江戸時代

第12話 関ヶ原斬牛刀

 これは、天下分け目の戦いだった関ヶ原の戦いを今一度再検証した試みである。


 大阪城で石田三成が軍議をしていた。

「どうやら、徳川家康殿に豊臣家への反意があるようです」

 家臣がいうので、石田三成は笑ってしまった。

「家康殿もか。実はこの三成も、いつか豊臣家を倒して天下人となろうと狙っているのだ」

「三成殿もお人が悪い。まさかそんな心積もりだったとは」

「ふっ、この石田三成とて、まだ下剋上をあきらめたわけではないぞ」

「すると」

「ああ、徳川との合戦に勝ったら、豊臣家に代わってこの三成が天下人となろう」

 あはははっと石田三成は笑った。


 石田三成のところに徳川家康からの書状が届いた。

『石田三成殿

 天下のことを相談したく、関ヶ原でお待ちしたい。豊臣家すでに衰え、人臣の気持ちは離れている。もはや、天下に人物は、石田三成殿とわたし徳川家康しか残ってはいない。そこで、三成殿と家康の一騎討ちによって天下のことを決めるべきであり申し候。三成殿にその心積もりがあるなら、この家康は関ヶ原でお待ちいたしましょう。徳川家康より』


 石田三成はいった。

「一騎討ちの挑戦状だぞ」

「来ますかね、家康殿は。家康殿に一騎討ちの度胸などおありなのだろうか」

 家臣の発現に三成は考えて答えた。家康という人物を思い描く。

「来る。家康は来る男だ」

「一騎討ちにですか」

「ああ、家康は来る男だ」

「どうせ、、一騎討ちとは名ばかりのだまし討ちに決まってますよ」

「いや、家康は本当に一人で来る男だ。この石田三成も、一人で行く男だ。天下を狙う男とはそういう男なのだ。家康が本気で天下を狙っているなら、家康は一人で来るだろう」

 石田三成のこの言い方に、家臣たちは心労で倒れそうになってしまった。。

「石田三成殿、この度の徳川家康との合戦、いったい何人で行きますか」

「もちろん、おれ一人だ」

「三成殿は本当に一騎討ちをお受けになるのですか」

「むろんだ」

「天下分け目の戦いというわけですな」

「そうだ。この一騎討ちで天下が決まる」

 関ヶ原の戦い。

 西軍ひとり 対 東軍ひとり。

 観戦にやってきたもの、西側十四万人、東側八万人。

 みんな、飯を食い、酒を飲み、どっちが勝つかの外野解説に明け暮れた。

「まず、石田三成が一人で来るかだろう」

「三成にそんな度胸があるとは思えないなあ」

「徳川家康は一人で来るだろうか」

「あれも、そこまでの武人ではあるまい」

 みんなが茶化していると、天下を狙う二人の男がやってきた。

 徳川家康は朱備えだ。

 石田三成は伊達陣羽織だ。

「やはり、家康は来る男だったな」

 単身で合戦にやってきた石田三成はいった。

「おうよ。三成、おれはおまえを見直したぞ。まさか、石田三成が来る男だったとはな」

 武器は。それぞれの持ってきた武器は何だったか。

 徳川家康は、隠し筒に斬牛刀。

 石田三成は、鎖鎌に火薬玉だ。

「決まりはわかっているな。どちらか一方が死ぬか、逃げるか、まいったというまでだ」

「わかってるに決まってるだろ。うるせえ、くそじじい」

 石田三成が挑発すると、

「なめるなよ、あおびょうたん」

 と徳川家康も言い返した。

「勝った方が天下を取る。異存はないな」

「ない」

 そして、天下分け目の関ヶ原の合戦が始まった。

 お互い大将一騎のみの一騎討ちである。

 家康は初手から隠し筒を撃った。

 しかし、三成はこれをかわした。

 三成は火薬玉を投げたが、これも外れた。

 鎖鎌と斬牛刀の戦いになり、家康が石田三成をぶった斬った。

 観客は大声援だった。


 こうして、関ヶ原の合戦に徳川家康が勝利したことにより、徳川家康は天下人となり、江戸幕府を開いたのである。

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