第11話 幼馴染として②

【姫目線】

 あれは幼馴染だった時の話。

 私が変わるきっかけになった事件。

 それは小学三年生の頃。

 私は当時、いじめられていた。

 引っ込み思案な性格と、極度の人見知りのせいで友達を作れず、ずっと1人でいた。頼りのゆーくんも、学校では話しかけてくれないので私は1人で耐えていた。


 ──うわぁ、あやかだ。


 ──にげろー!ぼっち菌がうつるぞー!


 ──本ばっか読んでると宇宙人になるぜ


 いつものように悪口を言われる私。でも大丈夫。学校が終わればゆーくんが遊んでくれるから。今日は私の誕生日。ゆーくんのプレゼントが楽しみだ。


 ──さようなら!


 ──さよーなら!


 そんな声と共に、私はすぐに帰路に着く。

 下駄箱で靴を履き替えて、外へ出る。


 ──だから、あーちゃん毎回早すぎるよ!


 いつものようにその後ろからゆーくんが走ってくる。いつもの日常。


 ここまでは、いつもの日常だった。


 ──あーちゃん。ちょっと公園寄っていこうぜ!


 ゆーくんが珍しく近所の公園に誘ってきた。

 きっとそこで誕生日プレゼントを渡してくるのであろう。


 ──うん!いいよ!


 私は、断る理由もないのでそれに従った。


 公園に着いた私たちは、ベンチに隣同士で座っていた。


 ──はいこれ!約束の誕生日プレゼント!


 ゆーくんが包装された袋を渡してきた。

 形的にすぐ分かる。これは絵本だ。


 ──わぁ!ありがとう!ゆーくん!


 ──へへっ!いいってことよ!


 そう言って鼻の下をかくゆーくん。いつも通りだ。


 ──ごめんちょっとトイレ行ってくる!それ開けてていいよ!


 そう言ってゆーくんはトイレに走って行った。私は言われた通り、包装を開けて中身を見た。


 ──わぁぁぁ!!


 そこには、ゆーくんが手描きで描いたであろう、絵本があった。ちょっと小汚く、ところどころ何を書いてあるか分からなかったけど、私は物凄く嬉しかった。私が本を嬉しそうに眺めていると、それは起こった。


 ──お前、あやかだよな?何その本。汚ねぇ!


 いつもいじめてくる男の子と遭遇した。その周りには、取り巻きの男の子達もいて、私は逃げられなかった。


 ──ちょっと貸せよ!それ!


 その男の子は私から本を取りあげようとする。私は必死で抱き抱えるが、抵抗虚しく、男の子に取られてしまった。


 ──へへっ!見ろよこの絵!下手すぎだろ!


 ──これとか何書いてあるかわかんねー!


 ──そ、それはだめ!か、返して!


 私は必死に抗議するけど返してくれない。

 そして、その男の子はやってはいけないことをした。


 ──いいだろこんなもん。こうしてやる!


 そう言ってゆーくんの本を、地面に叩きつけた。さらに、その本の上から踏んでぐりぐりとした。クレヨンがどんどん滲んでいって、もともと下手な字や絵は、さらに分からなくなってしまった。


 ──うぅぅぅ…。酷いよみんな。


 ──へへん!ざまあみろだ!


 男の子がそう言った、その時だった。


 ──お前らふざけんなよ!


 トイレから帰ってきたゆーくんが、濡れた手でその男の子をぶん殴った。そして、倒れた男の子にそのまま馬乗りになり、何発も殴り始める。


 ──お前俺がどれだけの思いで作ったのか分かってんのか!


 そう言って殴るゆーくん。殴られてる男の子は顔面ボロボロだった。


 ──て、てめぇなにしてんだ!


 ──おい離せ!それ以上はやめろ唯斗!


 取り巻きの男の子は加勢するのではなく、暴れるゆーくんを止めに入る。これ以上刺激したらダメだということを知っているらしい。


 ──離せ!帰るぞあーちゃん

 抵抗虚しく抑えられたゆーくんは、取り巻きの男の子に言っている。殴られた男の子は、意識がなかった。


 ──ちくしょう!離せお前ら!殴るぞ!


 取り巻きの子達はそう言われると、すぐに解放した。そして、私の手を握って荒々しく引っ張る。私はそれに抵抗することなく、着いていった。


 結局、後日、ゆーくんは喧嘩したことがバレて、先生にこっぴどく怒られていた。


 でも、私は

 それを見て決意した。


 もう私はゆーくんに迷惑をかけない。


 いつまでもゆーくんに助けてもらってはだめだ。


 私1人でも生きていけるようにしなきゃ。


 そのためには自分が変わらなくちゃ。


 そう心に決めた。




 でも、結局それからも


 私はゆーくんに助けてもらっていた。


 それどころか、邪魔すらしていた。







 それは、









 今に至るまで。






 ドラゴンと私の間に立つゆーくん。



 ゆーくんは背中越しに言った。



「お嬢様、お迎えにあがりました」



 ほら、結局助けてもらってばかり。




 ◇◆◇◆


【側近目線】

「巨大化」

 俺がそう唱えると、槍は先程の3倍ぐらいの長さと太さになる。


 あの時みたいに取り巻きはいない。


 俺を止めるヤツはいない。


 俺の大切な幼馴染を傷つけようとする、


 この悪党から俺は守る。




 それが俺の使命だ。




 俺はもう一度槍の石突きをして、飛び上がる。標的を変えたドラゴンは、俺に向けて炎を噴く。


「エアウォーク」


 俺はそう唱えて空気を蹴る。炎はさっきまで俺がいたところを通り抜ける。そのまま空気を蹴って、ドラゴンと距離を詰める。ドラゴンはそんな俺を脅威とみたか、距離を取ろうとするがもう遅い。





 俺は槍を構える。






「これで終わりだ」







 そして、槍を突いた。

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