側近に転生したら王女が幼馴染の元カノだった

ななし

第1話 どうしてこうなった...。

 本来であれば礼儀を尽くし、敬い、そして守りべき存在である王女様。そんな御方と俺は

「お前こんなところで何やってんだよクソビッチ」

「あなたこそなんでここにいるのこのクソオタク」

 罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせあっていた。なぜ王女様とこんな罵倒をぶつけてあっているのかと言うと、

「誰がクソオタクだこの男たらしが」

「その男たらしに惚れたちょろい男は誰ですかねえ」

「お前の方から告ってきたくせによく言えるな」

 こいつは現実世界で2ヶ月前に別れた元カノで、さらに言えば

「そんなもやしみたいなやつに告った記憶はございません」

「ちっ、ああ言えばこう言いやがって。そういう所が昔から嫌いなんだよ」

「そっちこそいちいち過去のこと引っぱり出してネチネチ言うところが昔から嫌いなのよ」

 幼い頃からの幼馴染である。


 俺は三佐和唯斗みさわゆいと。20歳で日本では大学生をしていた。日本で平和に暮らしていたら、突然、南綾華みなみあやか改め、クソ姫とこの世界に転生されてしまった。そんな俺は今、何をやっているのかと言うと

「んーご飯まだかなぁ〜お腹空いたな〜」

 このビッチ姫の側近をしている。側近というもんだからこのクソ女と共に行動し、身の安全を守るとかいう吐き気を催す仕事をしなければならない。そのため、俺はこのグチグチうるせえクソ姫の部屋でしっかりと仕事をしているところだ。

「お嬢様(笑)。お腹を空かれましたのならご近所の家でドブネズミでも狩ってお召し上がられたらどうでしょうか」

「なんでお姫様がドブネズミなんて食べなきゃいけないんですかぁ!そう言うあんたこそ下水でも飲んで腹壊して死ね」

「お嬢様(爆笑)。はしたない言葉遣いはおやめ下さい」

「貴方こそお嬢の後に笑と爆笑とかつけるのやめましょうか」

「はて?なんのことでしょうか」

「ちっ、このもやし男が」

 お姫様(死語)はこめかみをピクつかせていらっしゃる。

「お嬢様。はしたない言葉遣いは」

「あーもう!うるさいわよいちいち!あんたこそ側近のくせにさっきから失礼じゃないですかぁ」

「はしたな」

「失礼ではないでしょうかっ!」

 イラついてるイラついてる。いい気分だ!はっはっはっ!

「だいたいなんであなたがここにいるわけ?用がないなら出てって欲しいんだけど」

「国王に頼まれたんだよ。お嬢様が変なことしないようにってさ」

「へ、変なことなんてしないわよ!」

「日本で俺がこっそり家入ったときしてたじゃないか」

「…あれは思い出させないで。羞恥で死ぬ」

 そう。あれは誕生日のサプライズでこいつの家にコソッと入った時だったな。なんかゴソゴソ物音がするなって思ったら、ベッドの上でまさかあんなことをしてるなんてねぇ。ふふふっ。ご想像にお任せします。

「ちなみにおかずはな」

「ああああああああぁぁぁ!!!!やめてくださいお願いします。てかあんたもしてたじゃない!中学生の頃!」

 クソ姫が羞恥でもだえているがそれどころではない。

「……思い出さすんじゃない。自己嫌悪で死ぬ」

 するとクソ姫が口元をニヤッとさせた。ものすごく嫌な予感がする。

「ちなみにおかずはわた」

「やめろぉぉぉ!!!お互いこの話は触れないでおこう。な」

 ほれみろ嫌な予感が当たった。黒歴史を思い出させるんじゃねえ。

「そうね。お互いの身のためにやめましょうか」

 あの時は確かに好きだったけど、まだ付き合ってなかった時期だったな。今思えばどこに好きになる要素があるんだって思うが。すると突如、ドアをノックする音がした。

「どうぞ」

「失礼致します」

 クソ姫がそう言うと王家の騎士が1人入ってくる。そして完璧な敬語で話し始めた。

「お嬢様。会議の時間が近づいてまいりました。ご移動をよろしくお願い致します」

「承知しました。すぐ向かいます」

 そう言うと騎士はすぐ去っていった。それを見届けたクソ姫が俺の耳に口近づけて言う。

「あんたもあの人見習いなさいよ。そっちの方がかっこいいわよ」

「今更そんなこと言ってもドキッとしねえよ。ほら行くぞお嬢様」

「はいはい」

 そして俺たちは部屋を後にした。

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