第3話 俺たちの関係
ここら辺で俺たちの関係について詳しく語っておこうと思う。ただ端的に、幼馴染で元カノと言っても何が何だか分からないからな。
彼女の名前は南綾華。幼い頃から仲が良く、家も隣だったので、幼稚園の時からよく遊んでいた女の子だ。まぁ俗にいう幼馴染ってやつだ。家族絡みでも仲がよかったもので、南家と三佐和家の2家族でよく旅行とかも行っていた。
小学校に上がると分団で一緒に登下校はしていたものの、学校内ではあまり話さなくなった。それもそのはず、小学生特有の女子と仲良くしてるとダサいみたいな謎の心理状態に支配されていたため、話したくても話せなかった。まぁでも放課後はお互いの家に行って、よく遊んでいた。
中学校に上がるとあのおぞましい思春期という存在に悩まされることになる。幼馴染で顔も可愛い、おまけに家も隣だというものだから、思春期男子に恋愛感情を持つなと言う方が難しかっただろう。俺はあの南綾華を好きになってしまった。中学校内ではあいつは陽キャ、俺はモブキャラみたいな感じだったので特に話す機会もなく、唯一の話す機会である下校時をとても楽しみにしていた。当然、モブが陽キャに告白なんて出来ず、結局そのまま卒業した。
高校は神様のご恩(今となっちゃ余計なお世話)で俺たちは同じ学校に通うことになった。その時も俺は、あの南綾華に恋愛感情を抱いていたので今度は下校時ではなく、登校時が楽しみになっていた。しかし、中学とは違って今度は俺は陽キャ、綾華がモブキャラになり、立場が中学とはひっくり返っていた。高二の俺はその立場を利用し、綾華をクリスマスに誘い、そこで告白をしようと思ったが、その前日、すなわちクリスマスイブに綾華から告白を受け、俺たちは恋人同士でクリスマスを過ごすことになった。その後も、おぞましいことに恋人同士でイチャイチャし、大学こそは別になったが、それなりに仲良くやっていた。
ここまで聞くとただの仲のいい幼馴染カップルだがこれがいとも簡単に、たった一つの出来事で、ぶっ壊れてしまう。それが大学時代である。と言っても大学時代なんて簡単に言えば一言で終わる。
クソビッチこと、南綾華がセフレと仲良く手繋いでホテル入っていった。
たったこれだけ。他のやつにとっては普通かもしれないが、俺にとっては許される行為ではなかった。幼稚園からずっと俺の隣にいたあの南綾華が、俺の恋人で大切な人である南綾華が、俺を差し置いて他の男と仲良くしてるのが許せなかった。だから俺は言及した。したが南綾華はこう言った。
「セフレなんて誰でもいるもんでしょ?そんなちっさい事でグチグチ言わないでよ」
俺にとってめちゃくちゃ大きい出来事は、あいつにとっては些細な出来事だった。俺にとってめちゃくちゃ大切な幼馴染で恋人の南綾華は、南綾華にとっては複数の男の中の一人の三佐和唯斗。そんな事を言われてる気がして、俺はスっと心が冷めた。そして俺たちは別れた。ただそれだけ。俺の隣にはもう誰もいない。けどあいつの隣にはまだ男がいる。そんな現実が悔しくて、それはやがて怒りに変わり、そして俺はあいつを心底嫌いになった。嫌いになったはずだった。
なのに、どうして俺はあそこであいつを庇ったのか。
どうして命の危険を晒してまであいつを守ろうとしたのか。
どこからあいつを守るためにトラックに突っ込む勇気が出たのか。
未だに分からない。
それを踏まえた上でこれを聞いて欲しい。
「あははは!私を守ろうとしてあんたまで死ぬとかチョーウケるんですけど〜!ぷーくすくす!」
………側近だけど王女様殺していいかな。
「お前ふざけんなよ!俺がどんな思いで助けようと思ったのか知ってんのかおいコラ!聞いとんのかこのクソビッチ!」
「聞こえまーん!てか側近なのにそんな口調でいいのかなぁー?」
「ちっうぜぇなこの王女。こいつが王女とかこの国いつ滅ぶか分かんねえな」
「滅んだら全部あんたのせいにするから」
「なんでや!責任押し付けんなこのクソビ」
突然、部屋のドアがノックされる。
「…王女様」
「はいどうされましたか?」
こいつ、笑い堪えてやがる。
「お嬢様、お風呂の時間になります」
「分かりました。すぐ入ります」
それを聞いた執事は歩いて去っていった。やがて、足音が聞こえなくなると、クソ姫が口を開いた。
「……側近だからって覗かないでよ」
「はっ、お前の貧相な身体なんぞもう見たくないね」
「その身体に欲情してたのは誰ですかぁ〜」
ちっ、こいつよくそんなこと言えるな。喧嘩売ってんのか。俺はマジトーンで言う。
「お前のセフレだろ。俺は忘れてねえからな」
「……それもそうね…」
俺は部屋を出るためドアの方へ歩いていく。そしてドアを開け、今度はおちゃらけた口調で言ってやった。
「この貧乳が」
「あー!言っちゃいけないこと言ったー!ちょっ待ちなさいよ!」
ギャーギャー言ってる王女様を無視して俺はドアを閉めた。
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