第13話 お礼
翌日、
許嫁の件があり、俺たちの関係はどうなったかと言うと、
「おい!さっさと起きろ!寝坊姫が!」
「言われなくても起きてますぅー!」
「だったらはよ開けろや!」
「今着替えてるの!覗こうとしてんの?この変態が!」
外見的には特に変わりません。
「誰がてめぇの裸なんて見るかよ!見慣れたわもう」
俺はドアに向かって怒鳴る。
本当なら完全に近所迷惑だがあいにくここは王城。基本的にこのフロアには人が少ないので、特に迷惑はかからない。
ドアの奥から姫の怒号が飛ぶ。
「はぁ?そう言っといて私のおっぱいにムラムラした人は誰でしたかぁ〜?分かったらさっさと朝食持ってきて早く!」
ちくしょうこのクソ姫が!
確かにムラムラしたとは言ったけど、社交辞令ってことが分かんねえのかこいつは!
「ちっ、はいはいさっさと着替えろよ!」
「ふんっ」
イラッときたがキリがないので、俺は食堂へ行くために、廊下を歩きはじめた。
◆◇◆◇
「側近様!おはようございます!」
許嫁の件から騎士や兵士から敬うような視線を向けられている俺だが、こうして直接声をかけられるのは珍しい。
俺はどんなやつかとその騎士を見る。
そこには俺と昨日、同行した騎士がいた。
「あぁ、おはよう。昨日は助かったよ」
「いえいえ滅相もないです!」
騎士は両手を振りながら謙遜する。
しかし普通に考えれば、国王の指示を無視した上に、勝手に出ていった俺を協力するなど処刑されて、職を失うのが真っ当なんだが。
ちなみに俺は国王から今回の件についてお許しを頂いた。
俺は気になったので聞いてみることにした。
「あんた、処刑とか大丈夫だったのか?」
すると騎士は嬉しいそうに答える。
「はい!国王様と姫様の身の安全を守ったということで不問にして頂きました!」
要するに俺と一緒の対応をされたわけか。
一安心だな。
「それは良かった。それじゃあ俺は朝食を取りに行くからまた」
「あ、はい!行ってらっしゃいませ!」
騎士のお出迎えで俺は朝食を取りに行った。
◇◆◇◆
姫の部屋にたどり着いた俺はドアに向かって声をかけた。
「おい貧乳姫、メシだぞ」
するとまたしてもドアから怒号が飛ぶ。
「あんた貧乳って言って私の事泣かせたの忘れたの!?何度も言うけど貧乳じゃないから!」
そうだった、完全に忘れていた。
「なんでもいいけど飯持って来たからここ開けてくれ」
そう言って俺はドアを足でノックする。
姫のメシで両手塞がってるからな。
「ドアを蹴るな!」
そんな声と共に部屋のドアが開いたので俺はズカズカと入っている。
家具等々はもう既に戻っている。
俺はいつものテーブルに朝食を置き、ソファーに座る。やはりこの部屋のソファーは座りやすいな。
「ちょっと何座ってんのよ。ちょっとかっこいいとこ見せたからって調子乗らないでね」
ここで言っておこう。
俺は先ほど、俺たちの関係は外見的には変わらないと言ったな。
つまりは言い方を変えれば、内面的には変化があるのだ。
俺が「クソ姫」ではなく、「姫」と呼んでいるのも、その変化のひとつだろう。
そして姫も、今の発言からして少なからず今回の件で俺に対して惚れている部分がある。
つまりは、
今回の件で俺たちは
お互い少しだけ、
寄り添うことができたのである。
側近と姫という立場でこれはとても重要である。
だが、勘違いしないで欲しい。
あいつはともかく、
俺は別にあいつのことが好きとかそうゆうのはない。
ツンデレじゃないからな?
それを踏まえて俺は言う。
「かっこいいとか気軽に言ってんじゃねえよ」
すると姫はちょっと顔を赤くして言った。
「あ、今のなし」
「それ言うの遅いわ」
俺は思わず苦笑する。
相変わらずのバカである。
まぁだから俺に何も言わずに出ていくんだろうけどな。
「んじゃ、俺はそろそろ行くわ」
「あ、ちょっと待って」
ドアに向かおうとする俺を引き止める姫。
何を言い出すんだろうこの姫は。
「その、別にあんたはされても嬉しくないと思うけどさ、一応お礼をさせて欲しい」
俺がされても嬉しくないお礼?
それお礼って言わないと思うぞ。
お礼とは言えないお礼宣言をした姫は俺の横にやってくる。
俺はそんな姫を横目で見る。
「お前、何をする気だ」
「と、とりあえず目つぶってくれる?」
上目遣いで俺の質問をガン無視して言う姫。
まぁいいか…。
俺は目をつぶる。何をする気だこいつは。
あれか、サプライズってやつか!俺が前から欲しかった、特殊魔法が掛かった長槍か!?
それならめちゃくちゃうれし
──俺の頬に柔らかい感触が伝わった。
俺は思わず目を開ける。
そして、唇を既に離している姫を見る。
姫は顔を赤くして、顔を見られないよう、俯いている。
「お、お前」
「はいもう終わり!早く出ていって!」
俺は姫に背中を押され、追い出されるかたちで部屋から出された。
「ちっ、懐かしいじゃねぇか」
恋人だった時、何度も味わったこの感触。
俺は、キスされた頬を撫でる。
「嬉しいに決まってんだろ…」
そんな独り言を呟きながら、俺は部屋に戻った。
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