幕間 その2

 草木一本生えておらず、黒く焦がされゴツゴツとした斜面が拡がっている。

 見上げれば空は赤黒く、臭えば異臭が鼻を突く。

 そして眼下には、絶え間ない噴火によって流れた溶岩が、冷えて固まっていびつな大地を形成している。

 もし、この場所に普通の人間が近づこうものなら、焼け付くような空気と、硫黄の、腐った卵ような臭いが体内を焦がしてしまうだろう。

 死が漂う土地。生きとし生けるものを拒絶する世界。まさに現世に顕現けんげんした灼熱地獄そのもの。

 ここは魔族領最奥部、不死の山インモリタル・モンテムであった。

 そして、その中腹を勇者一行は行軍していた。

 と、相当な疲労が滲む過疎細い声を一行の一人が吐き出す。

「……て、転移点は、……まだなんですか」

 先頭を進んでいた勇者エルフィンの耳に、背後から辛うじてそれが届く。

 彼は歩みを一旦中断し、一行最後尾にいた彼女に駆け寄り肩に手を置いた。

 それは、ほうほうの体で皆に追いすがっている僧侶サンドラだった。

 彼女は年相応の小さい体に、聖教会高位僧が着る戦闘用防魔法衣を身に纏い、その付属フードを目深に被り、口元も対毒耐性の詠唱文を施したスカーフで覆い隠している。

 それらは、この劣悪な環境から身を守るためのものであったが、この厳しい登山には、むしろその厚着が、文字通り重しになっていた。

 そのため僧侶サンドラは、聖属詠唱術の媒体となる儀礼処理済み宝銀が施してある聖杖を、役目どおりに杖づかせて、今にも倒れこもうかという有様であった。

 無論、一行の中では唯の人間に近い彼女が、何の対策もなしこの場へ踏み込めば、それこそ死を招くため致し方なかったのだが。

 そんな彼女の口から、はぁ、はぁ、という疲労の息遣いが洩れ、勇者エルフィンは気が気でなくなり、目指す彼方を仰ぎ見た。

 目的地である夢幻世界への転移点、活火山不死の山インモリタル・モンテム山頂は遥か先。

 それに、今、辛うじて歩けているこの山道、というよりただの岩と岩の間も、元より人が歩ける様なものでもなく、登れば登るほど程、前途もさらに困難となる。

 勇者エルフィンは苦渋を浮かべた。

「サンドラ。もう無理をするな。今ならまだ…下界へ引き返せる」

 申し訳なく、苦々しく、だが多分に本心も含ませ彼は呟く。

 それに僧侶サンドラの顔が一瞬で歪む。

 僧侶サンドラは、攻性詠唱術は苦手としていたが、治癒詠唱術や浄化詠唱術はもちろん聖属錬金詠唱術、防御詠唱術などを行使でき、あまつさえ聖教会詠唱術奥義までも会得している若き天才なのである。勇者一行にはなくてはならない、サポートのエキスパートであった。

 しかし身体能力に関しては、

 精霊の加護を受けた勇者エルフィンを始め、

 伝説級の傭兵である老戦士ヴァルター。

 人側でありながら魔力耐性を持ち、火竜の籠手を使って魔炎を操る武闘家カレン。

 孤高なる森の一族エルフである賢者フローネ。

 確かに勇者一行に加わるだけあって、人並み以上には優れていたものの、そんな化け物じみた身体能力を持つ勇者一行に彼女は付いて行くのがやっとだったのである。

 勇者エルフィンは、僧侶サンドラが身を削る思いでこの旅路にここまでついて来てくれていたことに、心底感謝していた。だが同時に、これ以上寿命を縮める真似をして欲しくない、とも思ってもいた。

 何よりこれから向かう先は、渡れば二度と帰れぬ死地なのだから…。

「ヴァルターも王都で、傷を療養しているのであるし」

「嫌です! 決してエルフィン様のお傍から離れません!」

 エルフィンの気遣いを、サンドラは頑なに拒む。

「…サンドラ」

「…………あんな、は、破廉恥な人と残りたくないです」

「……」

 伝説級の傭兵ヴァルター。

 彼は勇者エルフィンの旅の初期メンバーで、幾百もの戦場を渡り歩いた古つわもの

 あらゆる武具の扱いに長け、魔竜クラスの魔物も一刀に斬り伏せる実力を持つ大戦士バトルマスターである。

 ただし、底なしの情欲を持つエロジジイでもあった。…特にサンドラが一番のセクハラ被害を受けていた。

 ヴァルターは、ギガソルド軍の最後の拠点悠久の迷宮ラビリンタ・マエタニフェの戦いにて、夢幻四天王が最後の一人、自称魔王ギガソルドの愛妾アラクネのゾゾの毒撃を受け致命傷を負っていた。そのために王都の聖教会医療院へ残して来たのだが、サンドラはそのエロジジイを激しく忌避していた。

「………だからと言っても、この先は」

「よっとっ」

「あわっ!」

 と、サンドラの身体が突然、宙に浮く。いや持ち上げられる。

 それは武闘家カレンの仕業だった。

「カ、カレン様…」

「あたいが山頂まで担いでってやるよ」

 カレンは、サンドラをまるで麻袋の様にちょこんとその高い肩に担ぎ、快活に笑う。

 彼女は、この活火山不死の山インモリタル・モンテム中腹、空気が薄く魔力も充満し、硫黄や火山ガスが立ち込める劣悪な環境にても、いつもと変わらぬ肩だしの異国風の武術服に、炎の様に紅い髪をポニーテールをなびかせ、さも平然としていた。

 カレンは天性の魔力耐性持ちである。生半可な攻性魔法では傷一つ付かず、おまけに人間としてもずば抜けた頑丈さと身体能力を誇っていた。

 勇者エルフィンが初めに彼女と相対した時も、自身に精霊の加護がなければ、太刀打ち出来なかったかも知れない。

「……無理をなさらないで下さい」

「無理なもんか。あんたみたいな小娘、羽毛の様に軽いよ」

「小娘じゃないですっ! れっきとした神官です! じ、自分で歩けます!」

「そんなヘロヘロで虚勢を吐くんじゃないよ。…なんだい? あたいに担がれ山頂に向かうのと、独り下山してエロジジイに無い胸でぱふぱふ強要されるのとどっちがいいんだい?」

 そう言って、己の豊満な胸を強調するカレン。

「…な、…い、…胸」

 サンドラは、絶望の色を浮かべる。

 ハハッ、とカレンはまた快活に笑うと、

「ここまで苦楽を共にして、野暮なこと言うじゃないよ」

 そう目を伏せエルフィンに紡いだ。

「…あたいらは、今までのために戦って来たんだ。最期まで付き合わせなよ」

 エルフィンはカレンの釘を刺す物言いに、ふと言葉に詰まらせる。

「エルフィン様、私は絶対に引き返しません! どこまでも付いて行きます!」

 カレンの肩上で言葉強く紡ぐサンドラ。その決意は本物ようであった。

「ほれ、エルフィン。ヴァルターにぱふぱるするくらいなら、あんたにぱふぱふしたいって言ってるよ」

「い、言ってないです!」

 顔を真っ赤にして抗議を始めるサンドラ。

 カレンはニヤつきながら、そんな初心うぶな少女をからかっていた。

 エルフィンは、そんな二人の、生まれも違い、歳も違い、職業も、育ちも、何もかもが違う二人の、時折垣間見せる親密さに不思議な縁を感じた。

 彼女らは、自分と出会わなければ、この戦いに参加しなければ、袖擦り合うことすら無かったのである。

 そんなことが頭をぎり、ふと苦笑した。

「なに薄ら笑ってんだい」

「いや別に」

「やっぱ、ぱふぱふされたかったのかい?」

「ち、違うって!」

「……も、申し訳ありません、エルフィン様。私ではおそらく至りません…」

「何が!?」

「話は済まんのか?」

 凛とした声が火山の熱風にのった。

 それはエルフの大賢者フローネであった。

 彼女は、エルフ刺繍の鮮やかな羽織を纏い漫然とたたずんでいた。

 後ろ手に結われた白銀の美しい長髪が、火山の熱風に靡き、その新緑の双眸

は瞬き一つせず、エルフィンたちに向けられている。

 そして無表情で固定されたエルフ特有の美貌が彼女のりょするところを隠していた。

 その凛とした佇まいは、声をも失うような美しさがあった。

「……先はまだいくらか長い。無駄話などで余計な体力を使うべきではないだろう」

 フローネが無機質無感情に苦言を呈す。

 それに、サンドラとカレンはなんとも釈然としない表情を浮かばせた。

 しかしエルフィンは、

「そうだな。先を急ごう」

 と大人しく従う。彼女らも渋々と従った。

 先の戦いにおいて、アラクネのゾゾは最期の台詞で、魔王ギガソルドはこの地上世界におらず人間には手出しできない夢幻世界にいる、と言い残し白い魂となってあの世に消えていった。

 勇者一行はその台詞が信用に足るか判断が付かなかったが、アラクネのゾゾの言う通り、この地上界では他に魔王への手がかりも無く、夢幻世界を目指さざる得なかった。

 そのため、ヴァルターも戦闘不能となり仲間が一人減ってしまったこともあって、他の世界に渡る術を持つというエルフの大賢者フローネを大森海に尋ねたのだった。

 しかしそのエルフの賢者は同族をも拒んで一人隠遁いんとん生活を送っていた。おまけに大の人間嫌いでもあった。そのため勇者一行は最初激しく警戒され、その強力な詠唱術により散々な目に遭わされてしまった。

 だが勇者エルフィンの孤軍奮闘と、その後のすったもんだのおかげにより、エルフの賢者フローネはやっと共に夢幻世界へ渡ることを決意したのだ。

 そして今、勇者一行が活火山不死の山インモリタル・モンテム頂を目指していた理由も、フローネの行使する強制転移詠唱術が、夢幻世界と地上界の境界が最も交わっているという、この火山の山頂で行う必要があるためであった。

 …ただし、出会いの軋轢から、フローネと勇者一行との間には未だ溝のような物が存在していたが。

 それから勇者一行は、黙々と登り続け、火山山頂へなんとかたどり着く。

 そこは街一つ程の大きさの、巨大な火口が天に向かい吠えていた。

 喉奥には、灼熱地獄を思わせる赤い溶岩がぐつぐつと煮えたぎり、付近を煌々と照らしている。そして辺りは硫黄の臭いとむせるような熱気に包まれていた。

 今は噴火小康状態ではあるが、凶悪な魔物ですらも近寄り難い、非常に劣悪な環境が作り出されていた。

 対毒耐性詠唱術と精霊の加護により平然としている勇者一行ではあったが、さすがに彼らでもここに長居することははばかられた。

 すぐに目的の場所へと向かう。すると火口の畔、外輪の一部が不自然に盛り上がり、そこに朽ちた祭壇らしき建造物があった。

 …百年ほど前、魔王ギガソルドが夢幻世界創造の儀式を行ったと言われる場所。

 転移点であった。

「…ところどころ朽ちちゃいるが、こんな場所でよく形を残せたもんだね」

 と、妙に感心するカレン。

「この空間だけ不自然に安定し外界の影響を弾いている。多分、楔のような形で夢幻世界と繋がっているのだろう」

 カレンの感想にそれとなく説明を加えるフローネ。そして淡々と続ける。

「では、お前らいいな? ここに長居する意味はないのでさっさと強制転移術式を始める。以前言っての通り転移は扉の出入りとは全く違う。発動すれば基本的に一方通行だ。この地上界に戻ることは、ほぼ叶わん。

 …名残は無いな?」

「「「……」」」

 性分なのか性急な応えを求めてくるフローネに、勇者一行は各々顔を曇らせた。

 エルフィンはふと息を飲み、

 カレンは眉を顰め担いでいたサンドラをゆっくりと地面に下す。

 そのサンドラは、元々悪かった顔色をさらに青くした。

 名残は無いな?

 その言葉に覚悟を決めていた筈の勇者一行の決心は揺らいだ。

 名残なんぞ、若い彼らには山のようにあったのだ。

「……そのさ、感傷に浸る、とかの間はくれないのかい?」

 多少、僻み気味尋ねるカレン。

「こんな劣悪な環境でゆっくりとか?」

 カレンの問いにフローネは無感情に返し、さらにカレンの眉を顰めさせた。

「いや、場所云々うんぬんでなくてさ。あんたと違って、あたいらは拠り所がなくちゃ生きていけない普通の人間なんだよ。そりゃもちろん覚悟は決めてるつもりだけどさ、これから二度と帰れぬ場所に行くんだから、……なんかあったりするだろ?」

「理解はできる。が、私はただ、今、為すべきことを為すだけだ」

 そう凛と紡ぐフローネ。

 カレンはそんな賢者の、淡々とした様相に肩を竦める。

「あんたのそれ合理主義っていうんかね? …エルフは情の深い一族って聞いたことがあるんだけどさ? 違うのかい?」

「確かに他のエルフはそうかも知れん。だが私自身は無駄な思考が嫌いだ」

 カレンの皮肉に、捻くれなく明瞭に返すフローネ。カレンは、こりゃダメだとため息を付く。

 かたわらのサンドラは、そんな二人のやりとりを蚊帳の外に、まだ顔を青くしていて何か独り事をぶつぶつと呟いていた。

 彼女はこの一行で一番若いためか、いざとなるとやはり躊躇ためらいや、心残りが思い出されたようであった。

 勇者エルフィンは、そんな彼女らの様子に自責の念を感じる。

 皆は自分の目的の為に、この世界を後にしようとしているのだ。…言い換えれば自分の巻き添えのために。

 エルフィンはそんな思考がぎり、後ろめたさを感じてしまう。視線を彼女らから逸らすようにふと下界を眺めた。

 そこは一面に黒々とした風景が広がっていた。

 活火山不死の山インモリタル・モンテムは地上界魔族領最奥地にあり、当然の如く山麓周囲に人間の営みの痕跡は皆無である。それどころか長く繰り返された噴火による溶岩流や火山ガスのせいで、付近一帯は生物の気配無い死の大地と化しており、一部を除き魔族魔物たちすらも迂闊うかつに近寄らぬ場所に成り果てていた。

 ……不死の山により作り出された死の大地。

 なんという皮肉なのだろうか。

「……行こう」

 勇者エルフィンは皆にそれとなく呟く。

「…行くのかい?」

 横目でカレンがそう尋ね、エルフィンはうんと頷いた。

「フローネの言う通りここは感慨にふけれる場所じゃない。躊躇ためらえば、…それだけ迷いは増える」

「……その通りです。エルフィン様」

 青かった顔を上げエルフィンに同意するサンドラ。エルフィンの促しに、彼女はいつの間にか瞳に決意の様なモノを宿らせていた。

 と、

 バンッ、とカレンがエルフィンの背を叩いて来る。 

「……痛って! …いきなりなんだ?」

「気負い過ぎんなよ、小僧っこ! 今さら切羽詰るこたぁないよ! 気楽に行こうじゃないさ」

 そう言って、二カッとしろ歯を見せるカレン。

「死地に、気楽にか?」

「おうとも。どうせ人間いつかは死ぬんだ。それが早いか遅いか…いや、良い死に方か悪い死に方かの違いだけさ」

 エルフィンは彼女の相変わらずの心の持ちように、少し気が軽くなるような気がした。

「…って小僧って、お前とそう年は変わらないだろう?」

「小僧だろう? 元貴族の世間知らずの坊ちゃん育ちのくせに」

「うるさいって」

 勇者と武闘家二人は、お互いに知り合って以来通り嫌味なく笑い合った。

「一応、確認しておくが」とフローネ。

「ギガソルド軍の地上界の拠点は粗方あらかた潰したのであろう? 確かに侵攻の速度を鈍らせることに成功しているようだが、そもそも本拠を叩かんことには意味がない。時を許してしまえば、魔王は再度侵攻の手を強めるであろう。…わかっているとは思うが」

「だから、今から夢幻世界に行くんだろって」

 急ぎたいのかフローネの妙にせっかちな諭しに、少々棘で返すカレン。

 そんな一行の不仲な二人に、勇者は一抹の不安を感じた。

 どうもこの二人は相性が良くないようだ。…問答無用で土属詠唱術で石にさせられた出会いを考えれば、当然といえば当然ではあるが。

 そして一行はエルフィンが初めに祭壇へと足を掛け、皆もそれに続けて登壇する。祭壇中央に集まると軽く円となり、フローネが「では始めるぞ」と紡いで、勇者たちには理解できないエルフ語で呪文詠唱を始めた。

 すると祭壇に幾重もの詠唱陣が忽然こつぜんと現れ、土台が時空振動を始めた。

 エルフィンがふと頭上を見上げると、空に亀裂が走り始めていた。記憶の彼方にある、似た光景に、ヒヤリと嫌な汗が走る。

「飛ぶぞ」

 フローネが不意に呟く。皆はそれに緊張の面持ちを見せた。身体が浮き出し、空に吸い込まれる様な風が起きる。

 …とうとうか、と暗に覚悟を覚えるエルフィン。

 これから夢幻世界という、魔王ギガソルドが作り出した反面世界へと渡る。戻る術無い世界に。ある意味冥府に渡るのと同義だ。

 そして、そこで奴を討つ。絶対にだ。でなければ全ては無意味。…絶対に。

 と、エルフィンは不意に手を握られる。

「エルフィン様」

 サンドラが指を絡ませながら、徐に潤んだ瞳でエルフィンを見上げていた。

「ご心配なく。私たちが付いています」

 徐々に強くなる風にも、彼女が力強く紡いだのが耳に届く。

「青い顔しながら、虚勢吐くんじゃないよ」

 皮肉に笑いながらカレンもエルフィンに手を絡ませてくる。

「虚勢じゃないです! 私は本気です」

「…皆、すまん」

 彼女らの意気に、何か胸が熱くなるエルフィン。

「フローネ様!」

「ほれ、あんたも」

「な、何を」

 詠唱術制御に意識を置いていたフローネにも、カレンとサンドラは空いている手を絡ませた。

 それに賢者は珍しく動揺を見せ、僅かに眉を上げた。

「い、いきなりなんだ。今は意識を集中しなければ…」

「初心な反応してんじゃないよ。処女なのかい?」

 からかう様に笑うカレン。土壇場でも悪ふざけてしまう彼女の悪い癖だった。

「それがどうした。生まれ落ちて五百年余り、父親以外の男とまともに喋ったこともないが」

「……あ、そうなのかい」

 長命なエルフの、想像の埒外らちがいの返答に、若干気まずさを感じるカレン。サンドラとエルフィンも、少々困惑した。

「……なんだお前ら、その顔は」

「……あの、その」

「いや」

 返事にきゅうする勇者と僧侶。武闘家は、なははと苦笑うのみ。彼らの反応に賢者はさも心外と一旦目を伏せ、そして見上げた。

 そこには次元の狭間に膨大なエネルギーをほとばしらせた、漆黒の底なしの円が大きく開いていた。

「…次元の穴が開いた。もう後戻りはできん。…覚悟はいいな?」

 その賢者の言葉に勇者一行は目を合わせ、うんと頷くと、

「「「おうとも!」」」

 と答える。

 その応えに賢者が満足すると、一繋ひとつなぎとなった勇者一行は緩急つけず次元の穴へと一気に吸い込まれた。

 そしてこの後、彼らは夢幻世界にてさらなる戦いへと踏み出すのであった。

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