第138話 我流派、二つ名、集め過ぎ。
「…………? なんか起きた?」
「……あっ、この技、多分オブさんが考えてるタイプじゃないですね」
私達は、刀を静かに一振した師匠を見守っていた。
だけど何も、何か凄いことがズバーンって起きると思ってた一堂は、殆どが困惑している。
なにせ、師匠が一刀を振った以外、なにも起こらなかったのだ。
でも私には分かる。今の技は、凄く師匠らしくて、とんでもない強スキルだった。
マジかよ、それ有りかよ。そんなん、え、マジで? 師匠の強さがその技だけで八倍くらいになるんだが? ワールドエレメントさん達何やってくれてんの?
「…………ノノンちゃんは分かったの?」
「はい、多分ですけど。…………あれ、簡単に言うと防御無視の技ですね」
「……えっ、はぁ? え、アレだけ大層な宣言して、ただの防御貫通?」
「いえ、違いますよオブさん。防御貫通じゃ無くて、防御無視です。要するに、あの技で斬られると絶対に防げません。多分、防御固めたテンテンさんとか勇者さんでも、一撃で真っ二つになります。つまり、『絶対切断』です」
「………………………………はぁ?」
つまり、派手なエフェクトとか、攻撃範囲とか、そう言うのが全く無い代わりに、あの技で師匠が振るう一刀は、『絶対切断』の力が宿っている。
「ふ、流石は拙者の愛弟子。よく見ただけで分かるな?」
「そりゃぁ、師匠の弟子だもん。師匠の剣は誰よりも分かるよ」
超越絶招に至って、凄く満足そうな師匠が振り返った。
ヤバイなぁ、ただでさえ師匠はバケモノなのに、完全防御無視の絶対切断持たせちゃうとか、鬼に金棒ってレベルじゃないぞ。
カレーにタマネギ、幼女に笑顔、私にルルちゃんってレベルのヤバさだ。
…………? え、鬼に金棒持たせるより、幼女に笑顔の方が威力ヤバいよね? カレーにタマネギの方が相性良いよね? 私何も間違ってないよ?
「なんのエフェクトも無く、ただ絶対にぶった斬る技か……」
「師匠らしいですよね」
ほんとに、師匠らしい。
多分、威力とか、数値とか、そう言うの全部無視しちゃってる。スキルが嫌いだから、スキルだとしても、スキルらしさなんて求めない。
斬りたい物を、ただ斬ってみせる。HPを削るゲーム的な戦いではなく、急所を斬り裂いて絶命させる。
スキルもリアルも関係ない。ただ刀を持つものとして、至るべき場所。
「ふふっ。……ほんと、師匠らしい」
さてさて、良いもの見たし。私も超越絶招に挑戦してみようかな!
意気込む私に、だけど師匠が更に喜びの声を上げて遮られた。
「あ、ぁぁあああッッ! 拙者も新しいネームドスキルが手に入ったぞぉ!」
「おぉっ!? え、師匠ちょっと進化し過ぎじゃない? タダでさえバケモノなんだから、もうちょっとスローペースで良いんだよ?」
「嫌だ! 拙者はいつだってノノンが誇れる師で居たいのだ!」
そんな事言う師匠が可愛い。
と言うか、やっぱ私達をモニターしてるワールドエレメントの誰かが、師匠になんかサービスしたな?
「…………おぉ、やった、詠唱もちゃんと、ノノンがしゅきぃぃいいいって感じになってるぞ!」
「もうみんな、流石に私の事が好き過ぎない? 私もみんな大好きだけどさ」
とりあえず、師匠のネームドスキルはまた今度のお披露目となるらしい。今は一人でニヤニヤしたいそうだ。
まぁ私も、まだ【狂愛黒猫】の方は隠し札にしてるし、構わないよね。
しっかし、ジワルドだと流石にネトゲだったから、平等性を欠き過ぎると炎上しちゃうって理由で、ネームドスキルも一人一つが原則だった。
けどコッチの世界は現実も孕んでいるから、「平等? 何それ?」って感じに、不平等と不公平こそが平等で公平だと言わんばかりに、成し遂げた偉業に対してフィードバックがボンボン入る。
超越絶招に至るのは、やはり二つ名を得るだけの偉業なのだろうね。他にも何か条件があるんだろうけどさ。
「うーん、ワールドエレメントにインストールして貰った知識が、世界の変革に追い付いてない」
「わかる。もうこれ、古い知識になっちゃってるよね。まぁ、あたしたちもプレイヤーなんだから、普通は知らないくて当然の物なんだけど」
「それもそうだね」
私とルルちゃんがしみじみしてると、ひとしきり喜んだ師匠がルルちゃんの手をガッシリ掴んだ。
「ありがとうシルル殿! おかげで至れた!」
「うん。あたしも、ノンちゃんの大事なお師匠様の力になれて、嬉しいな」
「……くッ、拙者は、こんな良い子を困らせて居たのかっ」
ルルちゃんの光属性具合に、師匠がタジタジになってる。
「シルル殿の言う通りに、頭の中をノノンでいっぱいにしたら、物凄く簡単に行けてしまった。そうか、拙者に足りなかったのは技でも業でも無く、ハートだったのだな…………」
…………そ、そんなに私の事で頭をいっぱいにしたの? ちょっと気になる。
「……ねぇ師匠、どれくらい私の事で頭をいっぱいにしたの? 師匠ってぶっちゃけ、どれくらい私の事好きだったの?」
私ってモテモテだなぁ。嬉しいなぁ。
「ん? それはもちろん、ノノンがニコニコして食事してる顔の愛らしさや、険しい顔で修行を頑張っている尊い顔や、可愛い服に喜ぶノノンに、料理を楽しそうに作るノノンに、水着で泳ぐノノン、ベガに乗るノノン、照れるノノンに怒るノノンに、とにかくノノンノノンノノンノノンノノンノノンノノンノノンノノン--」
「待ってごめん師匠止まって。怖い、ちょっと怖い」
聞いて後悔した。ちょ、怖い怖い怖いッ。
「まぁとにかく、シルル殿の言う通りに、頭の中を『かわっ、可愛いぃいいいいいノノンしゅきぃいいいいいい♡』って気持ちで埋めつくして、そんなノノンの為に振るう刀を、絶対にノノンの敵を何がなんでも斬る為の力をと、そう願ったら至れたのだ」
ちょっと、師匠からの好意に狂気を感じた。けどルルちゃんが「わかる。凄いわかる」って分かりみ過ぎてる。
「本当にね、頭の中にノンちゃんのことを詰め込み過ぎて、頭がパーンって弾ける気がするくらい詰め込むとね、いけるんだよ」
「そう! そうだったのだ! 必要なのは想いだったのだ!」
「幸い、ノンちゃんが素敵過ぎるから、こっちはぶっちゃけ楽なんだけどね。だって、無理しなくてもノンちゃんが凄く素敵だから、どれだけでも好き好きって気持ちが溢れちゃうし、それを詰め込むだけだし」
「そうなのだ! シルル殿ッ……!」
「ムグリさんッ……!」
ガシィッて手を繋いだ、私のお嫁さんと師匠。
「…………ふーん? じゃぁ、僕もサユちゃんと
「さぁ? それはぬしの想い次第では無いか? 拙者達がノノンに抱く想いに迫れるほど、ぬしがサユ殿と
「ほーんッ……!? 言ってくれるじゃぁ無いかッ! このゴミクズ性犯罪思想カミングアウト幼女性愛クレイジーサイコクソレズ鬼ポニテロリコン開き直り侍様がよォッ!? だったら僕の揺るぎない愛を見せてやるよぉ!」
師匠に煽られたオブさんが切れる。本当に、オブさんは条件さえ整えば音速でキレ散らかすので見てて楽しい。
だけど、一人でなんて行かせませんよ、オブさん。
「ふ、オブさんだけに行かせはしませんよ。私もルルちゃんがしゅきぃぃって気持ちを詰め込んで、絶招の先に行きますとも」
「よし行こうぜノノンちゃん! モノムグリちゃんに目にもの見せてやろうさ!」
そんな訳で、私とオブさんも超越絶招にチャレンジだ。
「どうせなら僕らもオリジナル流派的なやつ名乗るかい?」
「良いですね。なら私は、黒猫流なんてどうですかね?」
「良いねぇ! なら僕は、薬師神流とかかな? いやでも、【薬師神】と短剣術ってあんまり関係無いよね……?」
「サユさんと
「それ頂き! 良いね白湯猫又流! 略すと猫又流、いや違うな。略名でも
「あ、もうそれで良いんじゃないですか? 私の黒猫流と対比になってて素敵ですし!」
「そうだね! 白猫流にしようか! 二人とも黒髪だけどね!」
「細けぇこたぁ良いんですよ! なんなら私が後で純白の着物を二人に贈っておきますともさ!」
「マジかよありがとう! 純白の着物を纏った二人とか超見たい!」
「私も見たい!」
「よぉぉし、行くぞぉぉおっ!?」
「行くぞぉおッッ!」
私とオブさんは無駄に叫んだ!
「秘短剣術ッ、白猫流超越絶招ッッ……!」
「秘刀術……、黒猫流超越絶招ッ……」
オブさんの短剣術は、たしか裏影流と
私はどうしようか。どうせならトコトン行きたい。むしろ、私がルルちゃんに抱く愛なんて、絶招の一つ二つ程度で受け止め切れるのか?
ああ無理だろう。私のこの気持ちはもっと重くて、もっと粘ついてる。足りない足りない。
なら、混ぜよう。私が持ってる刀術はどんどん混ぜよう。とにかく混ぜよう。私のヘヴィーなラブを受け止められる器になるまで、技よ混ざれ。
ああルルちゃん好き好き。大好き。愛してる。ルルちゃんの為なら私はなんだって斬る。全てを殺す。混ざれ混ざれ術理よ混ざれ。私の愛に混ざって、ぐちゃぐちゃに溶けて一つに成れ。
あぁぁあルルちゃん好き好き好き好き好き好き愛してる愛してるよ抱いてねぇ抱いて私を抱いてルルちゃんだけの物にしてメチャクチャにしてグチャグチャにして愛して殺して傷付けてルルちゃんルルちゃんルルちゃんルルちゃんッッ--……!
「--
私の絶招が先に始まり。
-ポーン。
「--
続いてオブさんが叫ぶ。
私とオブさんが、技を撃つ。ぶつかり、弾けて、轟音が鳴る。
私の技は、銀世界がベースである。
手に持った刀を世界に溶かし、『斬る』って概念その物にして世界を銀に斬り裂く絶招である銀世界が技の土台だ。
そして『速く巧い』神速抜刀の無念夢想流絶招、水鏡。
それと『速く広い』神速抜刀の瞬刀雷鳴流絶招、静寂鳴神。
この三つを併せた接続絶招が『水静寂鳴神鏡』なのだけど、これに『天地無用神楽舞』も混ぜてみた。
冬桜華撃流の絶招、
音無景見流の絶招、天地無用。
この二つを混ぜて、空中どころか重力方向すら無視して三次元を縦横無心に舞い巡り、斬り踊る接続絶招『天地無用神楽舞』。それを『水静寂鳴神鏡』と混ぜる。
絶招の五個接続。すると何が起きる?
まず私が、銀世界の術理で私ごと世界に溶けた。
そして天地無用の術理で、世界のあらゆる場所を自由に移動し、どんな場所にも私は在り、舞い踊り、刀を持たない剣舞の一つ一つが『速く巧く広い』神速の理を手に入れた。
私が腕を一振すれば、夥しい極太の銀閃が、神罰の如く空間を犯してズタズタに引き裂く。
なるほど、超越だ。超越してる。
銀世界を超越したし、水鏡も超越したし、静寂鳴神も超越したし、雪華桜蘭神楽舞も超越したし、天地無用も超越した。
まさに超越絶招。私が可愛く踊れば踊るほど、世界が銀に犯され死んで行く。
そして何やら、よく確認出来て無いけど、オブさんの超越絶招ともぶつかり合ってるのか、私が振り付けを一つ舞うたび、『ガガガガガガガガガッッッッ!』って轟音がする。
でも、キッツい。これキッツい。世界の理を一気に超え過ぎて、長時間やると多分普通に私が死ぬ。下手したらまたバグるのでは?
とりあえず、一回の舞いは十秒か十五秒くらいにしよう。一分とかは無理。私が持たない。今も体がギシギシしてるもん。
…………いや、違うなコレ。技が未完成な気がする。いや、完成はしてるんだけど、私にまだ合ってない? ぐぬぅ分からんっ、
なので最後に、和服の振袖が可愛くふりんって動く感じに、可愛さをなるべく意識した振り付けで舞了する。限界だぜ。
「………………ふぃ、ちゅかれたぁ--」
「--ノンちゃんしゅきぃぃいいッッ……♡ 技の名前があたしの名前なの嬉しいぃぃいいいしゅきぃぃいい♡♡♡♡」
「うぇぁッ!? え、ぁう? えと、うんッ! 私もルルちゃんしゅきぃいい!」
舞い終わり、一息着いたらルルちゃんに抱き着かれた。一瞬困惑したけど、ルルちゃん大好きだから何でも良いや。もっとギュッてして?
ねぇルルちゃん、久しぶりに普通にキスしよ? ちゅっちゅしよ? 人前? もう別に良くない? ほらちゅーしよ?
「ノノちゃ、あとで後悔すると思うから、今はやめよっ?」
「タユちゃん……? タユちゃんもちゅーする?」
「あ、まってノノちゃんっ、タユは誘われちゃうと弱いからっ……」
「ほらおいでー?」
「それっ、シルちゃんへのお願いのはずだよっ。タユは夜だけって約束ぅ!」
「いやなのー?」
「あっ、その言い方ずるいなぁ……」
はい、結局お嫁さんみんなヨシヨシちゅっちゅの時間だぜ!
あと恋人五人はどうしましょ。アルちゃんクルちゃんのアルリペアと、
「みんな好きィィい!」
「…………の、ノノン? 拙者はっ」
「師匠はだめー」
「なぜだっ!?」
百合団子になってる私に、師匠が物欲しそうに聞いてくる。何故かって言われたら、そりゃぁ私と師匠は恋人でも夫婦でも無いし?
「あのね師匠。師匠が実は私の事を好きだったってのと一緒で、私も師匠にずっと想ってた事があるんだよ?」
「…………えっ、拙者、ノノンからなんて思われていたのだ? 待ってくれ、本人から聞くの怖っ!」
師匠が私に内緒で、私に欲情してたのと一緒でね。私も師匠に内緒にしてた想いがあるんだよ。
「私ね、一人っ子だからさ。……もし私に、素敵なお姉ちゃんが居たら、きっと師匠みたいな感じなのかなぁって、ずっと想ってたの」
「………………ッッッッんぐぅ」
「本当はね、ずっと、お姉ちゃんって呼びたかったんだ」
「ッッぃぃいいいっ、拙者の弟子が尊過ぎて心臓が潰れるっ……! こ、これが遵死ッッ……!?」
私はちょっと、照れながらカミングアウトした。恥ずかしいね、これ。
で、私がそうすると、師匠は心臓を押さえながら呻いて、膝をついて崩れ落ちた。
これ知ってる。私見た事あるよ。SNSとかで出回ってる「心臓がズキューン」からの「救急搬送」の画像コンボのやつでしょ。
「だからね、あの、師匠が私と、本当はえっちな事したかったとか言われてもね、その……、えと、嫌じゃないんだけどね? あの、師匠は、私のお姉ちゃんでいて欲しいなぁって……、お姉ちゃんが良いなぁって思っちゃうの」
「ぅぅぐぅぅううッ……! 拙者はどうすれば良いのだァァッ……!?」
これが、私の正直な気持ち。
だからこう、お姉ちゃんみたいに思ってる師匠から、えっちな事したいくらい好きって思われてるなら、嬉しいんだけど、やっぱりちょっとモヤッとする。
私も
「師匠がね、どうしても、どうしても私と、えっちな事したいって言うならね、一回この関係をリセットしなきゃって思うよ。そしたら私はもう、師匠の事を師匠って呼べない」
「…………ッ!? そ、それは嫌だッ!?」
「私が師匠に抱いてるこの気持ちは、お姉ちゃんみたいだなって気持ちは、師匠が師匠である事とセットだからさ。厳しくても優しくしてくれた師匠の事が、お姉ちゃんみたいだなって思えたから。……だから、恋人や夫婦になるなら、師弟関係を精算しなきゃだよ」
何より、関係を深めるなら、師弟関係って言う上下関係は邪魔になる。夫婦で居る時と師弟で居る時は別々に割り切れって考えも無くは無いだろうけどさ、私は嫌だな。
だって好きになるなら、愛し合うなら、二十五時間三百五十日、ずっと愛していたいもん。師弟モードの時は我慢しなさいって、そんなの嫌だもん。
「あとね、師匠。師匠がロリコンなように、私も結構、重度のロリコンでね? だから、師匠と恋人になるなら、私は師匠が幼女だと嬉しいなぁ」
「オブルァァァァァァァトッッ……!? とりあえず変貌薬を寄越せぇえッ! 拙者も今からロリになるぅぅう!」
「嫌だよバーカ。て言うかショップで課金式の奴を買いなよ。僕に頼らないで? 今の君と知り合いだと思われたくない。超恥ずかしい。あ、名前も呼ばないで貰って良いかい? 僕ら超他人だよね?」
「アホめ貴様確認して無いなッ!? ショップメニューにEX変貌薬もEX性転換薬もコッチだと売って無いんだぞッ!? 昨日確認した!」
「えっ、マジ? …………うわマジだ。あー、そっか、こっちの世界だとNPCもプレイヤーも同じ扱いだからか」
え、マジ? 私も気が付かなかった。
うわ本当や。キャラクリ弄る類の商品が軒並み無くなってる。名前の変更アイテムとかも無いな。向こうだとギャグで済むけど、こっちだと変貌薬とか名前変更とか犯罪に使い放題だもんなぁ。
プレイヤーなら誰でも買えるって状況にするのは問題なのか。
「て事は、私もロリに戻るにはオブさんに頼る必要が?」
「あー、そっか。
「にゅへぇ、オブさん不意打ち照れるのでやめて下さい。別に自分が幼女で居ることに拘ってるんじゃ無いんですよ? ただ、幼女で居た方が、幼女を食べやすいので」
「うわ理由がクズいっ! 君も結構大概だよねぇ!?」
え、知らなかったんですか? 私かなりクズいロリコンですよ?
「…………そう言えばノノンちゃん、モノムグリちゃんの事がお姉ちゃんなら、僕は?」
「……え、それ聞いちゃいます?」
あちゃー、恥ずかしいなぁ。
そりゃぁね、オブさんってね、出会いは最悪だったけど、今ではとっても頼りになる師匠の一人だしね? その人間性も私と相性悪くないし、尊敬してるし、大好きだし、えと、そのー、ね?
「…………お、お兄ちゃんだと、思ってました、よ?」
「んっふ、いやごめんコレ照れるわ! 照れる照れる! 聞いてごめんこれは恥ずかしいわ! あはははは!」
「もぅ! オブさんのバカ!」
「オブルァァァァァァァアトッッ! なにを拙者の前でノノンとイチャついて居るのだぁッ!? 叩っ斬るぞゴルァァっ!」
そう、これよ。師匠とオブさんってすぐにじゃれ合うから、余計にお姉ちゃんとお兄ちゃんって気がしちゃうのさ。
私悪くないよ。兄弟っぽい二人が悪い。
「あははは! でもせっかくだから、一回くらいはお兄ちゃんって呼ばれてみたいねぇ!」
「………………オブ、お兄ちゃんっ?」
「んふぅーッ……! いや照れるけど、ちょっと嬉しくなっちゃうね! 僕って実は次男なんだけどさ、上も下も男で、妹とか居なかったんだよ。いやぁ、貴重な経験だっ! ありがとうノノンちゃん!」
変な照れ隠しをしてるオブさんだけど、私も負けじと顔が赤い。でも、そんなに喜んでくれるなら、たまに呼んであげようかな?
うぅ、いや恥ずかしいよコレ。お兄ちゃんとか初めて言ったわ。人生で初じゃない?
「それに、ノノンちゃんとの関係に悩んでるどっかの鬼ポニテと違って、僕は普通にノノンちゃんの事を妹みたいに思ってたしね? 師匠と姉の立場か、恋人か夫婦か、そんなので悩んでるお莫迦さんと違って、僕はこの立場を普通に喜べるからね。気が楽だよ」
「ぬぅぅううううッ! 拙者だって、拙者だってぇぇええッ……! うわーんシルル殿ぉー! あの鬼畜薬師が虐めるのだぁー!」
「あらムグリさん。ノンちゃんにヨシヨシしてもらおうね? あと、あたしは、ムグリさんだったらお嫁さん仲間になっても良いよ……?」
ルルちゃんに慰められてる師匠が可愛い。うーん、リワルドじゃないと見れない姿だよね。こんなに感情と欲望を爆発させまくってる師匠とか、本当に初めて見る。
師匠って武人らしい武人だから、自分を律するくらいは呼吸の如く当たり前にやる人だったし。だから私も、師匠のロリコンに気が付けなかった。
「と言うか、違うのだぞ! 拙者、本当はロリコンでは無かったのだ! ノノンの事も、最初は本当に、普通の弟子として可愛がっていたのだ!」
「ふぇぁ、そうなの? じゃぁいつからノンちゃんが好きなの?」
「分からぬぅぅうッッ……! 気が付いたら好きだったのだ! 気が付いたらロリコンになっていたのだ! だから、ノノンが欲しい気持ちと同じくらい、最初に抱いた師としての立場と心も大事なのだ! どっちも捨てられないのだぁぁぁあッッ!」
て、照れるぅ。えへへ、もうしょうがない師匠だなぁ。
そんなに私の事好きなの? ん? もう、弟子に恋しちゃうなんて、悪い師匠だよまったく。
「でもごめん師匠。私の中で、常に一番はルルちゃんなの。だから、夫婦になるとしても、一番がルルちゃんだって納得してくれないと、夫婦になれないんだ。タユちゃんもアルペちゃんもクルリちゃんも、それで納得してるハーレムだし」
「良く考えるとノノンちゃんも結構凄いことしてるよね?」
「自覚はあります。けどこれ、正直私のせいじゃないですよ? 私は普通にルルちゃんだけと結婚するつもりだったのに、暴走したのルルちゃんですもん」
「あ、うん。ごめんなさい。それは確かにあたしのせい。あたしの頭がパッパラパーになってて、ノンちゃん独り占めしたいのに、独り占め出来なかった時のノンちゃんも独り占めしたいって言う、訳分かんない状態だったんだぁ。本当にちょっと、あの時は頭がおかしかったんだぁ」
「え、何それ哲学かい? その、なに? 『独り占め出来なかった状態も独り占め』って、理論が深淵にハマり過ぎてるよ」
オブさん、これ別に深くないよ。ただエロいんだよ。
要はルルちゃんが『タユちゃんにペロペロされて気持ち良く鳴いてる私』もコレクションしたかったってだけの話しだからね。そんな状態をタユちゃんごと纏めて独り占めしちゃおうって言う考えだからね。
なので、幼女食いてぇってクズってるのは私だけど、そもそもハーレム立ち上げたのはルルちゃんだからね。私はそれから開き直っただけなのだ。
ホントもう、最初の頃は言葉責めが凄かったんだよ? タユちゃんにお股をメチャクチャに食べられてる時に、私の顔を抱き締めながら「ねぇノンちゃん、あたし以外に舐められて、気持ちいいの? ねぇノンちゃん、気持ちいいの? 誰でも良いの? あたしとどっちの方が気持ちいいの? ねぇ教えて? もっと鳴いて? あたしにノンちゃんの可愛い声を聞かせて?」って嫉妬メラメラなのに私にメロメロな、ぶっ壊れルルちゃんがずっと耳元で囁くんだよ。興奮した!
まぁ私も同じことルルちゃんにしてあげたし、タユちゃんにもしたんだけどさ。タユちゃんはいい子なので「どっちも好きぃ」って言ってくれた。興奮した!
三度言う。興奮した!
「なので、実はハーレム王は私じゃなくてルルちゃんなのです」
「独り占めしたかったけど、正直今の関係も後悔してないんだよね」
「おかげでお嫁さんになれましたっ……!」
「なれたのぉ〜!」
「嬉しいのぉ〜♪︎」
「拙者もここに混ざりたいッ!」
幼女になって、師匠を辞めて、お姉ちゃんも辞めるなら、……良いよ?
その日から私、師匠の事をモノちゃんって呼ぶから。師匠とは呼ばなくなるから。
…………ところでさ、さっきなんか、システム音鳴らなかった?
ちょっと確認しとこ。
・【+ステータス】
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・
・
・栄冠【到達者】【超越者】【開拓者】【黒猫流開祖】
・種族【プライマルキャット】【性別・女】
・Lv.1,400◆
・HP.476,000【E】
・MP.1,106,000【A+】
・STR.1,498,000【SSS+】
・INT.1,512,000【SSS+】
・AGI.1,036,000【A】
・VIT.336,000【F】
・MIN.225,000【F-】
・DEX.1,456,000【SSS】
・【+スキルリスト】【+装備】【+ショートカット】
・【+マクロキット】【+称号】
な、なんか増えてるぅぅぅううっっ!?
あと表記も微妙に変わってるぅううッ!?
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