3日目①
・・・
3日目。
朝6時。
「・・・貴山君、貴山君!」
俺は自分の名前を呼ばれる声でハッと我に返り目覚めた。
俺はどうやらあの後寝落ちしてドアに背をつけて寝ていたようだ。今、俺の名前を連呼したうるさい人は担任の施川先生だ。
朝からうるさいな。
「貴山君、大丈夫?なんでこんなところで寝てるの?!」
そう言えばこの人俺たちの隣だったんだった。かなり注意しないとな。
はぁ〜。俺はなんでこの人に名前を連呼されなきゃいけないんだ。りんなら良かったのに…?!?!いや、あれだから、声が過ぎだから、あの声で目覚めたいと思っただけだから!あの可愛らしい女性の声が好きなだけだから!
「貴山君、本当に大丈夫?」
「あ、おはようございます」
「おはよう!ねぇ、大丈夫なの?何があったの?!」
「いえ、心配しなくても大丈夫です。元気ですから」
「いや、こんなとこで寝て大丈夫じゃないでしょ!本当に何があったの?」
朝から声が大きいな…
うるさい…もうちょい落ち着いてくれ。
「昨日部屋に戻ろうとして鍵かかってて入れなくてここで項垂れてたら寝ちゃってたみたいですね」
「部屋に入れなかった?」
なんか驚いた顔してるな。
「はい。何度も電話を掛け合ってみたんですけど寝てたみたいで反応無かったんですよ」
「他の人に助けを求めようと思わなかったの?」
「いや、みんな寝てると思ってこんな夜分に申し訳ないと思いまして控えさせてもらったんですけど…」
俺と先生が話している中。
りんサイド。
ガヤガヤ
ん、なんか施川の声が朝から聞こえんだけど…
りんは担任施川の幸生に話しかけている声で目覚めた。
「うるさいなー」
私は起きてすぐ意識がまだ朦朧としていたが部屋に電気がついていたので何かおかしいと思い目を無理やりこじ開けた。
「なんで電気付けっ放しなんだろう?あ…!!」
私は咄嗟に隣のベットを見た。
ポタポタ。
多分この時の私は本当に冷や汗を流していたと思う。
電気ついてるのはきっと私が寝落ちしちゃったからだ…そして、隣に貴山君がいないのは…あぁ〜〜舞夢の言ったこと間違って実践しちゃった。
貴山君に本当に申し訳ない…早く入れてあげないと!多分さっきからドアの前で声がするのは貴山君がドア前にいることを気にかけて渋川が事情を聴いてる状態なんだ!
私は急いでドアの方に駆け寄る。
あ、その前に電気消しておこう。そして、私の身だしなみもチェックしないと。えーと、あ、服が…早く直さないと…よし、これでオッケー。よし、ドアを開けよう。
ガチャ。
「あ、鈴宮さんやっと出てきた」
「お、おはよう先生」
「おはようなんて言ってる場合じゃないよ。貴山君昨日部屋に戻ってれなくて困ってたのよ」
・・・これ私どうしたらいいんだろう。
やべえ俺昨日にここに帰ってきてねぇ。今日帰ってきてる。ヤベェこれバレたら後々問題になるよな。誤魔化さないと。
「昨日どうしたの鈴宮さん?」
「えーと、昨日は2人とも友達の部屋に遊びに行ってて私の方が先に帰ってきて、私はベットで寝転んで休んでたらそのまま寝落ちしちゃって…」
あ、昨日俺が仮説したの当たってたんだ。
今のところ言ってることは間違ってない筈だ。このまま誤魔化せれば…
「えーと、今までの話から鈴宮さんが鍵を持ってた感じなの?」
「はい…」
「だから、自分入れなかったわけです」
「はぁぁぁ」
そんなため息つかないでくれよ。ため息をつきたいのは俺の方だよ。
「鈴宮さんはわざと部屋に入れなかったわけじゃないのよね?」
「うん、決して同じ部屋手間寝るのが嫌だったとか、変な事されないように警戒してたとかじゃなくて」
いや、それが本音だろ。俺と同じ部屋なんて嫌なんだよな。本当はそれが本音だよな。誰かさんがりんさんが俺のこと好きなんじゃないかとほざいてやがったがその線は今回の会話で消えたよ。
「変な事って2人の間に何があったの?」
俺の顔を見て聞いてくる。
俺は全力で顔を横に振った。
「「何もありませんでした」」
お互いを見つめる。
まさか、りんとハモるとは。
「あら、2人とも仲良いのね。じゃあ、鈴宮さんの単なるミスっことでいいのかな?」
「まあ、そういう事でいいです。俺気にしてないので」
俺は渋々答えた。なんで、おれが答えてるんだろうな。
俺はちらりとりんの方を見る。
ちょっと俯いている。後、少し顔が赤いような…この人すぐ顔赤くなるな。そういうタイプだったっけ?
「ほら、鈴宮さん、貴山君に謝りなさい」
「あ、ごめん…本当にごめん」
「いや、大丈夫だよ。俺が悪くなかった事もないし」
まあ、3日目の朝事件はこうして終わった。まあ、この事は学年中にすぐに広まった。不思議なことになんで広まったのか分からない。噂というものは怖いですな。
まあ、だからと言って俺とりんの話は終わってない。
「今日の夜は戻る時お互いLENEしよう」
「うん、そうだね。…怒ってないの?」
「いや、別に昨日みたいなことが起こったわけじゃないし、元々は俺がやたらと遅く戻ったのも原因だし」
「そっちがいいのならいいんだけど。今夜は私が外に寝よっか?」
「いや、それは困る。俺が女性虐待してるみたいに見えるから」
「分かった」
「あ、そうだ。スマホだけは朝飯中に充電させてもらおっと。夜充電できなくてもう2%しか残ってなくてやばいやばい」
今考えたら俺たち2人ってお互いのこと全然知らないよな。同じ部屋になったからと言って会話する機会が多いわけじゃないし仲がいいかって聞かれるとそういうわけじゃない気がする。でも、俺はもっと仲良くなれたらいいなとは思う。あっちにその気がないのなら諦めるがそうで無いのならもっと仲良くなりたいな。まあ、このめんどくさい状況も今日と明日で終わりだし、とりま頑張りますか。
あ…
「あ、そうだ、ありがとう」
俺はスマホを充電しながらりんに向かってお礼を言った。
「え?なんのお礼?私お礼されるようなことしてないよね」
「さっき事情説明する時、時間について言わなかったじゃん。流石にあの時間は遅かったから時間言うことになってたら俺小うるさくなんか言われたなって思って。だから、ありがとう」
「私君のこと部屋に入れさせなかった元凶なんだけど…よくそんなこと言える…」
ちょっとドキッとしちゃったじゃない。そういう、いい人アピールはやめて!
「貴山君って変な人だよね」
「正面からまじまじにそんな感じのこと言われるの中学以来だわ」
俺は真顔で返す。
「ぷっ、なんか面白い」
なんか笑われたんだが。
俺マジで今面白いこと言ってないんだが。
「フフフ」
まだ笑ってる。何が面白いのだろうか。ここでそれを聞いていいものなのだろうか。
いや、やめておこう。やっと好感を得れた印かもしれないからな。でも、ほっとくのもどうなんだろうか。俺はどう対処しようか。
「…あ、ごめん。もうごはんの時間だよね。ホールに向かおう」
「あ、うん」
俺たちは足早に急いで着替え、エレベーターの方へ歩いた。
俺たちは珍しく同じエレベーターに乗ってホールに向かう事になった。
・・・
沈黙が続く。
気まずい。俺沈黙苦手なんだよな。自分からわざと作ってるならあれだけどあっちがこっちを意識して作ってる感のある沈黙が我慢できない。話す事もないしどうしよう。しかも、あっちはドアの目の前にいるのに俺は奥の方にいるし、普通こういう場合隣にいるだろ、俺!
なんかいい感じだったのは気の所為か?そうだ!さっきなんで笑ってたのか聞いてみればいいんじゃないか?このタイミングしかないだろ。俺がそんな事考えていると
りんの方が先に口を開く。
「今日の朝ごはん何並んでるかなー」
え、俺に話を振ってる?いや、だって今エレベーターに乗ってるの俺たち2人だけだしな。
「なんだろうねー。昨日は何があったっけなー」
やばい、とんでもないクソみたいな返事してしまった。
「好きな食べ物とかある?」
そうだよ。こういう時って、「昨日はあれ並んでなかったけど今日はあれ並んでないかなー。俺あれ好きなんだよねー」みたいな感じで会話をすれば好感度持たれるような最低限の話ができたはずなのに〜。そして、りんは何が好き?って聞けば完璧じゃん。あー俺は何やってんだ。でも、俺特にこれといって好きな食べ物も無いんだよなー。どうやって答えよう…
「えーと…うーんと…」
ちょっと考えさせて。
俺が考えてるとりんが後ろに振り向いて俺を見つめる。見つめられると恥ずかしい。やめてくれ。考えがまとまんなくなる。
「あ、天ぷらは好きかな。特にかき揚げ。ご飯と一緒に食べると美味しくてー」
こんなんでいいのか?
「へぇ〜かき揚げ好きなの?」
「うん、でも結構気分で好きなもの変わるから…」
「気分で変わる…」
やばい、この反応まずくないか?よし、俺も聞けばいいんだ。ってなんで俺たち好きな食べ物の話なんてしてるんだ?
「えーと、好きな食べ物何?」
「私はー」
プシュー。
あ、着いた。
「あ、着いちゃったね。じゃあ、行こう。多分みんな待ってるから」
「あ、ああ」
俺はりんの声につられてエレベーターから降りホールに向かう。
返答を聞き損ねた。好きな食べ物なんだろう?ここまで来ると普通に気になるんだが。つか、最後まで言ってくれよ!
俺は心の中でそんなことを嘆きながらホールに入り朝食を取る。
「おー、幸生おはよう」
「お、おはよう」
優也と雄真が俺に挨拶する。
俺も返す。
「おはよう」
「幸生遅かったじゃん」
「いや〜戻ってからいろいろあってな」
「あーそれって幸生が部屋の前で寝てた事件だろ」
「!!!???なんで知ってる?」
「いや、誰かがそんな話を小耳に挟んだらしくて噂になってる」
「おい、雄真。それって本当の話か?」
「ああ、ほんとだけど。いや、俺たちはそれよりもその噂がガチなのかの方が知りたいんだけど」
「いや、ガチだよ。優也ほら、あの後だよ。みんな解散して寝ようと思って各自の部屋に戻ったじゃん。その後、俺は部屋に戻ったら入れなくて外で項垂れてたら寝落ちしちゃったんだよね」
「え、あの後そんなことあったの」
「あった」
「廊下で寝るって」
雄真が吹いた。
「いや、それが事実とかガチでやばいじゃん」
優也も笑っている。
笑いもんじゃないか完全に。
「じゃあ、幸生、あの人に嫌われてるってことになるのか」
優也お前前と言ってたことと真逆のこと言ってるぞ。
「まあ、仕方ないだろ。俺らだし」
「そーだね。完全対立のいい機会になったってことね」
雄真と優也が次々に述べる。
「いや、嫌われては無いと思う。だって今日、同じエレベーターで来たし、部屋の中で一緒にいる時普通だったし」
「え、それほんと?」
優也が俺に聞いてくる。
「ほんとほんと。これ事実」
俺はご飯を頬張りながら答えた。
「え、何どういうこと?なんでそんなこと起きたの?」
雄真が俺に問う。
「あちらさんが俺より先に戻ってたんだけど、寝落ちしちゃって俺のこと放置でそのまま朝になったっぽい」
「いや、天然かよ」
「まさか、天然属性を持っていたとは」
雄真、優也がそれぞれ天然発言を連発する。
「俺もびっくりだよ。そんな感じしなかったからさー」
「まあ、それっぽい感じが全くしなかったかと言うと…」
「うーん、悩むな」
優也と雄真が顎に手をあてている。
「まあ、俺の見立てだとありえた範囲だったけどな。まさか、現実で起こるとは思わなかったけどな」
全く今考えたら迷惑な話だよな。俺たち2人。俺たち2人別々の部屋だったらこんなこと起きなかったのにな。変な気も使わなくてよかったし。まあ、サービスタイムがあったのは他の男どもと一緒だったら起きなかったことだからよかったけどな。まさか、同級生に興奮を覚えてしまうとは俺も落ちたな。とんでもねぇ、童貞男だよ俺は。
あ、確認したほうがいいのか?噂のことについて。一応2人で確認と情報の共有をしておいた方がいざって時困らないもんな。
俺はささっと飯を食べてスマホに手をかけ…
あ、そういえばそうだった。今、俺のスマホは部屋で充電中だった。やばいやっちまった。このまま時間が流れていくのはまずい。だが、俺に連絡手段はない!つまり、詰んだ!いや、それほどのことが?もうだって広まってしまったわけだろ。もう手遅れじゃん。
俺はこの時、全てを諦めた。
朝食を取り終えた俺たちは部屋に戻る。
その途中俺はいろんな奴にすれ違いざま見られた。様々な奴にだ。恥ずかしいからやめてほしい。
知らん奴らにコソコソ何か小言を言われながらジロジロ見られる。最悪の気分だ。俺の今までの高校生活の積み重ねが水の泡だ。せっかく大人しくしてたのに今回の騒動で一躍学年で有名人になっちまった。もともと今回男女同じ部屋って言う話題性があったけどさー。てゆうか、部屋に入れなかったぐらいでこんな話題なるか?しかも学年全体でな。それはおかしい。話が飛躍してる可能性がある。
俺とりんがすでに夜に営みを済ませてるとか、もしくは逆に可哀想な奴みたいな同情と哀れみの意味が込めた表情とか。
考えられるだけでもいくつもあるな。部屋に行ってりんとこのことについて話し合わないとまずいよな。あ、でも、3日目のこれからの予定って確か…
俺は重大な事を思い出した。
そうだ、3日目の予定では確かあそこに行くんだったな。
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