第19話 高遠麻璃亜(メイド)②
「坊ちゃまが鈍いお方で幸いでございましたね」
そう言って、サラの正面で腰をかがめた麻璃亜はほほ笑んだ。
「それにしても、まさかMs.レイハントンのように貞淑なお方が、かような状態になられるとは……」
メイドの手がサラの耳に触れる。
「んっ……♡!」
「私どもの次期御当主を、それほどまでに愛してくださっていることは、高遠の人間として大変嬉しゅうございます」
そして唇……首筋……鎖骨――と、快感を誘うようになぞっていく。
「あっ……♡! はっ……♡!」
サラは抵抗できず、されるがままだ。
「坊ちゃまは、それはもう恐ろしいほどに魅力的なお方でいらっしゃいますれば……触れられずとも性感が高まってしまうのは、至極当然のこと」
ブラウスとレースのブラジャーの下からでも、触れてくれといわんばかりに固く主張している敏感な突起を、麻璃亜にきゅっ♡ とつまみ上げられる。
ゾクゾクゾクッッッ♡♡♡♡!!
胸から波のような甘い痺れが全身に広がり、もっと深い快感を得ようと、サラは無意識に脚に力を入れ、上体をのけぞらせた。
それが呼び水となり、初めての絶頂が痙攣とともに、サラの身体に襲いかかる。
「あっ……♡♡♡♡!!」
「どうかお声はお控えくださいませ」
麻璃亜に口を塞がれ、頭と身体を快感に支配されながら、サラは高遠家のメイドに許嫁の姿を重ねた。
「……わ、わたし……もう消えてしまいたい…………」
しばらくして正気に戻ったサラは、気だるい余韻を遥かに上回る罪悪感と、自身に対する失望感に打ちひしがれていた。
「何をおっしゃいます。大変お見事なオーガズムでございました。坊ちゃまもきっと、Ms.レイハントンの素晴らしい感度のお身体をお気に召してくださいますでしょう」
「っ――は、はしたない女だと軽蔑されるだけです。こんな私に、許嫁の資格なんて――」
麻璃亜の真面目で卑猥ななぐさめの言葉が駄目押しとなり、サラは手で顔を覆って、さめざめと涙した。
「Ms.レイハントン。坊ちゃまはその程度で人を軽蔑するようなお方ではございません」
すっくと立ち上がった麻璃亜が、ダークグレーの瞳でサラを見下ろす。
「まだ知り合って間もないあなた様でも、坊ちゃまのお優しさにはお気づきでございましょう?」
「――……」
「資格のあるなしは、坊ちゃまがお決めになることでございます。高遠家次期御当主の許嫁のご自覚がございますれば、”傷つくご覚悟”をお決めくださいませ。そして軽率なご発言は、今後二度となさいませぬよう……」
「も、申し訳ございません……」
知らず知らずのうちに、宗四郎を貶める発言をしていたことに気づかされ、サラは先ほどよりも強く自分を恥じた。
「ご理解いただけて何よりでございます。……さ、お部屋までご一緒いたします。ゆっくりお休みになられましたら、また明日、坊ちゃまにそのお綺麗な笑顔をお見せして差し上げてください」
「……はい」
サラの瞳に、透き通った晴れ空が戻ろうとしていた。
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