第13話 学習端末・スケアクロウ


 椅子に座るように指示されて、篠宮はそこに座る。ヘッドセットを付けられたが、ゴーグル型ではなく、目の前にスクリーンかあるタイプだった。


 サクラが端末そのものを起動させると、篠宮の目の前に薄青い光の文字が走る。


「うわ、すげえ」


 スクリーンに映っているのではない。距離的にいうと1メートル位先に幾何学模様と共に文字が浮かんでいるようにみえるのだ。


 ちょうどサクラが立つ位置なので、光の紋様がサクラの周りをクルクルと動いているみたいだった。


 彼女は篠宮の座る機器の外部端末を操作している。網膜認証らしくサクラの左眼が一度薄青い光て照らされる。カリギュラのコンタクトレンズが装着してある方だ。コンタクトレンズの方も反応して、幾何学模様を浮かび上がらせた。


「あの、彼らがこの町からでられないって……?」


「言葉通りだ。今からこの町の概要をレクチャーする。本来ならこの町に来る前に受ける説明だぞ」


 その言葉の後に、篠宮の周囲がふっと薄暗くなる。彼は映画が始まる直前の感覚を思い出した。




 —— アオバヤマ町沿革。



『××年、青葉山理化光学研究所跡地を利用し、アオバヤマ町設立』



 拡張現実VRとあまり変わらない映像で俯瞰で映された小さな町が見えた。それに重ねて文字が浮かび上がる。


 やはり神経接続をしないとこの機械の醍醐味は味わえないらしい。しかし篠原の目に興味深い単語が残った。


「青葉山理化光学研究所?」


「その研究所の周辺を山ごと買い取って作られている。アオバヤマ町というのは通称だ。このガイドはこので暮らす為のものだ」


 そう言うとサクラは篠宮の右手をとって、その人差し指に何かを装着した。プラスチック製のキャップ見たいだった。


「これは?」


「マーカーだ。お前は静脈認証も何も登録してないからな。とりあえずそれを使え。映像を操作出来る」


 なるほど、と篠宮がマーカーをつけた人差し指を動かすと、スマートフォンの画面を操作するのと変わらない操作性で、空中に浮かぶ画像がスクロールされて行く。


 拡大縮小も親指との操作で問題なく行えるようだ。


「タップすると動画に変わったり、説明音声が流れたりする。わからないことがあれば聞いてくれ」


「わかりましたよ、サクラさん♪」




 つづく

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