イケメン女子が好きな俺は女装することにしました!?
大貴
第1話 王子様と俺
桜がふわりと舞う季節
高校に入学した生徒たちが不安と期待を胸に学校生活を送り始めるそんな時期である。
校門の入り口で登校してくる生徒達を見ながら俺、島田さとるはそんなことを考えていた。
何故校門にいるかというと、今日から新入生の部活見学の解禁日なので、俺が入っている演劇部含め色々な部が新入生の登校してくる時間を狙い勧誘するためだ。
しかし他の部が声を出したりチラシを配ったりしている中、演劇部は部長を含めほぼ生徒に声を掛けていない。理由は簡単だ。何故なら演劇部には、
『きゃーーーー真波様よ!!』
「可愛いお嬢様方、私達演劇部に見学しにきてくれるかな?」
『は、はい!!』
何故なら演劇部には女性を虜にする王子様がいるからだ。
俺の通っている学校には、神崎真波という王子様がいる。
身長170センチ、中世的な容姿。眉目秀麗、勉学共に出来るうえに、スレンダーな体型とキザなセリフのせいもあり皆んなから王子様と言われる女子である。
放課後、見学に来た女子生徒に囲まれている真波を見ながらそんなことを考えていた。
「真波様が演じる王子様最高でしたわ!!」
「もう、私真波さん無しじゃ生きてけない、、」
「私の王子様、これからご飯食べにいきましょう!!」
「あはは。ありがとう、お嬢様方」
すごい大人気だなぁ。流石、男子一同に『もう、嫉妬を通り越してただただ、すごいとしか思えない。』と言わせることだけはある。
「お誘いはありがたいけど、演劇の片付けとかあるからまた今度行こうか?」
「は、はい!!」
他の女子とも挨拶を済ませ、演劇の片付けを手伝う真波。もう、ほぼ終わりだし、そのままご飯食べに行っても怒られないだろうにそこら辺は真面目なんだよな。
他の部員は自分の分の仕事は終わらせたみたいで、皆んな部室から出て行く。
真波は、片付け終わった道具をもとの場所に戻していた。
ずっと見ていたからだろうか、真波と目が合いこっちに来た。
「さとる君、お疲れ様!」
「あぁ、真波もなー。流石真波、王子様役似合うよな」
「そうかなぁ?まぁそれほどでも」
まぁ、演劇部の男子と比べても誰も勝てる相手いないしな、顔も演技も。
「そういえば、聞いてみたいことがあったんだけどいいか?」
「どうしたの急に?」
不思議そうに首を傾げる真波。その動作だけでかっこいいのは何故だろうか?いや、そんなことより
「女子のお前的には女子にモテるのってどうなの?嫌じゃないか?」
「そのことか、うーん・・・別に嫌じゃないよ。むしろ好感を持たれるのは素直に嬉しいし、昔からこんな感じだったから男子には女子として見られてなかったし、男子よりは女子の方が好きかもしれないね」
まじか。俺が真波の立場なら絶対嫌なのだが、嫌じゃないとするとやはり、真波は女子が好きなのだろうか?
「そうか?俺、真波のこと女子としてずっと見てたけど?」
「え?」
真波は驚いたように俺の顔をじっと見つめた。
「あ、い、いやだってお前スカート履いてるじゃん?だから男として見るのは変だよなって!?」
「そ、そういうことか驚いたよ・・・」
夕日のせいなのか真波の頬は少し赤らんで見えた。俺の頬は夕日のせいでもなんでもなく真っ赤なんだけど・・・
やってしまった、というかついつい口が滑ってしまった。
実は俺・・・島田さとるは、彼女、神崎真波のことが好きなのである。
去年の今頃だろうか、通学中に歩道にしゃがみ込んでいる王子様こと真波を見つけたのは。
今日から部活見学が解禁されると聞いてワクワクした気持ちでいつもより、一時間も早く登校していた時に俺は彼女を見かけた。入学してまだ日が浅いのに神崎真波という王子様の名前はとても有名で、クラスの違う俺でもその名を知っているくらいだった。
しかしそんな有名人がどうしたんだろう。歩道にしゃがみ込んで気分でも悪いんだろうか?「大丈夫ですか?」と声をかけようとした時
「にゃぁー」
神崎さんの方から猫の鳴き声が聞こえた。バレないように斜め後から覗いて見ると、神崎さんが猫を撫でているようで猫も気持ちいいのか上機嫌のように見える。
流石、王子様だ猫と遊んでいるだけなのにとても絵になるな。
まぁ、気分悪くないみたいだし学校行くか。
当時の俺は勘違いをしていた、周りの人達が彼女をイケメンや王子様と言っていたのでそうなのだろうと勝手に思っていた、でも真波はイケメンや王子様である前にーーー
「気持ちいいかにゃぁ?よかったにゃぁー」
「!?」
ーーー1人の女の子なのだと。
学校へ行こうとしていた足を止めて振り返ると、神崎さんの横顔が見えた。その時の表情はイケメンなどではなくとても可愛いく、俺は心を撃ち抜かれた。つまり一目惚れしてしまった訳なのだ。
その後少し話をしたが、もともと神崎さんとは別のクラスで話す機会がないので諦めかけていた。
でも、同じ演劇部入部だと分かった時はとても嬉しかったのを覚えている。それから少しずつ仲良くなり名字ではなく名前で呼ぶ仲にまではなったが、まだ告白は出来てない。
「・・・君?さとる君?」
「ん?」
「どうしたの?何か考え事?」
おっと、昔の思い出に浸りすぎていた。いつの間にか片付けも終わり真波以外の生徒も帰っている。
「いや、なんでもない」
「そっか。私も、もう帰るよ。部室の鍵閉めるのお願いするよ」
「あぁ」
回想に浸って忘れようとしていたが、真波は先程男子よりは女子の方が好きと言っていたな・・・。
ということは、男の俺は対象外なのだろうか?
でも、流石に性別の壁は変えられないしなぁ。・・・ん?いや、待てよ?その手があったか!!
「真波よ演劇部の本気見せてやるぜ!!」
俺は閃いた策を実行する為に急いで家に帰るのであった。
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