第111話 忘れててごめんなさい。
「お前ぇぇぇぇぇええええええええええッッッッ……!?」
幼神イベントを控えた二日前の今日、私は
なぜ私の契約した幼神である
「…………えと、誰?」
ルルちゃんは今フィルたんとロアにゃんの面倒を見ながらダンジョンに潜ってて、そしてルルちゃんが一緒に居ないと私とは交尾が出来ない。怒られちゃうから。
しかし、タユちゃんだけならば、ソロで食べても怒られない。その事に気が付いてしまった
あとはもう、言わなくても分かるよね。
強いて言うなら、今タユちゃんは自室で二人から、無制限に使用される専用ドリンクバーになってる。直飲み仕様だよ。
二人の幼神はそんな様子だけど、対して
だから毎晩楽しむ分だけで十分らしいので、あっちの二人に混ざってタユちゃん式直飲みドリンクバーを楽しむより、私に抱っこされてデートする方を選んだ。
ふふっ、乱れる
そして、じゃぁ同じ代償を抱えてるルルちゃんの方は、私もタユちゃんも幼神三人も誰も居ないダンジョンで、代償をどうしてるかと言うと……。
私たち、ついに
うん。ごめんなさい。本当にごめんなさい。二人があんまりにも可愛かったし、ロアにゃんから「ノノねぇたんたちは、いつもどんな事してるの? ロアにゃん、おねぇたんを悦ばせたいから、教えて欲しいにゃん?」って言われたら、もう…………。
連れ込むしかないじゃん?(開き直りの境地)
だってさ、そんなに知りたいならさ、「手取り足取り教えてあげるよ?」って言うしか無いじゃん。六人で二人を食べるしか無いじゃん。
え、倫理? 道徳? 何それ美味しいの?
多分それより
はいクズです。百合クズでありロリクズです。でも段々後悔しなくなって来た私が居る。
今なら両親に、これが今の私ですって言える気がする。最初は泣かれるかも知れないけど、それでもちゃんと好きになって、ちゃんと愛してる大事なお嫁さんなんだって二人に伝えたい。
「---?」
「え、うん。多分知らない人……」
「知らない訳無いだろぉお!」
「えぇ、いやマジで誰ですか……?」
まぁそんなこんな、いま私は
場所は普通にヘリオルートの大通り。露店を冷やかして、何か可愛い小物でもあったら
絡んで来たのは、見た目が十二歳前後の女の子で、髪は艶々の灰色で胸辺りまで伸びてるストレート。ただちょっとケアが悪いのか、癖が付いてる。
服は見た感じ、染めた綿を使ったそこそこ仕立ての良いローブとパンツに、ローブの下はチュニックかな?
なんだろう、確かにちょっと記憶に引っかかる気もするけど、でも私こんな女の子知らないよ? 学園にも居なかったと思う。
そんな事よりも、今も抱っこされてご機嫌の
あの、知らない人、そんなに怒ってないで、私と
ほら見て、この至福の笑顔で頬擦りしてくる幼女、可愛くない? こんなのロリコンじゃ無くても幸せになっちゃうよね。私はバッチリ幼女性愛者なんだけどさ。
「…………うそだろっ、まさか本当に覚えてないのか?」
「えと、ごめんなさい。私の記憶には灰色の髪の可愛い女の子なんて居なくて……」
「かっ、かわぃっ……!?」
あ、そこで照れちゃうの? なんだよ可愛いなぁ。
ぺぺちゃんみたいに口の悪い系可愛い子なのかな。でも本当に知らないんだよなぁ。むしろなんで記憶に引っかかる感じがするのか謎だ。
「イヤうそだろお前っ! 俺のこと忘れたのかよっ……! 灰色さんって呼んでたじゃねぇか!」
「…………ん?」
待って欲しい。それはおかしい。
私は
「……えっと、私が灰色さんって呼んだのは、ジッゼさんって言う名前の男の子なんですけど」
「合ってるよ! でも俺がジッゼだよ!」
…………は? 嘘やろ?
「え、ええぇっ? ジッゼさんなんですか?」
「そうだよ! なんだよやっぱり覚えてんじゃんか!」
「いや、えっと、ジッゼさんって女の子だったんですか?」
「………………女にされたんだよ」
ん? 待て何があった?
ヤバいちょっと気になって来た。凄い楽しそうな匂いがする。
「えと、じゃぁ、取り敢えずどこか入ります? 往来でずっと立ち話しもなんですし」
「ん。そうだな。……でも俺、この辺よく分かんねぇし、任せる。ただ俺、あんまり金持ってねぇから、安いとこな?」
「あー、それなら私が持ちますから、気にしないでください」
ジッゼさんはあんまり奢られるのが好きじゃないらしいが、性別が何やら変わってたとは言え、忘れてしまったお詫びだとか、あと魔法を教える約束をすっぽかし続けてた訳だから、そのお詫びも含んでるとか、色々と言って丸め込んだ。
それで移動して、目指すのはいつもの場所。前はちょいちょい利用してた、ネネちゃんとお茶したり、ミナちゃんが護衛をゴスッて殴ったあの喫茶店。
「いや、お前だって大変だったのは分かってるから、魔法の約束については文句ねぇんだぞ?」
「それでも、今の今まで忘れてたのも事実ですから。お詫びは受け取って下さいな」
道すがら、ジッゼさんは私たちがダンジョンに落ちて大変だったのを心配してくれてたらしい事を聞いて、ちょっと嬉しくなった。
「それで、魔法の方はどうですか?」
「ん? ああ、結構使えるようになったぜ! 生活魔法ってぇのか? コレだけならもう普通に使えるようになったんだ。ただ……」
やっぱり、教える人が居ないせいで、生活魔法以上の事は難しいらしい。
まぁそうだよね。私があの時教えたのは、水と風くらいなもんだ。しかも攻撃系の方向子も命令子も教えてない。
「本当に、忘れててごめんなさい」
「いやしょうがねーだろ。あんな思いしたら、その前の事なんざ吹っ飛んじまうよ」
基本的に粗暴だけど、それでも心根は優しい人みたいだ。良い人だなジッゼさん。
私たちは喫茶店に辿り着くと、そこそこ良いお店に見えたから尻込みするジッゼさんの手を引いて中に入った。
「注文はお好きにどうぞ。それで、何があったんです? 性転換薬でも飲まされたんですか?」
ここには何回か来てるし、店長さんとも顔見知りなので手を振ってくれた。
慣れた私はジッゼさんをテーブルに座らせてから、話しを促しながらメニューを見た。
ふむ、いつだったか私がここで色々と喋ったカッテージチーズ付きのクラッカーがメニューに増えてるね。でも生クリームの入手か製造でつまづいてるのか、クリームチーズは無かった。
ジッゼさんはメニューを見てもよく分からないと言うので、私が適当に注文をして、それからお話しを聞く。
「…………たぶん、それだ。それを同じ傭兵団の仲間に、ふざけて飲まされたんだ」
聞けば、本当に性転換薬を飲まされたらしい。
あれはダンジョンの結構深い階層で出るアイテムなんだけど、ジッゼさんの傭兵団は百階層のボスからのドロップで『ジャックポット』って言うアイテムを手に入れ、それから性転換薬を入手したらしい。
ジャックポットって言うのは、そのジャックポットを入手したダンジョンのドロップからランダムで一つ、魔石と素材系アイテム以外のドロップが中から出て来る壺型のアイテムだ。
それと、ジッゼさんの所属する傭兵団は、その時のボスドロップからもう一つ、『ヘプタの水差し』って言う魔道具も入手してる。
これは液状のアイテムを中に入れると一回だけ、水差しの中身が入れた液状アイテムで満たされるって効果の複製系アイテムだ。
正直、この二つはどっちも宝くじ高額当選並のクッソ希少な超レアドロップだ。運勢がジャックポットしてやがる。
この二つを手に入れ、鑑定師に見せて効果を知った傭兵団は、性転換薬を十二本複製して、複製した十二本全てを売り払った。
本当ならダンジョンの五百階層以降で出るアイテムだし、そもそも換金用アイテムだったし、NPCにとっては効果が凄まじいので、相当な高値で売れて傭兵団はウッハウハだったらしい。
「で、複製したのは十二本。元の一本分を入れると十三本有って、有事の際に頼る換金用として手元に残していたソレを、酒の席で酔った仲間に飲まされたと」
「……うん。そんな感じ」
正直、あちゃーってなる。
二本残ってたら元に戻れたのに、ラス一をふざけて飲まされたのか。不運過ぎる。
「そしたらさ、なんか…………」
「予想以上に可愛い女の子になっちゃったから、皆さんの態度が変わっちゃったんですね?」
見ての通り、今のジッゼさんは可愛い。
ルルちゃんやタユちゃんや、幼神やアルペちゃんにクルリちゃんなんて言う、激カワ過ぎる女神級幼女に囲まれて慣れ切ってる私が「可愛い」と断言するくらいには、今のジッゼさんは可愛い。
「いやさ、別に変なことされてるんじゃ無いんだよ」
ただ、戦わせて貰えなくなった。
「そもそも、歳の離れた硬派な傭兵団だったんですねー」
ジッゼさんは見ての通り、十二歳前後の子供だ。
それでも気合いも負けん気もあったジッゼさんは、ベテランが十人ほど集う少数精鋭の傭兵団で可愛がられていた。だけど、ふざけて飲まされた性転換薬のせいで扱いが百八十度変わってしまったそうだ。
いまジッゼさんが着てる仕立ての良い服も、傭兵団の人達が買い与えてくれた物らしく、その他にもみんな、今のジッゼさんをまるで己の孫か娘のように扱ってるらしい。
しかも、間が悪い事に今のジッゼさんは生活魔法が自由に使えるようになってしまった。その事実も後押しして、ジッゼさんは傭兵団の戦闘員から飯炊き等のお世話係に変えられてしまった。
それもアレだ、新人に雑用をさせる感じじゃなくて、娘や孫が作った手料理を食べて一喜一憂するパパ的なノリで。
「別によ、俺が女になったなら、それはそれで別に良いんだよ。女になったって、俺は俺だからな」
そう言うジッゼさんは、別に男に戻りたい訳じゃないそうだ。
ただ、所属する傭兵団のみんなに憧れて、同じようにカッコいい存在に成りたかったから傭兵団に参加してるジッゼさんは、今の扱いが不満なのだ。
「飯炊きだって、雑用だって構わねぇんだ。親方達には感謝してる。俺みたいなクソガキを拾って鍛えてくれたんだから、恩返しに皆の世話役なんて喜んでやるさ。…………だけど」
剣を握ろうとすると、危ないと取り上げられる。
雑用を懸命に熟しても、仕事の成果を褒められる訳じゃなく、可愛い娘が一生懸命な事を無条件に褒められる。
食事を作っても、今までならダメな点を指摘してジッゼさんの上達を願ってくれたのに、今ではどんなに塩辛いクソ料理を出しても褒められる。……一回魔が差してやっちゃったそうだ。コレでも褒められるもんなら褒めてみやがれって。
で、褒められた。
「俺もう、どうして良いか分かんねぇよ…………」
うーん、申し訳ないんだけどさ、変化に戸惑って今も目を潤ませてるジッゼさん、普通に可愛いんだよね。
流石に性欲の対象になんて思ってないから、
助けてあげますねって言って、黒猫亭に連れ込んでナニかしたかも知れないね。六人がかりか八人がかりで。
いやジッゼさんは元男性だから、たぶん実際に幼女だったとしても、手は出さないと思うけどさ? でも私の感情と思考に、
それに、その場合でも騙しはしないよ? ちゃんと解決するよ?
別に男に戻りたい訳じゃないって言うけど、男に戻っても良い訳でしょ? なら私かルルちゃんかぺぺちゃんがどこかのダンジョンで性転換薬を探して来れば良いだけだし。
他にも、黒猫亭で鍛えまくって傭兵団の皆さんを超えても良い。流石に自分より強い相手を戦闘から弾けないでしょ。ジッゼさんが「え、俺より弱いのに大丈夫か?」とか言えば良いよ。
「えーと、ジッゼさんは、本当に男の子に戻らなくても良いんですか?」
「ん。……別に、大して実害無いしな。それにさ、扱いが変わったのは悲しいけど、大好きな傭兵団の皆から大事にされるのは嬉しいんだぜ? ただ完全に娘扱いされるのが嫌なんだ」
「…………あー、宝物見たいに扱われると、簡単に傷付く弱い存在だって言われてるみたいに感じるんですね?」
「……そ、そうか、そうだよ! うん、それだ! 俺たぶん、それが嫌なんだ!」
私の意見を聞いて、自分の気持ちを言語化出来たジッゼさんが何回も頷く。自分でも気が付いて無かったのか。
「そうだよ、俺はそんなに弱くねぇ。少しずつ強くなってたんだっ。なのに、それを全部無かった事にされんのが、俺は嫌だったんだな…………」
「頑張ってましたもんねぇ。私に魔法を教えて欲しいって頭を下げたのも、魔法を覚えて、みんなに認めて欲しかったんですよね?」
「……うん。あぁ、そんなんだよ。……あんたすげぇな、俺より俺の気持ち分かってくれて、なんか嬉しいぜ」
へへって笑うジッゼさんは、ちょっとぺぺちゃんみたいで可愛い。
「俺はさ、親方達が認めてくれんなら、別に女のままでも、本当に構わねぇんだよ。それに俺はまだ、好きとか恋とか、そう言うのもした事ねぇし。だったら女のままで、この先に男を好きになっても、そんな変わらねぇと思うんだよ。…………なんなら、傭兵団の誰かが俺を嫁にしてくれたって良い。傭兵団の皆だったら、俺は本当に嫁になって、女になっても良い」
だけど、だからこそ、『女になった娘のジッゼ』では無く、ちゃんと今までと同じ魂を持った『ジッゼ』を見て欲しい。認めて欲しい。褒めて欲しい。
多分それは、当然で当たり前の欲求。
「…………ところで、そのずっとスリスリしてるチビは、なんなんだ?」
「あ、
ちょっとシリアスさんだった空気だけど、ジッゼさんはずっと視界に入って気になってたらしい
自分のことだと理解した
いや凄いんだよ
正直ここ数日で、黒猫亭で宿泊客から一番好感度稼いでるの
この子は代償の対象にくっ付いてるだけで、この世にはこれ以上に幸せな事なんて絶対に何も無いと言わんばかりの、超絶幸せそうな笑顔を振り撒くんだ。
だから、供用空間でいつもニコニコして手を振る
幼神は代償が食料だけど、別に食べ物が食べれない訳じゃなく、この笑顔にやられたお客さんも、お菓子などを
同じ狐って事で、アルペちゃんとクルリちゃんとも仲良しだ。
「…………うん、可愛いと思う。俺も団の皆から、こんな風に見られてんのかな」
「まぁ多少は、そうだと思いますよ? ほら、この子を戦場に出すなんてって、少し思いません?」
「ちょっと思う」
本当に「にこぉ〜♡♡♡」って、「ほにゃぁ〜♡♡♡」笑うんだよこの子。
なんて言うか、アルカイックスマイルとは別のタイプの至高の笑みって感じ。恍惚な感じじゃなくて、まさに至福って感じ。
「俺もそいつ見たいに、着飾ってニコニコしてれば皆も喜ぶのかな。……強くなんの、諦めた方がいいのかな」
「んー、ジッゼさんは強くなりたいんですよね?」
「…………出来れば」
「ぶっちゃけると、私自身がメチャクチャ強いので、女の子でも強くて良いと思いますよ?」
「……うん、知ってる。あんたと結婚してる舞姫のこと、ダンジョンの戦いもあそこで見てたからな。あんたの事も少し聞いたよ」
「じゃぁ、どうします? 前にした約束の続きで、ジッゼさんのこと鍛えましょうか?」
前は片手間ならって教えたけど、流石にダンジョン事変で一年半、そしてその後も時間が経って二年も見えて来た今日まで放置してたツケはデカいだろう。
ジッゼさんが望むなら、黒猫亭で面倒を見て鍛えるくらいの事はしても良い。
「…………皆に、聞いてみてからで良いか? 勝手な事は出来ねぇし」
「もちろん。でも、もし頭ごなしに否定されたなら、私の所に連れて来て下さい。全員死なない程度にブチのめして、女の子が強いって事を教えてあげますから」
私がそう言うと、ジッゼさんは儚い笑みで苦笑した。
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