隠せない。
「ま、お前もそこ以外はまともだからな。彼女もいるし」
ウォルフにニヤリと笑われて、ユニはぎょっとする。
「なっ、なんで知ってるの⁈」
「バレないとでも思ってんのかよ。
羨ましいぞ、と言われてユニは真っ赤になる。誰にも知られてないと思っていたのだ。
「約束してんなら早く行けよ。俺はあの二人の面倒見るから」
そう言って、リリとユキを指さした。
顔を紅くしたまま、ユニはこくんとうなずくと別の方向に走り出した。
「さて、めんどくさい先輩を連れて行きますか」
そう一人つぶやくと、ウォルフはリリとユキに声をかけた。
つづく
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