2日目①

2日目。

朝。

俺は目を覚ました。

まだ、完全に目は開いていない。寝ぼけているような状態だ。視界がぼやけている。これを語ってる俺は何者なのか聞きたいが様子を描かないと内容が伝わりにくいので仕方ない。

完全に意識があるわけではないが確認できたことがある。俺はどうやら寝ている間に寝返りを打ってりんの方向を向いた状態のようだ。俺は流石に起きないといけないかと思い、目をしっかり開ける。そこには驚くべきことが俺の目に写し出されていた。

なんと、俺のすぐ目の前に俺のベットで俺の布団に入って寝ているりんの姿があった。りんは布団にうずくまりながら横向きでこちらの方を向きながら吐息を立てていた。

流石の俺も声を出して驚きそうになったほどだ。まさか、こんな展開が起きるとは夢にも思っていなかった。朝、いきなり起きてこんなことあると思ってなかったから一気に目が覚めたわ!いや、俺どうしたらいいんだ!待て、俺、冷静なれ。下手にここで騒ぎにしたらどうなるか分からない。落ち着け!そして、変なこと考えるな!同じベットで、しかも同じ布団の中に現役女子高生がいるとしても興奮するな!冷静に対処しろ!

と俺は頭の中で少し格闘することによって落ち着いた。

「・・・」

このままだとまずいよな。りんの顔が俺の顔のすぐ近くにある!流石にやばい。つか、近くで顔を見ると意外と可愛いな。俺今までこいつのこと可愛いとまでは思ったことなかったけど今初めて可愛いと思った。近くで見ると美人とかたまに聞くけどこれがそういうことなのか。いや、流石にこれは近すぎるけど。…寝顔可愛い…やばい、可愛いな、おい!俺の理性が!りんってこんな可愛いかったっけ?でも、今ならりんのこと可愛いという奴の気持ちが分かる気がする。確かに可愛い。

おっとそんなことより、りんが起きるまでにどうにか対処する方法を考えなければ。

俺はそう思ってそろ〜りと物音立てずに少しずつ体を起き上がらせた。俺は上半身が布団から出るくらいのところで行動を止めた。そして、考えた。より穏便に済ます方法を。いくつか、案が出た。

案:その1

りんが起きないように布団から音を立てずに出て、あたかもりんは最初からそのベットで寝ていたかのように見せかける。俺が同じベットで寝てたら流石に疑うから、最初からそんなことなかったかのように偽造する。

案:その2

りんを起こす。起こさないようにするのではなく逆に起こす作戦。起こせば、俺に下心があるなどのことで罪をかけられる可能性を無くすことができる。だって、俺から起こしたら意味ないじゃん。普通の人なら起こさないと考えるでしょ?だから、逆に起こしてあげれば俺は多分無事だろう。

案:その3

そのまま事態を放置し、俺は二度寝に入りりんが俺より先に起きるのを待つ。あっちが先に起きて「何故私はこっちのベットに?!」ってなってくれれば俺に罪はない事になるはずだ。俺のせいにでもされない限り。

総評。

下2つの案は成功確率は高いと思う。あっちは自分の見られたくない一面を見られてしまった事になるが多分大丈夫だろう。りんが単純に寝相が悪いだけだろ?多分。寝相が悪くて俺のところに来ちまったか、トイレとかに夜起きて寝ぼけて入るベット間違えたってところだろ?それ以外考えられん。ま、他にも考えられる可能性がないわけじゃないが漫画じゃあるまいしそんなことはないだろうと思う。え?なんで寝相が悪くて自分のベットにきたと思ったかって?それはなりんのベットの上に布団が載ってないからだ。俺からだとよくは見えんが俺とりんのベットの間に布団が落ちている感じの様子が見える。これはどういうことかというとりんは寝相が悪くて自分のベットから夜一度落ちていた。だがしかし、そこで自分のベットに戻ればいいものをりんは寝ぼけていたため俺のベットに入ってきた。そして、そのまま寝た。結果、朝こうなった。厄介この上ない状況だ。普通の男子高校生ならここは興奮してもいい場面なのかもしれんが。あ、だめだ、俺も一瞬理性失いそうになってるから他の奴のこと言えねぇわ。いや、あれはりんが間近で見ると想像以上に可愛いかったから!ってこんなことしてる場合じゃない。それより、案についてだ。まず、何故俺がその1の案に賛同しないかだ。いや、怪しすぎるからだ。起きた瞬間はそりゃ気づかないさ。でもな、すぐにバレる。そうなると下手に誤魔化そうとするとこいつなんか私に変なことしたんじゃと怪しまれるわけだ。だから、ここは一周回って開き直って起こしたり、そのまま寝てみたりして真実をりんに目の当たりにしてもらった方が誤解を招きにくいはずだ。起こす手はその典型的なものだ。分かりやすくて手っ取り早い方法だ。そのままにして寝る手は相手に気づいてもらう手だ。完全に相手依存の手だ。まあ、あと2つの案のどちらを採用するしかないだろうな。安全策とまではいかなくても俺が誤解される可能性は多少は低くなるだろう。まあ、りんが早々に起きなければ問題な…な!

「ん…」

顔をしかめている!起きそうなのか?!おい、それはやばいぞ。俺何もしてないぞ。いや、それでいいんだけどよくないんだよ。

「んー」

あ、起きた。りんはゆっくりと目を開ける。

なんかやばいな。あそことか。

「!!!」

りんは目を開けてすぐに視線に入った俺を凝視している。そりゃ、そうだろ。寝る時、こんな近くにいなかった奴がいきなり間近くにいたら驚くよな?いや、これは驚いてんじゃなくて起きたばかりで意識がまだ朦朧としてるのか?なら、まだ何か間に合うかもしれない。いや、もう間に合わないか。もう起きちゃったし。俺が考えてるうちにあっちの意識がしっかりする方が早いだろうな。俺は諦めた。そして、祈った。りんが誤解しない事を。

「え、なんで…?」

「お、おはよう」

俺は取り敢えず挨拶をしておいた。

「え、おはよう」

一応返ってきた。

「一応聞いておきたいんだけど何これ?どう言う状況?」

「起きてみればわかるよ。自分で起きて確かめて見たほうがいい」

俺はもうそう言うしかなかった。りんは俺のセリフを聞いて怪しそうな顔をしながら起き上がった。りんは手で身体を守るように抑えながら胸のあたりを一度見た。そして、俺の方に視線を向ける。

この状況まだマシな状況なのかもしれない。叫ばれたりしてたら一発アウトだった。いや、俺がネガティブに考えすぎのか?普通事情を話せば通じるよな。りん自身が寝相が悪い事を把握していれば別に何もないんじゃないか? いや、変な期待すると後で絶望が待ってるかもしれん。あまり期待しすぎないようにしよう。

りんはあたりを見渡して状況を察して赤面している。

「1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

りんは俺のベットにまだ座った状態で俺に話しかけてきた。

聞きたいこと?なんだろう?ここは私のベットじゃないよね?とかか?

「私、貴山君のベットにいるけど間違っても貴山君が私にエッチなことしたとかじゃないよね?」

「いやいや、してないしてない!そちらがいつのまにか勝手に入ってきただけだよ」

俺は必死に否定する。ここまで大袈裟にすると逆に怪しいか?

「えーほんとにー?なんか怪しいんだけど」

「絶対に手を出してないと約束する!もしも手を出しているようなことがあったら…どんな罰も受けよう」

俺は自信満々で言葉を放った。

じーー

りんは明らかに俺が怪しいと思っているような疑いの眼差しを俺に向けてくる。その視線痛い、ほんと痛い、だからやめて。つか、いつまで俺のベットにいるの?意外と気持ちいいとか?ま、別にどうでもいいんですけど。いや、どうでも良くないことだな。現役女子高生が俺のベットにいるってすごい状況じゃね?いや、この考えに至る俺が終わってるのかもしれん。今までの俺ならこんなこと思わなかっただろうな。なんだろうこの人とここにいるようになってから妙に意識してしまう。いや、当たり前か。男子高校生が女子を気にするのは当たり前のことか。気にしない奴は流石にやばいだろ。無神経過ぎるにも程がある。

ここでりんが口を開く。

「…ほんとにしてないならいいんだけど。もしも、してた場合はすぐに通報するから」

「うん、それでいいよ」

してた場合、しようとしてくる場合は?まあ、そんな細かい部分はどうでもいいか。つか、いつまで俺のベットにいるつもり戻らないの?そんなに居心地いいの?多分そっちのベットと変わらないと思うよ。

「ねぇ、今何時?朝っていつから?」

「えーと…」

朝って何?あ、朝食のことか?何時だったかな?

俺は予定を確認するために鞄の中にあるしおりを手探りで探した。

りんはやっと俺のベットから離れ自分のスマホで時間を確認している。そういえば今何時なんだろう?

「え…」

「どうしたの?」

「時間…」

時間?

俺は自分のスマホで時間を確認した。

え?!もうこんな時間なの?いや、俺が起きた時はまだだったはずだ。俺たちの問題が発生してもたついてる間にそんなに時間が経ったって言うのか?

え?今何時かって?もう6時半過ぎてるよ。え?いや、全然時間大丈夫じゃん?って思ってるだろ。俺は別に大丈夫だよ。りんは女子だからいろいろ支度があるだろ。だからだよ。

おっと、そんなことよりしおりしおり。

お、朝食の時間確認しないと。

ペラペラ

「何時だった?」

りんがしおりを読んでる俺に聞いてきた。

待ってろ、今調べてる。

「あ、あった。えーと、7時半からみたい」

「え、意外と早い」

「確かに…」

よかった!ちゃんと話しができてる!俺感激だよ!あんなことあった後だから普通に会話できると思ってなかったから何事もなかったかのように事が進んでいる事が嬉しいよ。俺涙出てんじゃね?いや、この状況で涙ってくそダセェ上にキモくね?いや、一応出てないか確認しておくか。出てない。よかった〜。

「早く支度しないと。見ないでね」

「分かってる」

俺は洗面所にりんが入っていったのを確認してジャージ姿から制服に着替える。うちの制服は男子が学ラン、女子がブレザーだ。今のうちに紹介しておいたほうがいいだろう。さぁ、さっさと着替えていつでも行けるようにしておくか。俺はそんな感じだった。

りんサイドに移らせてもらう。ここからは別に俺が聞いた話とかではなく別の部屋に行った時のような方式でお送らせてもらう。つまり、少しの間、りんが語り手を担う。ここで語ってもらわないとりんの思ってる事がわからないからな。

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