第6話 隣国への旅行(観光中)
「俺は腐っても側近、ビッチを守る者ではない」
「誰がビッチよこの槍使いが!」
「それは悪口になってねえぞ」
隣国レバンテに着いた俺たちは、街中を歩き、楽しく観光をしていた。こいつがいなければの話だが。ちょーと
「にしてもこの街、なーんもねえな」
「こらそういうこと言わない。私もそう思ってたけど我慢してたんだから」
大きな城が1つ立っていること以外はごく普通の民家が建ち並んでおり、その民家に紛れてちょこちょこ鍛冶屋があったり、武器屋があったりする程度。これといったものがなく、ただの散歩と化していた。
「お前コロコロキャラ変えんのやめろよ。扱いがめんどくさい」
俺はビシッと指をさして言う。
旅行に来てからツンデレやポンコツやお姉さんやクソビッチとかキャラがコロコロ変わりやがる。クソビッチは違うか。
「仕方ないじゃない。作者がコロコロ変えるんだから。あとめんどくさいとか言わないでよ。私お姫様よ?ちゃんとめんどくさがらず扱って」
作者ってなんだよ。
「それがめんどくさいんだよ貧乳王女様」
「だからァ!貧乳じゃない!」
王女様が両腕を上から下にぶんっと振って抗議してらっしゃる。
「はいはいそーですねお嬢様。あまり目立たれるとこちらまでおかしな目で見られますのでおやめください」
「……ぐすん」
あっまじか。やばいこいつ泣いてる!?やばいやばい!側近が姫に貧乳貧乳言いまくって泣かせたとかシャレにならん!
「あー悪かった!ごめん言い過ぎた!その、触った時、思ってたより大きくなっててびっくりしたよ!」
「……ほんとに思ってる?」
涙目でお嬢様が上目遣いで言ってくる。そんな顔は高校生の俺に向けてやってくれ!
「うん思ってるよ!その…ちょっとムラムラしたよ!」
よしこれでフォロー完璧だろ!それを聞いたお嬢様は顔を赤くして、胸元を隠すように両腕を抑える。
「………変態。」
なんでぇ!?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねぇねぇ!あそこ見て?」
ふと、クソ姫が指をさして話かけてきた。
「ん?なんだあの店」
看板には「アニメイト異世界店」と書いてある。いやなんでここにあるん?
「あれってあんたが彼女の私にバレないようコソコソ行ってた店だよね」
「いちいち言うんじゃない」
確かに俺は、当時彼女だった南綾華にバレないよう1人の時を見計らって通っていた。オタクって彼女が出来たぐらいで愛は抜けないんだよ。
「行ってみようよ!」
「嫌だよ」
「なんでよ!王女様の言ってることは絶対でしょ!」
「胡散臭いから」
絶対ろくなものがないと断言出来るね。だって「異世界店」だぜ?ゴブリンのストラップとかオークの人形とかしか売ってないだろ。誰が買うんだそんなもの。って
「おい勝手に入ってんじゃねえ!」
あのお転婆姫が!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「夕日が綺麗だな」
西に傾き、半分以上見えない夕日を眺めながら俺は呟いた。
「なんか学生時代の登下校を思い出すわね」
俺の横で同じように夕日を眺めているクソ姫が言った。あの時は甘酸っぱい時間を過ごしたもんだ。中学時代の帰り道、夕日を眺めながら他愛のない会話をしながら通学路を肩を並べて歩き、高校時代はわざわざ最寄り駅で待ち合わせて一緒に帰り、家の前でキスして別れたりしたもんだ。
「少しだけ寂しいね」
クソ姫がどこか遠い目をして呟いた。俺だって少しは寂しいんだぞ。てか誰のせいで寂しくなってんだよ。頭に浮かぶ思い出の数々。俺の心に流れ込んでくる様々な気持ち。それらを全部押し殺して、俺は言う。
「帰るぞお嬢様」
今の俺たちは恋人同士でも幼馴染でもない。
「うん。行きましょう」
もし、復縁出来たところでこの関係は変わらない。
あの頃には戻れない。
戻りたくても、戻れない。
俺は側近、あいつは姫
それ以上でも、以下でもない
俺は腐っても側近、姫の隣にはいられない
守ることしか出来ないのだから。
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