もしかして、フラグですかね?④
カランコロンと音を立てて、喫茶店のドアが開く。コーヒーの
「ううう、虎の子をゲットし損ねてしまいました……」
席について注文を終えてもなお、セラは肩を落としていた。こんなに落ち込まれると、罪悪感がしないでもない。
「そんなに行きたかったのか、あそこ」
おしぼりで手を拭きつつ聞いてみる。するとセラはお冷を飲み干し、思いっきり息を吸った。そして、堰を切ったようにしゃべり始めた。
「そりゃそうですよ! こういうときにしか行けないんですから! 知ってますか? 輸入では限定版が手に入らないんです! 百歩ばかし
「分かった、分かったから……とりあえず、離れよう」
テーブルに乗り出し、鼻息を荒立てて熱弁するセラ。軽い気持ちで聞いたことを後悔した。スケヒトはおしぼりを使い、顔に飛んできた
「行きたかったのは分かった。そのつらさも少しは想像できる。けどな、いまは任務中だろ?」
「うっ!」
痛いところを指摘されたようで、セラは胸を押さえた。
「明日は学校がある。今日確認するべきは通学路なんじゃないか?」
「ううっ!」
「それに俺、青い店のポイントカードしか持ってないんだ」
「うううっ! って、最後の何ですか!」
ツッコミをするセラはもう元の調子に戻っていた。落ち込んだり、興奮したりとなかなか忙しい少女である。
「失礼しまーす。ブレンドコーヒーとケーキセット、お持ちしましたー」
ちょうどいいタイミングで注文の品が運ばれてきた。セラは笑顔でケーキとクリームソーダを受け取る。スケヒトも店員からコーヒーを受け取ろうとしたのだが、そこで絶句した。店員も目を見開いてフリーズしている。
「ん? どうかしましたか、スケヒトさん?」
ホイップクリームを口の周りにつけて、何も知らないセラが首をかしげる。
青天の
「スケヒトが……なんでここに」
ウエイトレス姿の少女がそう
「なじみ……」
スケヒトは少女を知っていた。少女ももちろんスケヒトを知っている。正確には保育園時代から互いに知っていた。
「こんな所で働いているなんて、聞いてない」
「んなこと……言った覚えない」
顔を赤く染め、そう答えるポニーテールの少女。店の制服には『
「お知り合いですか?」
もぐもぐとイチゴを
「ねえスケヒト」
「はい、なんでしょう……?」
「この女、誰?」
蛇に
「えーっと」
適当な返答じゃダメだ。明日になればセラが居候していることはバレる。居候している理由、何かいい理由はないものか!
「私はセラと言います」
考えているうちにセラが話し始めてしまった。やめろ、変なことは言うな。そう必死に目で訴えるも、セラはウインクをして続ける。
「スケヒトさんのご両親に拾われ、いまは家政婦として
「はあ、居候!?」
やばい。これ以上おかしなことを言われると、色々と面倒になる。
「ジャングルの奥地で軍隊に捕まっていた私を、お二人は助けてくれたのです。クリスタルな頭蓋骨をめぐっての戦い、未知との遭遇、友人との別れ、そんな映画一本分の大冒険がありました」
「……それは、大変だったわね」
すんなり信じていた。
「え? いまの信じんの?」
誰が聞いてもすぐ分かる嘘。それを信じた幼馴染が信じられない。誤魔化すことに成功していたにも関わらず、聞いてしまった。
「そりゃ、おじ様とおば様だもの。信じないわけないでしょ」
「俺の両親の認識、どうなってるんだ……」
「んー、考古学馬鹿?」
うちの両親も両親だが、なじみもなじみだった。
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