第12話 図書室で映像授業


 またもや平手打ちを喰らった篠宮は、ぶたれた頬を押さえながら半泣きでサクラの後を付いてくる。


「サクラさぁん……」


「ええい、泣くな!鬱陶うっとうしい!」


 ツカツカと早足で歩きながら、彼女は新校舎にある図書室へ向かっていた。図書室と呼ばれているが、実際には紙の本より映像の資料とその為の機材が多い。


 ガラッと図書室の戸を開けると、奥に進む。


 そこには一台の学習用端末があった。


 ゆったりと座れる機能性の椅子の周りに、大きな半円形の風防キャノピーみたいな物が付いている。左右の肘掛けにはコンソールがセットしてあり、ヘッドレストにも何やらVRの様なヘッドセットが置いてある。


「な、何ですかこれ?」


「VRは知っているな?それをもう少し体感型に特化したものだ。お前はカリギュラが付いてないから、それほど体感できないだろうが、今から彼らの説明映像を流すだけだから気にするな」


「えっ?そのカリギュラが付いてたらどうなるんです?」


「神経接続で映像ヴィジョンを体感出来るんだ。実感できるとは言わないが、拡張現実VRの1段階上だな」


映像ヴィジョンを?つまり映画とかゲームとかをもっと現実っぽく?」


「まあな」


「それって——」


 エッチな映像とかセットしたらどうなるんですか?


 と聞こうとした篠宮は、サクラの次の言葉に慌てて口を閉じた。


「この町から出られない亜人達生徒が、唯一外の世界を知る為の学習用端末なんだ。彼らは本物の世界を知らない」




つづく

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