第2話 根本的に違うお姫様
急いで家に帰った俺は、自室ではなく去年卒業して、県外に就職した姉の部屋に向かった。
姉の部屋は、姉に言われてちゃんと週末に掃除をしているのでとても綺麗になっている。その時にクローゼットも換気のために開けたりしているので、お目当のブツがどこにあるかもすぐに分かる。
「お、あった」
俺がクローゼットの中から取り出したのは、うちの学校の女子制服だ。
姉も俺もどちらとも身長173センチ体格も胸を抜かせば、ほぼ一緒なので多分着れるはずだ。
何故、姉の制服を着ようとしてるのかだって?
そんなの簡単だ。真波は女子の方が好きだと言っていた。
だからといって、性別転換に興味はないので女子の制服を着て、形から入るのも大事かなということでとりあえず、着てみようと思った訳である。
自分でも中々に頭の悪いことしようとしてることは分かっているのだが、今のところこれしか方法がないのだ。
「まぁ、とりあえず着てみるか」
姉の制服に袖を通し、姿見の前に立ち自分の姿をまじまじと見る。
「うん、これは無いわ」
俺は、男の娘とは違い女子と間違われるような顔立ちでは無い為、違和感が半端ない。
どうするか・・・そういえば、姉も去年まで演劇部でウィッグとか自分で買ったりとかしてたはず!それをつければ多少は変わるのでは!?
再び姉の部屋を探索すること5分。ベッドの下にある段ボール箱の中に入っていた。
中には茶色のポニテールウィッグとツインテールのウィッグが入っていた。
ポニテールの方を手に取り、被ってみる。
やはり、男が女装しました感が否めないな・・・・まぁ、その通りなんだけど。
こうなると、後は自分の演技力を信じるしか無いな。これでも演劇部の端くれ、今まで何度か女性の役を演じたことだってある。
「女子が好きなら女装すれば、真波が振り向いてくれるだろう作戦」開始だ!!
これで、大丈夫の筈だ。・・・多分。
まぁ、明日になれば分かるか。
次の日の朝、親には冷めきった目で「お前そんな(姉の制服を着る)趣味あったのか?」と言われた。2人とも、何か違う意味で引いていた気がするのだが、気のせいか?
ご近所さん達には、蔑んだ目でみられた。
確かに昨日まで、普通に登校してた奴がいきなり女装して登校し始めたら、誰でもそうなるか。
ご近所付き合いが、悪くなるのも困るのでいつもみたいに挨拶をすることにした。
「おはようございます。柴崎さん」
清楚系なお姫様が言いそうな声の感じで。
「お、おはよう」
逆効果だこれ。
その後も色々とあったが、とりあえず学校に着くことが出来た。
自分の教室についてもクラスメイトからの視線がすごく刺さったが、別にやましいこともないので気にしないことにした。・・・のだが、女装して学校に来てる人がいるらしいと誰かが流した情報のせいでみんな一目見ようと、廊下に人が集まってきた。
仕方ない、挨拶しとくか。
「おはよう御座います。皆様」
『お、おはよう御座います』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
やべぇ、会話終了したわ。これどうすりゃいいんだ?
この後先生に、生徒指導室に連れて行かれるまでこの無言は続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます