第119話 絶望の篠宮
「さて、私も行くかな」
サクラは作業を終えると、そう言った。篠宮は慌ててサクラを引き止める。
「いや、まだ半分残っているじゃないですか。もう少し作りましょうよ」
「いや、まだ鴫原校長も作業するのだろう。残しておかなくてはな」
「そんなこと言わずに、もうちょっとだけ〜」
「……レディでも誘ったらどうだ?」
「ななな、なんで彼女の名前が出てくるんですか⁈」
冷や汗を流す篠宮の鼻先をサクラはピンッと指で弾くと、「さあな?」と笑って出て行った。
「……そんな……」
「仕方ないですよ」
ハモってる。
篠宮は一人絶叫した。
「そんなぁあああ!!」
鴫原校長がウキウキしながら、英国製のステッキを片手に理科室に入ると、中は校長の心に反して、どんよりとした空気が
「む、これは……なんと
「おや、そこに居るのは篠宮君。そしてトキワ君と白井君だね?」
鴫原校長は構えたステッキを下ろすと、優しく声をかけた。
「あっ!校長先生!」
「良かった、彼を助けて下さい!」
白井ユキとトキワが彼の元に駆け寄ってくる。一体どうしたのかと、校長が問うと意外な答えが返ってきた。
「サクラ先生に振られたんです!」
「いや、冷たくされたくらいじゃ……」
「鼻っ柱を指でピンッと弾かれて!お前に用はないって感じで!」
「いや、そんな事言ってな……」
「篠宮先生、可哀想です!」
「落ち着いてよ、ユキちゃん」
白井ユキとトキワが言うには、どうやら部屋の隅で
「ふむ、大体のことはわかりました。私に任せなさい」
鴫原校長は整った口髭の端を
つづく
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