第八話 曙光に消ゆ

 東の山の端が白みかけていた。

 語り終えると、は静かに眸を閉じた。

 途端、生気が失せ、死人の顔へと戻っていく。光も徐々に薄くなり、今にも消えそうな淡さであった。

 しかし、それはそこに居座り続けた。夜明けが近づくにつれて姿は透き通るものの、闇にしがみついて離れようとしない。

 采女は背を向けた。

 枝が追いかけるようにそよぎ、触れることなく空を切った。

 やがて曙光が射し、透き通った影は溶けていった。


 采女は振り返らなかった。座敷に上がり、追い縋る何かを追い返すように、ぴたりと障子戸を閉じた。


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