第2.5話 生徒指導室にて
私の名前は杉本 南。3年前にこの夢咲高校に赴任した27歳。今年から生徒指導を任されており、生徒指導として初めての仕事のわけなのだが・・・
(女装してる生徒の指導ってどうすればいいの?)
私の対面に座っている、生徒を見ながら困惑してしまう。
「あ、あの、島田君だよね?2年生の」
「えぇ、そうですわ。杉本先生」
島田さとる。彼の名前はよく聞くことがある。あの学園の王子様といわれる神崎真波と同じ部活であり、神崎さん程ではないにしろ彼の演技力は凄まじいものがあると評判がいいのだ。
「もしかして、演劇の練習なのかな?その格好は」
「いえ、作戦の為に仕方なくですわ。私に性別転換する勇気はありませんので」
「そ、そうなんだ」
何言ってるのかな?この子。無駄に仕草とか女子のそれで顔というか、目つきなどが違えば女子と言われても気付かないのではないか?そう思うくらいには演技が上手い。
「でもね、島田君。女装して学校に来るのは良くないと思うな。校則とか規則を守るのが学校なんだし」
「でも、先生。私ちゃんと校則守ってますわよ?生徒手帳でしっかりと服装の規定を調べましたし」
「いや、女子ならその服装で問題ないんだけどね。君、男子でしょ?」
「生徒手帳に女装してはいけない何て、書いてないですわ!!」
「いや、普通すると思わないからね!?それにその口調なんかイラってくる!!」
「私だって、こんな格好したくてしてるわけじゃないのです。でも、こうするしか方法がないのです・・・」
島田君は、目を伏せながらか弱い声で呟いた。
私は、今更になって気づいた。校則だからとか理由をつけて生徒の話をしっかりと聞こうとして、いないではないか。教師として失格だ。
「ごめんね島田君。話を聞かずに、良くないとか勝手に決めつけちゃって。島田君が良かったらだけど、話聞かせてくれないかな?力になりたいんだ」
「杉本先生。良かったんですか?本当に女装したまま、学校に通わせて」
島田君が生徒指導室を出た後、隣にいた同期の宮前先生がそう聞いてきた。
「えぇ。本当は駄目なんでしょうけど、島田君の話を聞いたら応援したくなってしまって」
島田君の話を聞いた時は驚いた。まさか、学園の王子様のことが好きだとは。
しかも、彼女が女子の方が好き?だから女装して気を引きたいときた。
うん、最高かよ。
恋愛好きな私には、これ程に幸せなことはあるであろうか?いや、ない。
「島田君(私の娯楽の為に)頑張りなさいよ」
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