第109話 最強たる一端。
「そういやノノン、お前ってオレに家族のこと頼まねぇな?」
「ふえ?」
幼神の仕様を確かめたり、幼神自身を確かめて味わったりして早数日、私は見掛けたぺぺちゃんを誘って闘技場に来ている。
目的は単純に模擬戦。だだ『命懸け』って但し書きが付き、いつもと違って使う武器も刀じゃない。
この模擬戦の目的は、本来は武器らしい幼神、
ルルちゃんとタユちゃんの幼神である
けど私の
確かに、私の戦闘力が一番高まるのは刀装備じゃなくて杖術を使う時だ。それも隠し流派である
でも、私は杖術から離れて結構時間が経ってる。なので、いきなり使って十全にとは行かない。そのくらいには久しいのだ。
夢の中では師匠と杖術で戦ったけど、現実で杖を扱うのは、夢の後にヒュンヒュンさせてたあの時だけ。
だから
あ、ちなみに私はこの数日で
ねー
「家族のことって、ぺぺちゃんにお願いして連絡を取るってこと?」
「おう。オレたちジワルド産プレイヤーは、ログアウトすりゃ意識は日本に戻るからな。お前なら一も二も無く飛び付くと思ったがよ」
そんな色々があって模擬戦相手を探してた私は、 数日ぶりにログインしてきたぺぺちゃんに対して「ぺーぺちゃんっ、あーそーぼー♡」って声を掛けて闘技場に移動したのがつい先程。
そして辿り着いた矢先に言われたのが、冒頭のぺぺちゃんの一言だ。
「頼まねぇのかよ? 親に伝言をよ」
まぁうん。私だって、考えはしたよ。でも、無理だった。
確かにぺぺちゃんはリワルドからログアウトすればスグ日本へ帰れる、ジワルドから来たお客さん。だから私はぺぺちゃんに「お父さんとお母さんに連絡を取って欲しい」とお願いすれば、最愛の人にどうにか言葉を伝える事は出来るんだ。
でも、私は様々な理由からそれを無視した。いや、むしろ実行に移すべきでは無いと確信してる。
「えと、だってぺぺちゃんは…………」
その理由のウチの、まず一つ。
ぺぺちゃんは私と同じで、いや、前世の私と同じで体が不自由だ。
同じ病院に入院してて、私と同じく自由に動く事が出来ない女の子。
私もぺぺちゃんも体がロクに動かないから、会ったのはたった二回。どちらもぺぺちゃんが、私よりは多少体が動くぺぺちゃんが、看護師さんに押された車椅子に座りながら、私の病室にまで来てくれたんだ。
あの時の感動と、興奮と、……体が潰れてから初めて出来た、現実の友達が見せたあの素敵な笑顔を、私は今でも覚えてる。
だからこそ、そんなぺぺちゃんにお願いしたくなかった。
「--そんなぺぺちゃんに、なんて言うの? 動かない体で私の家に行って、私の両親を探して欲しいって? それで、タチの悪い悪戯かって、ふざけてるのかって、私の両親に怒鳴られるの?」
無理だよ。無理無理。私にそんなお願いは出来ない。
体が思うように動かない苦しさを、私は誰よりも知っている。この世の何よりも、私はそれで苦しんだから。
そんな状態のぺぺちゃんに、私のために病院を出て探し回って欲しいなんて、口が裂けても言えないよ。私はぺぺちゃんが大好きなんだから。
「……ノノンは莫迦だなぁ。半身不随で出歩けなくてもよ、メールやSNSくらいは送信出来るんだぜ?」
それもそうだけどね。でも、やっぱり無理だよ。
「もう、ぺぺちゃんは優しいなぁ。それでも異世界の証明なんて出来ないじゃん。ぺぺちゃんがお父さんとお母さんに、莫迦にしてるのかって文句を言われるの、私は嫌だよ?」
そう、それが二つ目の理由。私たちは異世界の証明が出来ない。
こんな世界があって、このリワルドと呼ばれる世界で今、私が幸せに暮らしてるよって伝えても、それがタチの悪い冗談じゃないと証明出来ない。
お父さんとお母さんにジワルドを始めさせて、その中で向こうの世界に居るらしい金色のワールドエレメントを探し出してリワルドに来て欲しいだなんて、どうやって説明するの?
オンラインゲームで特殊なモンスターに遭遇すれば、異世界に行けるんだよって?
私だって向こうに居る時、そんな言葉聞かされたら鼻で笑ったよ。
「それにさぁ、もう私が死んで、葬式も何も終わってるんだよね? そんな二人に、わざわざ私の死を思い出させて良いのかなって思っちゃうんだ。私が会いに行ける訳でもないし」
「…………まぁ、それもそーだな」
これが三つ目と四つ目の理由。
既に終わった明智真萌の物語を今更伝えて、二人に私を思い出させるのは酷だ。死人は所詮、死人でしか無いって理由が三つ目。そして、そんな事をしたって、私がリアルに会いに行ける訳じゃないって理由が四つめだ。
お父さんとお母さんがワールドエレメントを見付けたら、二人にコッチへ来て貰える。だけど、それにはまず異世界を証明して、説得して、ジワルドを始めさせた上でワールドエレメントを見付ける必要がある。
こっちのワールドエレメントは、ちょっと改変されたダンジョンに行けば大画面でワチャワチャしてる身近な存在になりつつあるけど、ジワルドに居る唯一のワールドエレメントは金の狼だけ。
しかもそいつは、私とぺぺちゃんがコチラに来た時の状況を鑑みるに、どうやらリワルドに送るプレイヤーを選んでいるみたいだ。だから、会おうと思って容易に会える存在では無い。
何やらテンテンさんが金の獣を探してたとか聞いたけど、…………もしかして、あの夢で伝えた内容が、本当にテンテンさんに伝わっているのかもしれない。ならば、それこそぺぺちゃんに頼む必要が無い。
テンテンさんが私の遺言を両親に伝えてくれてるはず。それで良い。それで良いんだよ。
異世界の証明とジワルドを始めさせる説得だけで骨が折れるのに、何処にいるのか分からないワールドエレメントを探し出す? 何それ、宝くじの確率の話しでもしてるの? 現実的じゃ無い。
そんな出来るかどうかも分からない不確かな方法に挑戦させて、その間ずっと両親を苦しめるくらいなら、私が我慢する。
私から会いに行けるなら、私だけが苦しむなら、何をしたって会いに行く。絶対に辿り着いて見せる。
だけど、両親が苦しむのは嫌だ。お父さんもお母さんも、達磨になった私を何年も愛し続けてくれた。そのせいで心がもうボロボロのはずだ。だから、これで良いんだよ。
「……うん、これで良いんだよ。だってリワルドは一方通行なんだから」
そう、リワルドのプレイヤーになった私は、日本に行けないんだ。
いや、世界の仕様と言うか、インストールされた情報からリワルドの性質を考えると、理論上は可能なんだ。理論上はね。
私はノノン・ビーストバックとして、日本の地を踏むことは出来る。そう、理論上は出来るんだ。現実とゲームの性質をどっちも持つ世界の生き物は、ゲームと現実のどちらにも存在出来る。
だから本当に、理論上は可能。
ただ、その方法がこの世界に存在してないだけで。
いやぁ、知りたくなったよ、こんな事実。
私の頭にインストールされた、世界の真実。その一端。
リワルドはジワルドをベースに進化する世界であり、最後にはこの世界だけでも完結出来るように進化してる最中。
だから金色のワールドエレメントが、向こうからリワルドの進化に必要な人材を数人、ジワルドからちょろまかしてる。けど、基本的に今のリワルドは「リバースワールド・オフライン」なんだ。
なので当たり前に、この世界の住人が向こうに行く手段なんて用意されて無い。精々ワールドエレメントが自分で世界を超えて、日本と言うか、地球に行く程度の事しか出来ない。
ジワルドプレイヤーがコッチに来れるのは、あくまでもゲームのキャラクターを介してるから。「プレイヤーキャラクター」って言う分解して運べる肉体情報を持つ存在に、VRシステムって言う意識の没入を可能とした機器があって初めて成立してるんだ。
超精度データのみで構築された、運び易く干渉しやすい肉体。
VRと言う、
この二つがあり、そこにワールドエレメントなんて神に等しい存在が多大な干渉をする事で、やっと世界を超えることが出来る。
しかもそれだって、ゲストプレイヤーとしてが限界。完全にコッチの世界に居る訳じゃない。私って言うイレギュラーがイリーガル過ぎただけで、ジワルドプレイヤーにとってリワルドはあくまでもゲームの延長なんだ。
ジワルドと違って制限らしい制限も無いから、えっちな事も出来るし犯罪もし放題だけど、ゲストプレイヤーはゲームキャラクターでしか無いから、コッチで子供は作れないし、老いもしない。
世界とチャンネルが噛み合ってない存在なんだ。
「まぁそんな
「あー、まぁな。クソ親父がオレに、見合いしろとか言い始めやがってよぉ」
え、マジ? ぺぺちゃん結婚するの?
「しねぇよ莫迦。誰が三十超えたオッサンに股なんか開くかよ。体が動かねぇからって好き放題言いやがってあのクソが。……オレもよぉ、もう向こうの体を殺してコッチに住もうかねぇ?」
「や、止めてよぺぺちゃん。ぺぺちゃんがリワルドの世界にちゃんと根付くのは嬉しいけどさ、だからってぺぺちゃんが死ぬのは嫌だよ?」
「もちろん最終手段だぜ? でもよぉ、もう面倒なんだよ。オレもいざって時の為に、昇華薬の準備でもしようかねぇ?」
うー、嬉しいけどさぁ。嫌だなぁ。
「はんっ、今はとりあえず、オレのリアルなんてどうでも良いだろよ。さっさと始めようぜ? お前の杖術、久々だから楽しみだぜ」
「そだね。……じゃぁ
私はずっと放置してた
今も結構なレベルで発情してて、私に抱き着いてスリスリと頬擦りしながら、頬を上気させて目が潤んでる可愛い女の子の手を取る。
ああ可愛い。今すぐ私を個室に連れ込んで、大事なところを擦り合わせたいんだね? 可愛いなぁ。
ねぇ
慣れてない人なら、これだけで人生を棒に振りそうな代償、その欲情を我慢する。
はぁ、あとで思いっ切り交尾しようね? 代償いっぱい食べてね?
「くぅぅ可愛いっ! だけど今は戦おうね? ねぇ
銀色の髪がかかるおデコにキスを落として、私は
「代償装・幼神が一柱、『
どちゃクソ可愛い私の
美麗な彫りが入っただけの、ただの棒。
純銀に輝くシンプルな見た目に、水を表すの波紋と舞い踊る鎖が共に彫られた狼の意匠。
グレイプニルとは、神話においてフェンリルを唯一捕縛出来た伝説の縄。
そして神話のフェンリルとは、『フェン』と呼ばれる湿地の一種に住んだ悪評高き魔狼の事。
だから多分、「濡」って文字と、湿地に住む狼を合わせて
うん、ピンクとやらはセンスあるなぁ。めちゃくちゃ気に入ったよ。
そして、武器化した
あれは鎖じゃなくて縄だったはずだけど、細かい事を言ったらゲームのアイテムなんて大体全部そんなもんだろう。
ちなみに、フェンリルの名前は正確に言うと
フェンリルだけで通じるけど、要は「フェンリル!」って呼ぶのって、「湿地に住んでる者よ!」って呼ぶのと同じだからね。ちゃんと狼まで付けないと、湿地に居る虫も鳥も全部、広義的にはフェンリルだよ。本当はちょっと違うけど、神話の名前って大体そんた感じであやふやだし。
「おっほぁー。めちゃカッコよくね?」
「だよね!
神格招来って言うのもよく分からないけど、グレイプニルって言うからには相当強い能力なんだろうね? 何せグレイプニルは、『猫の足音』や『鳥の唾液』を初めとした『この世に存在し得ない物』を集めて作った神具だし。
この神格については仕様書に書いてなかったので詳細は不明。
「だから試させてね?」
「はっは、九重流使うノノンは久々だぜ。精々オレも瞬殺されねぇように努力するさ」
名実共に、ジワルドで全流派中で最強だと言われた武術スキルである。
「じゃぁ、殺ろっか?」
「おう、殺ろうぜ♪︎」
地味に観衆が注目する闘技場の真ん中で、私は
ぺぺちゃんも大鎌を二本構えて、ケラケラ笑いながら戦意に満ち満ちている。
「到達者が一人、【屍山血河】ノノン・ビーストバック」
「到達者が一人、【双鎌妖精】ペペナボルティーナ」
観客も固唾を飲んで見守り、私たちの間にある空気はもう闘気に押されて歪んでる。
「死ぬまでよろしくね、ぺぺちゃん♡」
「妖精遊戯に弄ばれて死ね、ノノン♪︎」
◇
「うわっ、なにあれ…………」
「あのペペナさんが、一方的にボコられてない?」
「いやそんな事ないだろ。ぺぺの姐さんめっちゃ頑張ってんじゃん」
「いやでもボコられてんじゃん」
突然発生した到達者二人の模擬戦は、黒猫亭に泊まってる客の間に瞬く間に広がり、あっという間に闘技場の観客席に人が集まった。
いやぁ良かったぜ。ベガきゅんに会うため偶然来ただけだが、これ見逃してたら普通に泣いてたぞ俺。
「絶招、
「ぐぞがぁぁあッッ!?」
大先生と師範が殴り合い、殺し合う。ある種最高の娯楽。
「でもこれ凄いよね、この眼鏡さ」
「これなきゃ何も見えないだろうさ」
流石にこの広い闘技場の観客席を埋めるほどの人数は黒猫亭に泊まってないが、それでもダンジョンに潜ってて事態を知らない奴以外は、ほぼ全員がここに居るらしい。
居ないのは、宿の仕事があるウルリオとその手伝いくらいか?
だからまぁ、ただの商人等も含む一般人だって居るこの場じゃ、到達者である二人が本気で殺し合う様なんてのは、どれだけ目を皿にしたって動きが見えねぇ。早過ぎて何してるかわかんねぇんだ。
だから、闘技場の観客席には大先生が用意したとある魔道具が備え付けれている。
名前は確か、『見取り稽古の伊達眼鏡』だったか?
これを付ければ、動体視力だけが爆増して、二人の絶戦もしっかりと見えるって訳だな。
凄い魔道具だが、これを付けて戦闘は出来ない仕組みになってる。これ装備すると、その場から動けなくなる呪いがかかってるんだ。
むしろその呪いを代償にして、到達者の動きすら認識出来る動体視力を得てるらしいから、しょうが無い事ではある。だがこれ使えたらなぁって思っちまうよなぁ。
「絶招連打止めろボゲぇぇぇえええッッ……!?」
「やーだよ♡ 行くよ、
「クソクソクソッッ……!?」
そんな至れり尽くせりな鑑賞会。絶技と絶技のぶつかり合いを見ている俺らは、千階層よりも下の魔物を、モンスターをケラケラ笑って片手間で殺せるようなペペナ師範が、まさか一方的に嬲れるような展開になるとは思って無かった。
あれよぉ、見間違いじゃなかったらよぉ、あの銀の棒一本で大先生は…………。
なんかこう、……剣技も槍技も、その他色々使ってねぇか?
見えた限りじゃ、大先生がいつも使ってる刀術の他にも、師匠が使う技に似てる剣術もあり、後は槍と、蹴りと拳か? 他にも有るかも知れないが、俺には分からねぇ。
うしっ、後で大先生に直接聞くか。
「
あはっ、眼鏡あっても何してるか分かんねぇ事し始めたぞ大先生が。ありゃ何してんだ?
銀の棒をただ突き出してる技にしか見えねぇが、師範が死に物狂いで捌いてる様子を見れば、尋常な技じゃねぇんだろうな。
「
「ぢぐっ、じょぉがぁぁあっ……!」
師範がボロボロになってく。あっ、片腕が吹っ飛んだ怖ぇえっ。
なんだあれ、本当にただの突き技じゃ無いのか? なんで今の単純な突きを師範は食らったんだ?
なにか、二人の間でとんでもねぇ争いが起きてるのは間違いねぇが、俺たちのレベルが低過ぎて理解が出来ねぇ。
「奥義、
「ィぎッッ--!?」
「奥義
「ガッ--……」
「--終奥、
なんだなんだなんだ!?
今度は大先生なにをしたっ!?
大先生が今、棒を不思議な動かし方をしたら、師範の方が不自然に当たりに行かなかったか?
て言うか大先生やり過ぎじゃねぇかっ? 本気で師範がボロボロだぞっ!?
「まっ…………!」
「……絶招、
おわぁぁぁあっ!? 師範の下半身が千切れてぶっ飛んだっ!?
「--まだ行くからね?」
え、まだ殺るの? もうペペナ師範は…………。
「三歩破軍、
待て待て待て待て、師範がもうボロボロどころか塵になって来てんのはもう良いけどよ、流石におかしいだろ!
最後の瞬刃無双は俺も知ってるぞっ? 師範が使ってる鎌の技だろそれっ!
なんでただの棒で戦ってる大先生が師範の鎌術と同じ技が使えるんだっ!?
「九重流・絶招接続、二連抜刀銀世界式ッッ……!
あぁぁーー!? 師範が死んだぁぁっ!?
◇
「いやクソかよ」
「えへへへへへ楽しかったぁ♡」
「いやマジでクソかよ」
ぺぺちゃんを塵になるまで刻んだ私は、めちゃくちゃスッキリした気持ちで武器化したままの
「ぺぺちゃんも訛ってた?」
「はぁんッッ!? 九重流使ってるお前に勝てる奴なんざ、対お前用にガチメタ張ったPvPトップのアイツ位だろうがよぉ!」
「いやそんな事ないでしょ。私より強い人なんていっぱい居るよ」
「なんでソコだけ自己評価が微妙に低いんだよお前! やっちゃいました系主人公かぁっ!?」
いやいや、そんな事ないでしょ。
師匠が相手なら九重流でも五割負けるし、ぺぺちゃんが言う通りにPvPトップの勇者さんにも勝てない。と言うか私の世界ランクって三位から五位くらいをウロウロしてたからね? 上にまだ人が数人は居たからね?
私は強いけど、最強では無いよ。九重流は最強と名高いけどさ、私は違うもん。
そう、私は違うけど、私が今使った九重流。これはジワルドでも最強と名高かった武術スキルだ。
…………使い熟せればね?
カテゴリーは杖術だし、杖術は元々、棍術と相性が良くて相互に武術スキルを使える特性が有る。
けどさ、九重流はそれだけに留まらないんだ。
剣術、刀術、抜刀術、槍術、棍術、斧術、鎌術、魔術、そして杖術。その九種類、つまり
その代わり、九重流を修得するにはその九種類の武器術を全て、最低一流派ずつは修めて無いと、九重流は修得出来ない。
九重流とはつまり、九種類の武器で行う術理を重ねるって意味の名前を持った流派なんだよね。体術も九重流で使えるけど、そもそも蹴り技とかなら他の武器術でも両腕塞がったまま使えたし、修得条件にも含まれてないので名前にはカウントされない。
ちなみに、魔術って言うのは、魔法的な攻撃スキルの事じゃない。これも立派な無手で有りながら武器系に分類される特殊な武術スキルである。
魔力を武器として精製して扱う物で、火の玉とか水の槍とか作り出したりしない。
固めて鋭くした魔力を体に纏わせて、それを武器として敵を斬ったり殴ったりする武術であり、体術と似てるけど魔力を刃物にしたりするから、武器術に分類される。
ただコレ、肉体を武器化するのは便利なんだけど、武器の補正が使えないし、近接攻撃で体術くさい動きの癖にダメージがINT参照で、ステータスを完全に専用ビルドに組む必要があるから、凄い不人気なんだよね。
これも隠し流派で修得が面倒だし、修得の手間とスキルの強さ、その費用対効果に見合ってないので使い手が少ない。
斬ったり殴ったりしたければ武器持てば良いしね?
「て言うかソイツ強くね?」
「だよね。
「たしか、使用者のレベルとステータスで強さが変わるんだったか?」
「そうそう。主従リストに乗ってるし、多分召喚獣とか従魔と同じ扱いなんだと思うよ」
「ほーん? じゃぁ弱い奴が使えば、権能の強さは置いといても、武器的な強さも下がんのか」
「だねぇ。まだ神格って力は使い方分からないけど、現時点で間違い無く私の最強装備だね」
「ほぉぉ、山ほどヤバい武器持ってるお前がそこまで言うのか。……次のイベントで手に入るんだったか? オレも探そうかねぇ」
「良いと思うよ。この子たちは契約した時点で自分と契約者の相性を見て、最適な武器になるんだって」
「じゃぁオレが契約したら、鎌になんのか。流石に一本だよな? 二本ありゃ嬉しいんだが」
「そしたら二人探せば良いんじゃない? 契約の相性で選ばれる武器にムラが出るらしいから、二本とも大鎌になるかは知らないけど。…………て言うかぺぺちゃん、本当は大鎌一本の時の方が強いくせに」
「二本あった方が楽しンだよ」
うん、幼神って色々と面倒な仕様なんだよね。代償もそうだし、武器化もそう。
「イベントの徘徊ボスを殺ったら解放されて、周辺にランダムポップだったか?」
「らしいよ。その辺を迷子の幼女がウロウロしてるとか、可愛くない?」
「……お前ほんと、知らぬ間にガチのロリコンになったよな」
「えへへへぇ、ぺぺちゃん褒めないでよぉ♡」
「褒めてねぇんだよなぁ……」
え、ロリコンって褒め言葉では?(錯乱)
「つっても、オレも見付ける幼神が恋神ってシリーズだと、幼女と恋愛する羽目になる可能性もあんのか」
「どうだろね。一応この子も、代償にハッキリと性交って書いてあるけど、それは別に
「つっても常時発情だろ? そんなのほぼソイツとヤれって事じゃねぇか。武器なんだからずっと手元に置けるだろうしよ。……つぅか、妖精のオレと到せる相手ってなんだよ。クソ短小野郎じゃねぇか」
「
「んなの契約しねぇと分からねぇじゃん。もしかしたら
あー、なるほど。確かにそうだよね。
例えば直接、「幼神と性交」とか「幼神と婚姻、恋愛」が代償な可能性もある訳だ。呪いの装備的には無条件かつ無制限の愛情を
そしたら契約者は強制的に幼女趣味の性犯罪者ってレッテルを貼られるから、どちゃクソ重い代償だと言える。
それに恋神がその類ってだけで、他のシリーズならもっと普通に「使うと寿命が減る」とか「使う度に狂う」とかも有り得る。
良く考えると
「あ、
「…………えぇ? いや確かに名前に刀って付いてるけどよ、あの伝承って刀関係あったかよ? あれって
「どうだろね? 日本の伝承だし、討伐には刀が使われたんだろうし」
「いや
「んー、だから
「いやタユ公もシル公も刀使いじゃねぇか。伝承関係ねぇだろ多分。
どうかな。仕様書には全部書いてある訳じゃなかったし、バーラも「今明かせる内容は」って言ってたから、明かせ無い内容も有るんじゃない?
「まぁ良いや。ノノンはまだ時間あんのか? 時間あんなら、もう少し付き合えよ。九重流のお前は手札多過ぎて癖が固まんねぇし、模擬戦相手にゃぁ持ってこいだぜ」
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