1日目③

りんサイド

「えーー、りんそれほんとに言ってる?」

「それやばくない?」

私はいつも行動をしている女子の友達のところに来ていた。

最初に驚いていたのは谷町 優子(たにまち ゆうこ)。次の子が山渡 有紗(やまわさ ありさ)。優子は1年の時からクラスも一緒で席も近いからかなり仲が良い。学校だと、2人で行動することもしょっちゅうある。

「さっきの話ってデタラメとかじゃないの?りんが同じ部屋が嫌で作った話とかじゃないの?」

今私に話しかけてきたのは花凛。なんやかんや気があう友達。

「いや、でも、一応事故だし、あっちもわざとじゃないし」

「いや、ガン見してたんでしょ?りんのが事故でも見たことことに変わりはないんだからあっちに罪を背負わせるべきだって」

「まぁ、確かにこっちに振り向かなければ良かった話だもんね。私が見られたのは私のせいじゃないよね?」

「なんか、りん自己暗示かけるように言ってるけど大丈夫?」

ちょっとクスッと笑いながら私に優子は話しかけてくる。

「実際反応とかどんな感じだった?ほら、こういうのって中々起きない経験じゃん。健全な男子高校生の反応って興味ある〜」

今、聞いてきたのは野方 里沙(のかた りさ)。この子も1年の頃から付き合いがある仲の良い友達の1人。あれ?なんで、私が語りやってるんだろ?あ、一応この物語のヒロインだからか。

「いや、お互い動きが停止したよ。あっちもこっちもこんなこと起こると思わなくて時が止まったかのようにお互い動きが止まって、今考えると面白かったなー」

「え、そういう問題なの?」

優子が突っ込む。

「え?」

「恥ずかしくなかったの?」

里沙が聞いてくる。

「え、いや、そりゃー、恥ずかしかったよ。流石に私も女の子だし」

「なにその流石に女の子って台詞」

「なるで女の子じゃないみたい」

みんながクスクス悪いながら里沙、優子の順で私にそんな言葉を投げかける。

へんなこと言っちゃったかな?

「りんはあっちのことどう思ってんの?」

花凛が率直に聞いてくる。

え?なんか語りが淡々としてるって?当たり前じゃん。幸生が頭でごちゃごちゃ考えすぎなんだよ。普通の人はあんなに頭の中いっぱいじゃないから。

「えー、今のところどうも思ってないけど」

「あ、そんな感じの評価なんだ」

「うん。あ、でも、いつもなんか知らないけど何かを心配してる感じがする」

「心配?」

「うん。何を心配してるかわかんないけど」

私と花凛の2人で問答が続いた。

「もしかして、りんのこと気になってて話しかけたかったりとかするんじゃない?」

里沙が私にあろうことか私が頭にないことを投げかけてくる。

「え?!私のことが気になっている?」

「あ、確かにそれありえるかも」

優子も同調する。

え、そうなの?この場合、私が鈍感なだけってことになるの?

「そんなことないって、2人して話が上手く何故か噛み合わなくてチグハグなんだよ。そんなことないって」

「え、それってあっちがりんのこと意識してるから緊張してるんじゃない?」

有紗が鋭く突いてくる。

「え…」

私はこの言葉を聞いてどんな顔をしてだのだろうか。多分口を開けて呆然としていたのではないかと後で振り返った。もしかしたら、顔を赤くしていたかもしれない。あ、なんかこの感じやだ。

「え、きっとそんなことないよ。女子の相部屋で戸惑ってるだけだって。結構優しく接してくれるし」

「それが好意を見せてる証拠なんじゃないの?」

花凛が横から入る。

「え、なになに。みんなはそういう目線で見てるの?」

「「「うん」」」

みんな頷く。

「みんな人ごとだからって…」

みんなが変にそんなこと言うとこっちが意識しちゃうんだけど。もし、これであっちが全く意識してなかったら私どうすればいいの?

「りんはどう思ってるの?彼のこと」

優子が私に聞いてくる。優子らしい感じで聞いてくるところがなんかホッとする。

なんか興味があるような無いような、それでいて、攻める姿勢で話題を逸らす感じで聞いくる。

「私の印象は優しそうな感じだなって思った。教室だともう少し活発的な感じだけど部屋にいた時は全然そんなことなくおとなしい感じだったよ。ずっと何かを心配してる感じだったし」

本当に何を心配してるんだろう。ちょっと気になる。夜寝る前に聞いてみようかな。

「あ、でも、2人で部屋でのルールを決めた理由はちょっとゲスかったかな。言い方が」

「言い方?」

「うん。後で何か起こると困るからだって」

「そんなでもなく無い。あっちからしたら当然じゃない?」

花凛が少し否定を入れる。

「え、そうかな?」

「だって、あっちからしたら濡れ衣を着させられたりしたら困るし、何事もなく終わらせていきたいのが本音っていうことじゃないの」

「え、でも、それだとりんが好きとかそう言う話なくなっちゃうけど」

里沙がそこに突っ込む。

あ、確かに。

「まぁ、そんな問題はどーでもいいんじゃない。りん本人が解決していくしかないし」

花凛がフォロー入れる。

意外とこう言う時に花凛はフォローを入れてくれる。だから、気があうところがあるのかもしれない。

「あ、そう言えば、ルームキーを渡されたんだけど、部屋に帰りたい時どうする気なんだろう?」

「え、鍵の管理は適当なの?」

花凛が聞いてくる。

「うん、あっちが投げていったんだよ」

「じゃあ、りんに所有権があるってことなんじゃないの」

「そう言うことでいいのか?だって、必要な時困るでしょ」

「必要ないんでしょ」

「あーそうゆうこと」

「そこ納得しちゃダメでしょ」

私と花凛が話しているところに優子がツッコミを入れる。

「連絡とかできるの?」

優子が私に聞いてくる。

「え、ちょっとスマホ見てみる…あ、連絡する方法ないわ」

「LENEのクラスグループに入ってるでしょ。そこから…」

「えーわざわざそんなことしないとダメー?修学旅行の間だけだよー」

「そうしないと貴山くんが困るでしょ」

「いやー、きっと困ってないよー。今までの行動からいってそうだよー」

なんか私優子には甘えちゃう態度とっちゃうな。

と私はこんな感じで時間を過ごしていった。私の部屋の話題だけでも大分時間を費やした気がする。それより、本当に私より貴山くん先に部屋に戻る形になったらどうする気なんだろう。

と少し心配が残る中私は過ごしていった。



戻って幸生サイド

「ふー」

あの後、散々みんなでトランプやらゲームのマルチやらが盛り上がって馬鹿騒ぎになっていた。

まだ1日目だよな?初日からこれで最後まで持つのか?最終日らへんになるとテンションがさらにおかしくなると思うから前半戦はなるべく消費しないようにしないとやばいよな。みんな寝る気配ないし、俺もう眠いんだが。誰も言わないから俺が言うか。

「俺そろそろ戻って寝るわ。流石に寝ないとこれから身体が持たんから」

「お、そうか?っめもう12時過ぎてんな」

俺の言葉に誰よりも反応したのは高河だ。

こういう時助かる存在だよな。

「俺はまだいけるけどみんな寝るなら俺も寝よ」

「えー、夜はこれからだろー」

優也、雄真の順で言葉をだす。

「ま、まだ、3時とか回ったわけじゃないからいけるっしょ」

高河が雄真の言葉を肯定する。

流石に勘弁してくれ。俺はそうでなくても心配ごとのせいで疲弊してるんだ。睡眠ぐらいはゆっくりさせてくれ。

「俺は寝るわ。みんなおやすみ」

「おやすみ…って幸生、ルームキー渡したんじゃなかったっけ?」

優也が鋭いところを突いてくる。

「あ、そう言えばそうだった」

「それじゃあ、部屋に入れなくね」

「あ…ほんとだ」

「どうすんの?」

「あっちが帰ってくるのを待つしかないな」

「あっちの人のLENE持ってないの?」

「多分持ってないな。スマホ見てみる…持ってないわ」

「え、どうすんの?」

「いや、待つしかないでしょ」

こういうリスクを忘れてたな。もうちょい鍵についてもルールを設けるべきだった。さっさとあの空間からいなくなりたい一心だったから焦って忘れてた。

「もしかしたら、あっちは幸生と寝るのが嫌で戻ってこないかもしれないけど大丈夫?」

その可能性は考えてなかったな。つか、その可能性ありえるから怖いな。もう、変態扱いされてるかもしれないからな。詰んだな。

「今、クラスのグループ入ってるならそこから登録すれば?」

「…こんなことのためにか?ちょっと不自然じゃないか?」

「何意識してんだよ」

「いや、男だろうと女だろうと俺はそうゆうことは気にするぞ。俺からLENEの登録を申し込んだことの方が少ないぞ」

「別にあっちも気にしないって。幸生のことなんてどうも思ってないって」

俺はなんか知らんがちょっと傷ついた。

なんで、傷ついたんだろうな。分からん。

「とりあえず待つよ。いつまでたっても来なかったらグループから登録して連絡を取ってみるよ。まぁ、ちゃんと反応してくれればどうにかなるだろ。反応がいつまでも来ない場合は…ここに戻ってくるかもしれん。高河よろしくな」

「あぁ?リア充が!戻ってくんじゃねぇ」

高河がすごい顔で俺にそんなことを言い放ってくる。

「いや、ただ同じ部屋で寝るだけだから」

「それを平然と言える幸生は凄いよな」

なんか知らんが優也が関心している。

そんなに凄いことか?当たり前のことを当たり前のように言っただけだが。なんか、前もこんなことがあったような気がする。俺そんな凄い事してるか?全くそんな気はしないが。

「幸生が俺たちの所に来る時には多分みんな寝てると思うから来ても無駄だと思うよ」

恭輔がフォローを入れてくる。

それは高河の言葉をフォローしたのか。それとも、こいつらを信用するなってことか?どう捉えたらいい?俺の経験から言ったらこいつらは後者の方で捉えるしかないが。

「じゃあ、戻るわ」

「おう、また明日」

「まあ明日」

「おやすみ」

「おやすみ」

優也と恭輔に別れをつげ、俺は部屋を出て行った。


俺が廊下を歩いているとこんな時間でも盛り上がってる部屋も多くある。逆に妙に静かな部屋もあってちょっと不気味に思った。と言っても何人かが誰かの部屋に集まって固まっていれば当たり前の結果か。

たまに一切音がしない部屋がめちゃくちゃ続くゾーンがあったのは気のせいってことでいいか。

ふぁ〜

流石にこの時間になれば眠いな。俺はいつもこの時間には寝てるからな〜。そう言えば、りんはどうなんだろう。きっと待つ形になるとは思うが、いつもどのぐらいの時間帯とかに寝ているのだろう。今は修学旅行だし、いつもの時間は当てはまらないか。俺もいつもより遅く就寝に就こうとしてるし、みんなもそうだろうな。

あれ?今1つの可能性が出てきたんだが、もしりんが俺と寝るのが嫌であの部屋に戻らず、他の人の部屋で寝ることにしたらどうなる?連絡も取り合えない状況だから黙ったままそこに寝に入ってしまうのではないだろうか。そうなったら、俺の元にルームキーが届くことはないという事になる。そうなったら、俺は部屋に入れず、目の前で地団駄を踏んでいなければならない。すでにもうこの時間に寝てしまっていたら、俺がLENEの友達に追加して連絡しても気づくこともないだろう。

そうなると本格的にやばいな。俺がりんを待っている間に他の男子どもが寝ちまって、俺が訪ねても反応がなくて俺は寝床を完全に失うということもありえる。

完璧に失敗した。ルームキーのこともしっかり話し合って決めておくべきだった。

はぁ〜

今更後悔しても遅いか。もう祈るしかねぇな。ちゃんと帰ってくるのを。…あんなことあったからな。帰ってこないかもしれない。噂じゃ、自分の部屋が嫌で他人の部屋に行って遊んだ後そのまま寝るなんてことはよくあるらしいな。

あ、エレベーター。もうここまで来たか。なんかもうちょい粘りたい気分な気もしなくはないがいいか。つか、あのタイミングで抜け出してこなかったらいつまであそこにいたことか。あんまり遅い時間に戻るとあちらさんが先に戻っててすでに就寝中で俺に気づかないなんてことあるよな。あ、それ1番やべーパターンじゃね。おい、早くエレベーター来いよ。さっきはあんなこと言ってたが今度は急がないといけない理由を見つけた。さあ、早く来い!…中々来ないな。…お、やっと来た。

エレベーターが来たので俺は乗り込み、2つ下の階にセットし、ドアを閉めた。

あ、そう言えば、途中で女子のいるフロアを通るんだよな。ワンチャン、ばったり出くわしたりして。この小説一応恋愛モノだし、そういうおいしい展開があってもいいんじゃないか?とか、思ってるうちに通りすぎて行ったわ!やっぱ、現実はそう甘くないな…って、俺は何を期待しているんだ!俺ってそんなにそういうのに飢えてたっけ?あの人ことそんなに気になってたっけ?なんなんだ?どういうことなんだ?

と思ってると着きやがった。まあ、そんなことどうでもいいか。ちゃんと、部屋に帰れて寝ることが出来れば。

俺はこんな感じで部屋に戻っていったわけだ。

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