3泊4日

4日目朝。

場面はすでに帰るために皆がバスの方に集合しようとホテルのロビーに待機しようとしていたところだった。まだ、人が集まっていなかったが、基本的には男女共にクラスで1人は早く起きて他の奴を起こす面倒見のいい人がいる為全員の状況を把握できている状態だった。

ある2人を除いては。

大分人が集まって来てバスも到着したとい事でバスの方に移動する者も出始めていた時だった。

「先生ーー。りんがまだ来てませーん」

「え、鈴宮さんが?」

「どこにもいません。それに連絡が付かないんです」

「え、どういう事?まだ部屋にいるって事?」

「全く反応ないのでまだ寝てると思います」

「えぇぇ!!もう時間あんまりないんだけど!」

担任渋川が慌ている。

別のところからは、

「あれ、幸生いなくね?」

「あれ?ほんとだ」

「あいつがいないとか珍しくね?」

高河、優也、武士の3人が幸生がいないことについて話をしていた。

「ガチで見当たらないんだけど」

武士が周りを見渡して言う。

「あいつまだ寝てんじゃねぇか?でも、珍しいよなこう言うの」

「あ、確かに。幸生こういうことって意外きっちりしてもんな」

高河と優也がそう話す。

「ねぇ、そこの3人。貴山君知らない?」

担任渋川が高河達3人に質問する?

まず、口を開いたのは高河だった。

「いや、知らないっす」

「そお…じゃあ、あの部屋の2人が来ていないっことね」

「え、来てないんすか?」

高河が聞く。

「ええ、そうみたい。しかも、2人とも」

「昨日なんか合ったのかな」

「あったから来ないんじゃない?」

優也と武士がヒソヒソと話している。

「とにかく、起きてないなら起こしに行かないと」

渋川先生はそう言って合鍵を受け取ってエレベーターの方に向かった。

その頃幸生とりんはというとぐっすり熟睡中だった。


ピンポーン、ピンポーン。

「返事が無いわね。本当にまだ寝てるのかしら。仕方ない鍵を使いましょう。夜の事も聞かないといけないし、ちょうどよかったわ」

部屋の中2人。

スースー。

スースー。

ぐっすり熟睡中。

しかし、流石にインターホンの音で幸生の意識が少し戻る。

「ん…んん…」

だが、起きない。

ガチャ。

ん、なんか今ガチャって音したような…

幸生はやっとガチャという音に反応して意識を少し取り戻す。

「あなた達仲良く一緒に気持ちよさそうによく寝てるわね!!早く起きなさい!!」

俺はそのいきなりの大声で目を覚ました。

目を覚ました時俺は横を向いていたためまず目に入ったのがりんだった。だが、俺は瞬時にさっきの声の主がりんではないことを悟りハッと声のした方を向く。

「!!!」

そこに立っていたのは担任の渋川先生だ。

俺はあまりにもびっくりして口を開けたまま固まってしまった。

「ほら、起きなさい!!」

「え!!」

布団を思いっきり俺たち2人は剥がされた。

いや、それはまずいだって…

「!!!!ちょっと、あなた達その姿はどういう事??今よく見てみたら服がそこらへんに散らかってるし、どうして裸で同じベットで寝てるの!!もしかして、2人で如何わしい事でもしてたんじゃないでしょうね!!」

「ん…ん、んん??!!なんで先生が!!」

やっとりんが起きたか。まあ、そりゃあんだけこの人が騒げば起きるだろ。

「え、えぇ、えええ?」

りんめっちゃ驚いてるんだが。いや、いきなり自分たちの部屋にいたらこの反応が普通だろ。まさか、予備の鍵があったとは。ん、待てよ。先生がわざわざ起こしにくる状況って…まさか…

「事情は後で聞くから早く準備して部屋から出なさい。もうバス出る時間大分迫ってるんだから、急ぎなさい。あなた達以外のみんなもう下にいるわよ!」

いや、まじか。俺がそんな初歩的ミスをするとは。また、確かに久しぶりに気持ちよく眠れたからな…俺が起きれなかったのはそれが原因か。

やばい、早くしないと。俺は飛び起きた。

「はい、急いで準備して、下に2人で向かいます」

「大丈夫?任せたから。鈴宮さんもちゃんと服着て下に来るのよ」

そう言って先生は足早にこの場を去った。

先生のあの一言は無意識のうちに出てるのか。隣の人に大ダメージが入ってるようだけど。

起きてから、プライベートゾーンを隠すようにしてりんがずっと蹲るように恥ずかしがっている。

俺がりんの方をジロジロ見ていると

「あんまりジロジロ見ないで!」

と俺は叱られた。

「いや、でも、昨日あんなことやった仲だし…」

カァァァァ

「昨日は昨日。恥ずかしいものは恥ずかしいから。こっち見ないで」

「了解」

俺はそう言って、床に転がってたパンツを履く。あ、りんのやつ…

俺が手にかけようとしたら、

「私のは自分で拾うから大丈夫」

「あ、はい」

俺はさっさと制服を着て、荷物をキャリーケースの中にしまった。まあ、2人とも昨日のうちに大体のものはしまってあったからそんな慌てる必要は無いだろう。

でも、俺状況が状況で物怖じしてなかったけど俺真っ裸だったんだよな。しかも、女子と2人でそれを第三者に見られるとかめっちゃ恥ずかしい状況なんだけど。

そんなことよりさっさと行かないと。

りんの方はどうだ。

俺はりんの方に目を向ける。

「あーー、髪ボサボサ〜〜」

気にする必要ないな。

支度はもう終わってるっぽいし、女子としては身支度の方を気にするよな。

だが、急がねぇと。

「りん、もう行こう。時間見たらもう過ぎてるし」

「うん、わかった」

りんは部屋を出て行こうと荷物を持って歩き出す。だが、俺はそんなりんを止めた。

「昨日のあれのことについて確認したいんだけど」

「・・・」

りんは振り返って俺の方を黙って見るだけで答える気は無いようだ。

「俺たち2人って付き合ってるっことでいいんだよな」

そう、お互いに互いのことが好きだ。ということは行為中に伝えた。でも、付き合う話については俺たちは何も話していない。

「あんなことしておいて付き合わないなんて選択肢はないでしょ」

少し顔を赤くしながら恥ずかしそうにそう言った。

「なんかごめん。俺全然引っ張れなくて。昨日もそっちからだったし。これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

俺らの淡い物語自体はここで終わり。まあ、この後ある事後処理のエピソードを入れよう。


俺たちは結局遅れてバスに乗り込む。そこで言われたのは席は同部屋の2人で隣になるように乗るようにとのことだ。理由は人数の確認のためだそうだ。別にそれで普通は大きくは問題ないのだが、俺達には問題がある。1番の問題は俺たちは1番最後に乗るため余ってる席が少ない。その為、座れる席が限られている。しかも、男子の近くの席が一つも空いていない。俺死亡宣言だ。

「ねぇ、どこに座る?」

りんがちょっと困った感じで聞いてくる。

「りんが座りたいと思うところでいいよ。ほら、俺はもう変わらないから」

「あ、うん」

りんは空いている目当ての席に歩いて行こうとすると途中で舞夢に止められる。

「私達の後ろ空いてるじゃん。なんで前の方に行こうとしているの?」

りんは優子のいる方を羨ましそうに見ている。どうせ、振り切れないしみたいな顔をして諦めて舞夢の後ろの席に座ろうとする。

「俺、窓側座るよ。そっちの方がいいでしょ」

俺はそう言って窓側の方に座る。

俺はバスの窓縁に肘をかけ外を見た。

そして、心の中で思ったのが最悪だ。どうしてこうなった?俺達が寝坊したのが悪いんだけどな。いや、まず同部屋でって時点でこうなる定めだったような気がする。

なんか、りんが恥ずかしそうに舞夢と話してる。どんな会話してんだか。昨日の夜のことについて話してるのか?全部舞夢企みだったりしてな。笑えないわ。まあ、こうして俺たちの修学旅行は終わった。ほとんどの人は普通に楽しめた修学旅行だったんじゃないかと思う。俺はとても刺激的だったよ。

そして、学校に帰ってからが問題だ。

俺たち2人は後日呼び出され、先生達に散々に怒られた。元々はそっちのミスなのにな。でも、そのおかげで俺たち2人が結ばれたとも取れるから、まあ五分五分か。但し、いいように捉えればという話だ。

俺たちが怒られ終わってやっと修学旅行が終わったと言えるだろう。いや、みんなは帰って家に着いた時点で終わってるか。俺たちだけか、修学旅行に行って怒られたのは。他のやつが不祥事を一切起こさなかったとは驚きだ。みんな、平穏な修学旅行を送りたかったんだろうな。

でも、俺にとってこの3泊4日はとても濃いものになった。

ん、え?卒業したから浮かれてんなだって?べ、別にそんなことねーよ。浮かれてなんてねーよ。むしろ、これからだし。

こんな感じで俺たちの修学旅行は終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る