第2話 魔王軍襲来による会議


 まだ幼馴染だった時の話。

 高校1年生の春。綾華が初めて生徒会選挙に立候補した時の話だ。綾華は中学生の頃の印象を変えるためなのか、柄にもなく生徒会に立候補した。俺はそんな綾華を陰ながら応援し、心の中でエールを送っていた。しかし、俺のエールを裏切ってそれは起こった。


「せ、生徒きゃい立きょほ」


 綾華は緊張してたのか最初から噛みまくってしまった。そんな綾華をくすくすと笑う他の生徒たち。俺はそんな笑われる綾華に何もしてあげられなかった。それがとても悔しくて悔しくて仕方がなかった。俺が近くで助けてあげられたら、そんな思いが募る。そしてそのとき、俺は心に決めた。こんなことが二度と起きないように、次は俺が絶対助けてやる、と。


 今日は魔王軍の襲来についての会議があった。俺は側近なので常にクソ姫の近くにいなければならないのでクソ姫の隣に座っていた。

「ねえあんた近くない?もうちょっと離れて」

 こいつっ!国王が話しているというのに何俺にコソコソと話しかけてんだよ!

「うるせえ静かにしろバカ」

 俺はクソ姫を黙らせて前に向き直す。このクソ姫、国王が話し終わったら話さなきゃいけないのに緊張感無さすぎだろ。

「───というわけです。ではお次は我が国の王女様、アーリカ様のお言葉です。お願いします」

 そう言われるとクソ姫は話し始める。

「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。今回の会議ですが魔王軍の接近についての話になります」

 俺はそれを聞いて、吹きそうなのを堪えるのに必死だった。お前そんなキャラ高校の時に置いてきただろ!ぷくくっ!いやいやいかんいかんここで笑ったら処刑されちまう。俺は自分の足を踏みつけて笑いを堪える。

「魔王軍は現在、王都に向かって進行中との事です。魔王軍の人数は100人前後と思われ、かなりの騎士団を送らないと抑えられないかと思われます」

 クソ姫は当たり前のようにスラスラと話をしていく。高校の時は緊張して噛みまくってたけど成長したのか。まぁ俺には関係ないことだけど。

「────これで以上になります」

 そんなことを考えていると、いつの間にかクソ姫の話が終わった。ふん。ちゃんと話せるようになってんじゃねえか。

 そのとき、騎士団長が突然、口を開いた。

「あの、すいません王女様。お言葉ですが今回の襲来について何か考えがありましたら教えていただいても構いませんか?国を守るためにも王女様のお考えが知りたいです」

 唐突な質問だった。しかし、ここで策はないとキッパリ答えてしまうとあいつの立場上、少しまずい感じになる。俺はふとクソ姫の顔を横目で見た。すると案の定、強ばった顔をして固まっている。やっぱり予想の出来事には弱いなこいつ。

「あ、あのそ、それは…」

 はぁ…。やっぱ高校の時から全然変わってねえな。ったく、仕方ねえなぁ!俺は側近として、王女様に恥をかかせないよう、口を開いた。

「騎士団長様、王女様は魔王軍の進行方向をあらかじめ予測し、砦を作って時間を稼ぐというお考えをしております。王女様は御国を思い、様々な案をお考えになられており、決めきれなかったようなので私が代わりに検討し、1番良いであろう答えを言わせていただきました」

「そうですか。側近のミサワ様、ありがとうございます」

 俺は、隣のクソ姫の顔をチラッと見る。すると。向こうもこちらを見ていたようで目が合った。驚いたように目を見開いて俺を見ていたクソ姫はふんっと鼻を鳴らし、俺から目を離した。それからは特に何事もなく、会議が終了した。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 クソ姫の部屋に戻ってきた俺は国王の言う通り、部屋に入り、側近の仕事を全うしていた。すると、クソ姫が蚊の鳴くような声で言ってきた。

「そ、その…あの時…」

「ん?なんも聞こえねえよ」

「会議の時!その…助けてくれて…ありがと。」

 柄にもなくありがとうなんて言ってきた。高校の時みたいに後悔はしたくないからな。

「……迷惑かけるなら俺だけにしろ。他のやつを巻き込むなよ」

 こんな自分勝手で生意気なやつの面倒なんて俺1人で十分だ。

 それを聞いた綾華は驚いた顔をみせたがすぐにふんっと顔を逸らした。

「今更そんなこと言われなくてもわかってるわよ」

「はっそうかよ。ならいいよ」

 俺は綾華の返事を聞き、部屋を後にした。

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